オーロラの雨
十余一
紅気の甘雨
「あらあら、いけない子。逢瀬の約束を破ってこんな
寄宿舎の一室で、彼女は羽織を頭から被りうずくまっていた。薄絹の隠れ家をついと引っ張ってみても、少しの焦燥と共にささやかな抵抗が返ってくるばかりだ。そんな姿が
私が茶目気を隠しきれずに掛けた言葉を、彼女は不機嫌そうに打ち返す。
「お姉さまが他の御方とばかり仲良くして、わたしを放っておくからよ」
鈴を転がすような声も、今は涙に震えくぐもっている。膨れあがる愛に燃えたつ嫉妬を織り交ぜた声色が耳に届き、背筋が喜びに粟立った。
本当に仕様がない子。きっと、昼間、私が友人と談笑していたことを気にしているのね。
「あの子はお友だちよ」
「
「他愛もないお喋りをしていただけだわ」
それでも尚、得心いかないのか、彼女は溢れ出る感情を止められずにいた。
「お姉さま、わたしたちはシスタアよ。わたしはお姉さまの妹なの。たった一人の妹なのよ。わたしだけを愛してくれなくちゃ、嫌よ」
私はうずくまった彼女の背に
「私の可愛い可愛い
少しだけ間をおいて、彼女は青白い月光の元に
乱れた
あどけなさの残る頬には、内側から
貴女が私の愛を試して独り占めしたくなるように、私も貴女の愛を試して
「愛しているわ、紅子さん。私の、いっとう大切な子よ」
オーロラの雨 十余一 @0hm1t0y01
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