心の川
愛歌勇
第1話 友達
死にたくないそう思った
君に出会ってから僕は生きたいと…
『ここ何?』
『ここはリハセンターって言ってもう一つの幼稚園みたいなものよ』
僕は幼稚園と別にリハセンターっていう療育施設に連れてかれ、幼少期はそこで過ごした
そこはままならぬ会話もできない子達ばかりで
色んな男の子が居た、多動症を患い先生の言うことも聞かずひたすら走り回る子や何かとずっと騒いでる子
僕も積み木を足で積んでいた、正直可愛い方だと思う
「何してる?」
「え、足で…」
「俺も俺もやる!」
プラスチックで覆われた壁からここに来たのは快活な男の子だった
「嬉しい、みっちゃん!」
その子の名前は三矢って言って僕はみっちゃんと呼んでいた
内気な僕には彼の存在は有り難かった
もう覚えていないがアンパンマンミュージアムに一緒に行事で行ったり、何かと一緒だった、そう幼稚園から小学校にあがるまでは
僕は一生忘れない
「…居ない」
小学校に支援級に上がった時、当たり前に居ると思っていたみっちゃんは居なくて
初めてそこで友達という存在を理解した
僕は発達障がい者だ
幼少期、療育施設の所の大きな広場みたいな待合室でヒーローの絵本を読んだり、床に寝そべっていた
正直絵本の内容は理解できなかったけれどヒーローの姿を見るだけで格好良いと思った
そうなりたいと胸が踊った
呼ばれて、穏やかな先生とお話したり、色々聞かれて答えたのを覚えてる
僕は言葉を発するのがうまくできなくて’ひ’が発音できず、小学一年になってやっと言葉を全部発することができるようになった
母がどこか壊れるのに気づくにはまだ物心が全くできていなくて、僕はただ笑顔ってことすら分かっていなかった
僕は男の子で産まれた、双子でもう一人は妹だった
妹は全く僕と対象的だった
いや違う我慢していただけだとこの時は気づかなかった
幼少期僕は何かあったらすぐにものに噛みつき、妹にすら噛みついた
妹は僕と違って泣き叫んだりしなかった
買い物の途中で大の字で寝転んで泣き叫ぶ僕と違って、妹は素直だった
僕はその時生き物がどうだとか分かっていなかった
妹は小学校に上がった瞬間、友達がすぐにできた周りの人気者になった
僕はそれが羨ましかった
僕は反対に友達ができなかった、いや支援級で名ばかりの友達は居たかもしれないけれど、その時心を交わすってことがよく分かっていなかった
「みっちゃん」
クラスの端でそう呟いた
僕は話しかける勇気が僕にはなかった
家に帰って妹を見た
「
「なんでもない」
僕は妹の顔を見て心が痛くなった
小学校に上がったからやっと’生きてる’ってことが分かってはいたけれど、それでも嫉妬の心は消えなかった
「どうして…」
夜眠れず眼を開けて部屋の隙間から覗いた
「あなた分かってないでしょ、あの子はもう普通に生きられないのよ!!」
「雄人は雄人なりに生きてるじゃないか!」
「私は辛いのよ、あの子の母親で居ることが私には!!!」
お父さんとお母さんの口論で飛び交う怒号
母の悲痛な叫びに耐えられなくて、寝室の毛布の上で涙を流した
生きるのが辛いと思っていたが死ぬって事がまだその時は分からなかった
ある意味発達が遅いからこそ、死の概念がまだ僕にはなかった
日曜の朝、家族が嫌な僕にとってTVに映るヒーローの姿が僕の眼には鮮明に映った
話の内容はよく分かっていなかったけれど、それでも人助けするその姿に、僕もそうなりたいと思った
人を幸せにすることが自分の幸せに繋がるんだってそう思った
翌日、僕は登校班で学校に登校した
「…」
クラスの前で右往左往する
入るのが怖い、僕の居場所がないんだ、みっちゃんが居ないこのクラスなんて、僕は
ヒーローの元気な姿を思い出す
『ありがとう!』
『いえいえ!助け合いだから!』
あ、挨拶しなきゃ、テレビの人たちは挨拶してるから、僕はヒーローに…
同じ支援級のクラスメイトが僕に駆け寄る
「雄人くん、おはよう!」
「お、おはよう!」
「あ、雄人君喋った!?」
クラスのみんなが駆け寄る
「雄人君、おはよう!」
「おはよう!」
「おはよう!」
意を決して喋った僕にみんな珍しがり互いにまた自己紹介した
入学して2週間、やっと僕の場所ができた、不思議と僕は喋れるようになっていた
先生とも、僕の家族以外で
「ありがとう、よろしく!」
僕は挨拶の大切さを知った
ヒーローの話をしたりして僕はヒーローのお陰でやっと周りと繋がった
友達がまた、理解した上でできた日だった
笑顔を分かった日でもあった
みっちゃんと居る時と同じだってことが…
心の川 愛歌勇 @ofof
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