19.【ナツキとアキナの天体観測】和泉将樹さん

https://kakuyomu.jp/works/16817330659083965912


あらすじ等(作品ページより引用)

学年でも評判の美少女、那月明菜と、天文同好会を立ち上げた星が趣味の秋名夏輝。

 些細な事件で名前も知らずに知り合った直後、二人は二年生になってクラスメイトになった。


 同じく星が好きな明菜は天文同好会に入り、さらに二人は学級委員に就任するが、そのあまりに紛らわしい名前から、お互いの呼び方をクラスの中で定義されるという事態になる。


「面白いよね、私たちの名前」


 積み重ねていく日常を経て、お互いの絆を深めていく二人。

 そして、お互いが過去に抱える問題に、それぞれ直面していくことになる――。


――――――――――――――――――

メインストーリーである『アキナナツキ』の章と第二章である『ナツキアキナ』の章は、どちらも内容的には同一です。

それぞれの視点で、同じ物語を描いています。

ただ、『アキナナツキ』を先に読んだ方がいいとは思います。



☆☆☆



第19弾です。

和泉将樹さん、ご参加ありがとうございます。

がっつりネタバレ含みますのでご注意下さい。





今回は完結済みということで、全編読みました。

読み始めて思ったのが、最近読んだ二作(第17弾、第18弾)を太陽的だとすると、今作は月的な作品です。

太陽的というのは押さえきれない情動を爆発させたような作品、今作はそういう情動をぐっと抑えて、じっくりと書き堪えるような作風だなと感じながら読んでいました。

ラブコメというジャンルにはなってるんですが、あんまりラブコメ的な構成になっておらず、大人な雰囲気だなと思いながら読み進めていました。


進んでいくと、主人公が抑圧している状態、つまり目立たないように自分を抑え込んでいる状態というのが、太陽ではなく月っぽさを感じる要因になっているのかとなるほどなと読んでいました。


実際、ヒロインとの恋愛感情を意識して、自分の解放を始めると、確かにラブコメ的なドタバタとか、葛藤とかが表現されるようになって、後半になるにつれて太陽的な印象も受けるように変わっていきます。


視点変わって、ヒロイン視点で話が進むと、これはもう完全にラブコメの文法です。

じれったいとか、上手く伝わらないとか、そういうアレコレがあります。


と思っていたんですが、後書きから近況ノートを拝見した感じ、どうやら、この抑圧的な堪えているような雰囲気は、キャラの精神状態に基づいた描写がもたらすものではなく、単純に作者がどう書こうかいまいち決め切れてなかっただけっぽいかもしれません 笑

中盤辺りから一気に勢いがついたのも、どうもその辺から話の骨格が定まったっぽいですし 笑



“飽きる所まで読んで”……ということでしたが、飽きた飽きてないで言えば、ナツキアキナ編の10話、11話辺りに分水嶺がありました。

これがどういうことかというと、視点の変更って、片一方からでは分からない相手の心情、感情、行動、あるいは真意の答え合わせが出来るっていう楽しさだと思うんですね。


なのでとても単純な話で、お互いの行動様式や感情がシンクロしてると途端に読み応えが無くなるからです。

好きなんだね、そうだね、好きなんだねという確認作業になり、行動も一緒の時間が増えるので知らぬところで何してたんだろう?という疑問もあんまりないからです。


これがキャラ小説だと少し変わると思います。。


映画やドラマで言うなら、ストーリーが好きか、役者が好きか。

或いは、脚本が主体か、役者が主体か。


アンパンマンとか、水戸黄門とか、役者が主体なので、何十年と同じこと繰り返してても成立します。

ストーリーはあくまでキャラを引き立てるための要素です。


ただし今作は前者です。

ストーリーを活かすために登場人物がいます。

心情の変化とか、葛藤の開放とか、そういうストーリーを活かすために登場人物があるので繰り返しになると、『ここ読んだなあ』感が強かったです。


ヒロイン視点は、話が定まって迷いなくわーって書けると思うので書いてて楽しかったと思います。

書いてて楽しいぜ!みたいな雰囲気があったように思います。


キャンプに行く前日のアレコレとか、バーベキュー食べてるときのアレコレとか、主人公サイドで削った部分の掘り下げなんかがあると少し印象が変わったかと思います。


後、やられ役のヒロインの元カレ氏が、純粋にクズキャラで作られてるのも珍しいというか潔いと思いました。

話がブレないように、というのもあると思うんですが、ヒューマンドラマだとこういう人の人間味というか、至らなさみたいな部分もテーマとして挙げられたりするかな、と思うんです。ヒロイン側にも非があったりとか。ですが、まあびっくりするぐらい、退場に後腐れとか後悔がないキャラでした。


主人公、ヒロインのハイスペックぶりと併せると、なるほど確かに恋愛ドラマというよりラブコメ、ラノベ的な設定でスタートした作品でもあるのかとも思います。

元カレ氏がいつこのキャラに定まったのかも分からないですけど 笑


テーマが高校生の恋愛なんですが、先に書いた通り、とても大人な作風です。

落ち着いていると言うか、控えめというか。

謙虚というか。

いや、謙虚とは少し違いますが。


月的な作品。

ちょうど秋らしいですね。

ぜひ一度ご一読を。

https://kakuyomu.jp/works/16817330659083965912


改めまして、和泉将樹さん、ありがとうございました。


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