サバ定食と海を見る
どーらく
第1話
サバは美味しい。
ある方はこう言った。
サバこそ日本食の原点であると。
また他の方がこう言った。
サバを食べない奴は人間でない!と。
ま、要するにサバは美味しいってわけ。
そんな空想をしながら、サバを食べに彼はすき家へと足を進めた。
彼にとっては約35日ぶりの外食だった。
金なし、恋人なし、人脈なし、の彼にとっては唯一の楽しみが外食だった。
彼の足取りは鳥より軽く、風に舞い上がるごみ袋のようなステップですき家の自動ドアをくぐった。
店内に入り、一目散に着席するとタッチパネルをなぞるようにサバ定食を注文した。
この一連の行動に要した時間は5秒。
彼の行動には余計な動作が何一つ無かった。
店員が持ってきたお茶で喉を潤しながらよだれと一緒に流し込み、いまかいまかと待ち構えていた。
見る人が見たらまるで獲物を待つハイエナだと指を差されるだろう。
それほど彼は厨房に目を光らせていた。
程なくして店員がサバ定食を持ってきた。
彼は目にも止まらぬ速さで箸を手に取ると、一口味噌汁をすすった。
ああ、素晴らしい。
日本人に生まれてよかったと思わせるほどだ。
そして箸でサバを一口大に分け、口に含んだ。
その瞬間、ほっぺたがちぎれると同時に幸福という名の海へ潜った。
そこは深く、そして青かった。
上を見上げると光がさしてキラキラしていた。
水面が揺れ心地よい音を聴きながら、流れに身を任せていた。
いつしかサバ定食は無くなり、紙で口元を軽く拭っていた。
席を立って伝票を手に取り、レジカウンターにて会計を済ませた。
レシートを手に取って入口ドアを開け、上を向いた。
空はまるで海のように青くキラキラと光っていた。
サバ定食と海を見る どーらく @doo-raku
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