再演 『彼女』
真っ暗の中声が聞こえる。
「──ㇹㇱぃな」
あげられないと叫んだ。
「──ㇹㇱぃな」
だめ、あげないといった。
「──ㇹㇱぃな」
大切なものはあげられないといった瞬間だ。
「──ㇹㇱぃな。ㇹㇱぃヵㇻゥぅ゙ァゥ」
「駄目!!」
声を上げて抵抗にようにもむなしく、衝撃とともに何かが抜けた気がした。
「……ううん」
体が重く、何とか薄く目を開けて彼女は証明と天井を双眸で確認する。ベッドから彼女は身を起こして、きょとんとしていた。
「……あれ?」
勉強の机と本棚の数を見て、彼女は瞬きをする。
「ここはどこなのだろう」
知らない世界であり、彼女は自分の手をみた。人の手であり、か弱そうだと手を動かす。視界にキラリと光る物があることに気づく。暗い部屋の中、べッドから立ち上がってみた。
姿見であり、彼女は自分の姿を見た。
お姫様カットのような長く黒髪に長袖と長ズボンのパジャマ。部屋が暗いせいか、姿がよくわからない。だが、自分が首に何かをつけているらしく取り出してみると勾玉のネックレスがついていた。
窓があると気づき、彼女は近づいてみる。カーテンを横にそらした。どうやって開けるのかあぐねたが、やってみると窓の鍵を開けられた。
部屋の中に風が入ってくる。少し寒いが、日差しが当たると温かい。風から緑の香りがし、彼女は微笑む。
部屋の内装がわかり、彼女はテーブルの上に一枚の便箋があると気付く。それが何なのかはわからない。宛先のない手紙。開けられるらしく、彼女はその中身を何気なく読んだ。
「……あの日の君へ……?」
不思議に思いながら中身を読む。
温かくて優しい気持ちになり、熱い思いが湧き上がってくる。読んでいるうちに、目が熱くなるのを感じた。何故か涙が出ているらしく、彼女は困惑しながらてで涙を拭う。
最後の名前を読む前にピンポーンと音が響く。
外から声がした。
「はなびちゃーん。はなびちゃーんっ!
ねぇ、はなびちゃん。いる!?」
慌てたような知らない声に、彼女は目を丸くする。彼女は気づいて、手紙を折りたたんで便箋の中にしまう。中に鳥が入らないように窓を締めて、彼女は部屋を出出る前に姿見で自分の姿を見た。
黒くて長い髪に不思議な姿、着ている物が寝る為の物というのかわかる。ぱちりと不思議そうに自分の姿を見つめているが、外からの声が強くなり彼女は慌てて下に降りていく。
玄関につくと、どうすればいいのかわからないが土間にある適当な靴を履いて玄関のドアを開ける。
同じ制服をした少女たちがそこにいた。
「はなびちゃん!」
そう呼んだのは茶髪の三つ編みをした向日葵のような可愛らしい少女だ。
「はなび!」
ちゃん付けしていない少女には、紫陽花のような綺麗さがある。髪は明るい黒色のショートヘアであり、体格も良く運動が得意そうで向日葵の少女よりも身長は高い。
「朝、はなびちゃんの名前が言えなくなってて驚いたんだよ!?
しかも、うちのお父さんとお母さんが前のように気づかない状態だし……大丈夫!?」
泣きそうな向日葵の少女に、紫陽花の少女は心配そうに優しく声をかけてくる。
「はなび、私も焦ったんだ。今の君が無事で良かったけど……異変はないかい?」
慌てている少女達を見つめ、はなびと言われた彼女は困惑した。
「……ええっと、どちら様、ですか?」
「えっ……」
表情に色が落ちるように呆然とする向日葵の少女に、紫陽花の少女は驚愕し真剣な顔をする。
「……まず、一つ言えることは私達は貴女の敵でじゃないこと。色々と話す前に、聞いてもいいかな?」
「? どうぞ」
「……君は自分が何者か、わかっているかな」
紫陽花の少女に問われ、彼女は困ったような顔をする。
「あの、その、すみません。私、自分が何者なのかもわからないのです。あの、私はなんですか?」
言われたことに向日葵の少女は絶望的な顔をし、紫陽花の少女は面を食らっていた。
「澄! 田中ちゃん!」
声がし二人の少女が振り向くと、二人の男性が駆け足でこちらに向かってきていた。
一人は茶髪で童顔で明るそうに見えて凛々しいそうな男性。だが、彼女はもう一人が気になった。
整った顔立ちに凛々しい眉と長い睫毛。独特の美しさがあり、黒い瞳が一瞬だけ金色に見えた。縛られた艶やかな長い黒髪を風で揺らす。優しく美しいこの世の人と彼女は思えなかった。
星と夜空が脳裏に思い浮かび、彼女は見惚れてしまう。だが、見惚れているうちに彼女はその男性と対面していた。
その彼は先程と表情が変わらず、じっと見てくる。彼女は我に返り、困惑しながら彼と同時にある言葉を吐いた。
「貴方は一体誰ですか?」
「君は一体誰だ?」
🎇
彼らがメインとなる一幕の物語はこちら
https://kakuyomu.jp/works/16816927863016384276/episodes/16816927863016543820
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます