20.【乱世に吠えし災厄よ】未翔完さん

https://kakuyomu.jp/works/1177354054890600863


あらすじ等(作品ページより引用)

乱世の大陸で、災厄の皇子は何を為す。


※注意※

 欧州諸語を用いた独特の振り仮名が使用されていますが、わざと読みづらくしているのではなく、ある意図を持った上での表現です。ご了承ください。


参照地図(近況ノート)↓

https://kakuyomu.jp/users/3840/news/16817330660298000615


ファンアート(近況ノート)↓

https://kakuyomu.jp/users/3840/news/16817330660637818031


 ルミエルド聖暦650年6月13日。

 その日、ルミエルド大陸全土を震撼させる出来事が起こった。

 大陸中央・アルザーク帝国の新皇帝となるはずだった皇太子ジギスムントが、帝都の菩提樹通りにて名もなき騎士に暗殺されたのだ。

 これにより帝位継承問題が生じ、遺された四人の皇子は諸侯や帝国自由都市、はたまた周辺諸国の協力を仰いで次々と兵を挙げる。仮初めの平穏の中にあった大陸は、一瞬にして大乱世を迎えたのである。


 ジギスムント皇太子暗殺事件……通称〈菩提樹が見た鮮血〉。

 この事件の裏には、一人の呪われた皇子の姿があった。

 ディアーク。

 漆黒の髪を持ち、幼き頃から周囲から疎まれし〈災厄の皇子〉。

 五年前のある日、彼は自らを取り巻く理不尽への復讐を決意した。

 彼の従士長たる老爺レイナードを協力者として。

 その日の決意は、長い時を超えて。

 自分の運命どころか、大陸の命運すら変えていくこととなる。


 汝、災厄の皇子よ。

 遍く理不尽を踏み越え、野望を掲げし覇皇となれ。



☆☆☆



第20弾です。

未翔完さん、ご参加ありがとうございます。

がっつりネタバレ含みますのでご注意下さい。





さあ来たぜ、ダークファンタジー!

ということで、ダークファンタジーです。

割りと重めなテーマの作品のご参加が多い本企画です。

私が普段書くような軽ーい、ぺらっぺらな話って、感想が必要ないんです。

面白いか面白くないかの二択しかないので、面白ければ読むし面白くなければ読まないと、結果がそのまま感想という気がしています。


対してテーマ?がしっかりしている作品て、どう読まれているのか?どういう解釈を得ているのか?という疑問があるのかもしれませんね。

伝わってるのかな?っていう不安なのか疑問なのか、じれったさがあるのかもしれません。


今回は第一巻第四話③まで読みました。


さて、中世ヨーロッパ風ということですが、雰囲気……というか単位とかの問題でしょうが、『アルスラーン戦記』を思い出しました。

あちらはトルコとかあの辺りですよね。たぶん。

今作はどこでしょう?地理、とか歴史とか苦手な分野です。


苦手ついでに、そもそもの疑問というか見ないふりをしてきたんですが、帝政と王政って何が違うんでしょうね?

王政に種類があり過ぎるのがややこしくしてる原因ぽいというのは分かりました。


気になった点としては、一話の分断です。

1話にまとめる内容を3話とかに分けているような印象を受けました。

たぶん、文字数とかを気にされてかなと思います。

確かに一話が長いと取っ付きにくいって問題があったり、単純に更新頻度が下がったりとあるんですが、今作の雰囲気だともう少し一話あたりにボリュームを持たせてもいいのかな、と思いました。



さて、私もよく使うんですし、今作の感想欄とかレビューでもお見掛けしてるんですが、『世界観』という言葉です。


世界観がしっかりしている、とか使うんですが、『世界観』を便利な言葉にしてしまっていて、なんか色々混ざってないかな?とか考えました。


今作ですと、『中世ヨーロッパ風の世界を舞台にしたダークファンタジー』です。

実はこの時、『世界観』で表現しているのは『ダークファンタジー』だと思います。


つまり、世界設定と、世界観が混ざってしまってないかな?ということです。


「舞台」という言葉が出て来ましたのでそれっぽく当て嵌めると、世界設定は大道具で世界観は照明です。


江戸の下町を舞台に繰り広げられる人情活劇、とした場合、江戸の町でも色んな価値観や色んな生活様式がある中で、人情とか義理にスポットライトを当てた話、ということになります。

江戸の吉原を舞台にした愛憎劇となればまた雰囲気が変わります。江戸の吉原ってあってます?


つまり、その世界にはいろんな生き方が当然あるわけだけれども、ある価値観、もしくは人生観というフィルターを当てて、その事件を読み解きますよというのが世界観です。


なんでこんなことを思ったかというと、ダークファンタジーにつきまとう、『読みづらさ』『読みにくさ』っていうものが、この混在を要因にしているような気がしたからです。


さっき上げた「江戸」って言うと、当然、事実として江戸があったわけですからその場に根付いていた価値観というのも実在します。

「鎌倉武士」とか「江戸侍」って単語が出ると、イメージが湧くわけです。ステロタイプとかとも言いますが。

なので、そういう単語を使うだけで、舞台設定と世界観が同時に表現できます。


しかし、舞台はファンタジー。つまり、そこがどういう舞台設定かもどういう世界観かも分からない。

実在しない世界なわけですから。


なので、舞台設定=物質(地名とか道具)と世界観=概念(死生観や人生観)を説明しないといけなくなります。

そこで、物質と概念を同時に書くと、情報が過多になって分かりづらくなります。


特にダークファンタジーの場合は、価値観がダークつまり人間の悪い面とか、後ろ暗い面を書き著すわけですから、そもそも重いです。


例えば、主人公の生活圏に湖があるとして、これを表現します。

これが琵琶湖であれば、琵琶湖って書けばいいんですね。それだけで、役割から規模感まで説明できます。

しかし異世界ファンタジーだと琵琶湖はありません。なので、ジャ湖ってものがあったとします。


“その街は湖のほとりにあった。湖の名前はジャ湖。1万人の生活を支える豊漁と清水の湖である”


本来舞台装置としての湖の説明はこれでいいんです。しかし、ここで世界観も一緒に説明しようとなっちゃうと、これだと明るいかな?豊漁とか清水とかなんかダークファンタジーに合わないなってなって、少し表現が変わります。


“其の街は湖の畔に在る。湖の名前はジャ湖。本来、1万人規模の活性な街を支える生命の水甕のはずであるが、其の日の水面は幾千の羽蟲がさざめくように不気味に波立ち、更に、刻を等しくして傾きだした夕日に焙られ、まるで血のように赤く染まっていた。まるで此れから起こる波乱を予感させる不吉さであった”

とかってなります。


なので、書き出しがものすごく重くなり、同時に、分かりづらくなってしまうのではないでしょうか?

そして『重い』と『分かりづらい』って全く別の問題なんですよね。

重くても分かりやすい話はあるし、軽くても意味わかんない話も同じくあります。


これは説明とかプレゼンテーションとかで言われることなんですが、

簡単なことを難しく伝えるのが三流、

難しいことを難しく伝えるのが二流、

簡単なことを簡単に伝えるのが一流、

難しいことを簡単に伝えることが出来れば超一流。

小説とは違うんですが、人にモノを伝えるって意味では共通しているのかなと思います。


世界設定の説明と、世界観の表現。

この二つを理解して、どういう比率で書くのか、或いは、その比率をどう推移させるのかをコントロールすることができれば、読み掛かりの読みづらさというのが緩和するのではないかな?と思います。



さて、全然内容に触れてないよ!、ということです。

実はあんまりこの世界設定が掴めなかったんですよね。


シビアなのか温いのか?

その辺も上手く掴めてなくて、冒頭の帝政と王政の違いって何だろう?みたいな疑問に繋がったりもするんです。


序盤で言えば、現帝王の政治にマジョリティは満足していて、マイノリティである主人公がその現状を変革しようとする話に読めます。

そういう意味でダークなんだろうか?とも思うんです。

正義とか義憤ではなく、私憤で動く、我が身の状況を変えることに心血を注ぐ。

ただそうすると、書き出しの一節とかみ合わない。


というのも“大陸中の人々のために戦った”ってありまして、人々ってことはマジョリティだと思うんです。私憤ではなく義憤で戦ったはずで……??という感じで上手く没入できなかったと言うのが正直なところです。


読了部までで、まだ役者も揃ってないような感じなので、ここから色々と動き出して分かる背景もあるかと思います。

主人公の出生とか、たぶん民族的な血筋の問題とかなんやかんやありそうな気配があるなあと思いながら読むんですが、どうにも腑に落ちませんでした。


ただこの腑に落ちないって内容が『表現』ではなく『設定』の話なんですよね。

だから単純に好き嫌いの話でもあり、無粋な話にもなります。


作り込みとか、仕込みとか、とても丁寧に取り組んでおられる作品だと思います。

架空戦史とでもいうような重厚な背景を持っておられるのかなとも思います。


私はこんな感じでモヤっとした感想になってしまって申し訳ないなと思うんですが、所詮は一私見です。

ぜひ一度ご一読を。


https://kakuyomu.jp/works/1177354054890600863


改めまして、未翔完さん、ご参加ありがとうございました。


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