甘党小夜曲(あまとうせれなーで)

めいき~

甘党小夜曲

ベットからそっと立ち上がり、お腹を押さえてチラリと時計を見た。


「一時…、お腹空いたな」


ふらりと階段を降りて、一階の冷蔵庫を開けた。



そこには、ビックプリン(背徳サイズ)と書かれた特売のプリンが鎮座していた。

にっこりと笑う、至福の時。


やはり、夜食はいい。それが、甘いお菓子ならもっといい。


これだから、夜食は止められないとしっかりと冷えたプリンの底にある突起をぺきっと折った。ぷるんと皿に滑り落ちるプリン。


夜だから声は出さず、しかししっかり見つめて最初の一掬いを口に運ぶ。



~♪~♪


声にはならずとも、しっかりと濃厚さが頭を突き抜けていく。


頭の片隅でささやく、この時間に食べたら太るぞの声をグーパンで吹き飛ばし。

往復ビンタして黙らせ、次のひとくちを口に運ぶ。



(あぁ…、至福♪)



そうして、ゆっくりと紅茶で甘さを流し込む。

ダージリンに甘さが溶けて、実に素晴らしい。


甘さがまるで、揺れるカーテンに映された月光の様に。

喉の奥で、溶けていく…。



薄明りの中で、そっと呟く。



「夜食は魔性で、甘さは魔法」


そう、夢の時間に食べる。甘い夢の魅力…。


口に広がる魔法は、程よく幸福感をもたらす。

口の中の優しい魔法(あまさ)は、ゆっくりと溶けていくの。



「この魔法はあと十秒でとけます」




おしまい

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甘党小夜曲(あまとうせれなーで) めいき~ @meikjy

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