第9話最後の言葉
事件の2日後
刑事は連行された後、全てを話したようだった。
教授は罪を被っていた事が世間に知れ渡った。
そして、無罪として世間に放たれた。
身を寄らせてくれと頼んできたが。
俺はあの人を許す気は毛頭ない。だから無視した。
今日は講演も無く、仕事が無いので、赤星さん一家の家に花を手向けようとをしようと思った。
神崎も誘ってみたら、
「行く!」
「じゃあ赤星さんの家の最寄り駅で待ち合わせ。」
「おっけー!」
2日ぶりに駅であった。
事件の真相も分かり、余裕が出たようだ。
もう家は跡形も残っていない。そこにはただの砂地が広がっていた。
俺たちはそこに花を手向けた。
手を合わせた。
そこに人がいるように、丁寧に。
感情を込める。
俺たちは顔を上げ、向き合い。
「この後どうする?」
「私、用事あるから。」
「そうか。」
とてつもない孤独がまた俺を襲う。
結局俺の周りからみんな消えていった。
残ったのは彼女だけ。
お互い電車に乗る。
「何か大変だったね。」
「あぁ。久しぶりに騒がしかったよ。」
「寂しい。」
「何で?」
「朱音や雫がいなくなってから私の友達は居なくなった。久しぶりに共同作業ができたから。」
ドキッとした……気がした。
「それは俺も同じだな。感情が久しぶりに2転3転したよ。」
「ねぇねぇ。感じない?私の格好とかから。」
「まぁ。ちょっとオシャレしたか?」
「そう。あなたの為に。」
鼓動が早まる。気のせいではないようだ。
彼女の気持ちを察した。
「分かった。次会う時まで待ってくれ。流石に準備期間をくれ。」
「はぁ〜相変わらず思い切りがないな〜」
「その言い方は無いだろ……」
彼女は少し口角をあげて、
「そこも悪くない。」
「何様だ。」
ついに彼女は笑った。
そして、俺の最寄り駅につき
「じゃあ。」
「またね。」
俺はまた1人で歩く。そして、近くの公園が目に入る。懐かしくなり、よってベンチに座ってみる。
誰もいない公園。あの頃より1段階暖かい。
もうすぐ夏が来る。
子供たちの服は既に夏服に変わっている。
「おじさん。」
聞き覚えのある声がした。
周りを見てみる。しかし、誰もいない。
今度は青年の声がする。
「もう、燃えて灰になったからもう知ってる人はいない。けど、あの人は遺書を残してたんだ。」
「俺の後輩には、俺と同じ奴がいる。そいつを守ってやってくれ。って。だから、俺はあんたを助けた。」
雫は俺に語ってくれた。
また、朱音の声が聞こえる。
「覚えてる。多分ニュースで放送されてたんだけど。お母さんの手紙。私たち、お母さんを助けるために入っちゃったんだ。」
俺の脳裏に記憶が蘇る。
成人にはしてあげたかった。
だから、"一人"で自殺する。
「これが最後の言葉。あなたはもう立派なお父さん。ありがとう。」
俺は静かに手を合わせた。
そこに誰かがいるように。
これで、謎は全て解けた……いや、家事の前に入ったなら灰に埋もれて足跡なんて残らないんじゃないか?だから、足跡は犯行の後についたものでは?けど、それならどこかに足跡が繋がっているはず。でも、その足跡はそこにだけしか、残っていなかった。
謎は深まるばかりだ。
「この事件の真相は何なんだ……」
生暖かい風が俺を包み込む。
「視点を変えてみたらどうですか?」
あのネットの言葉が蘇る。
仮に、あれが犯行前に出来たものだったとしたら…… 少女達が言っていたことが本当ならば……
足跡がそこの1箇所にしかついてない理由は説明がつく。けど、あんなに綺麗につくものか?
俺は考えた。
あの刑事が、あえて残したもの……なのか?
帰るか。
俺はゆっくり歩き出す。
緑の綺麗な葉を生やした木が並ぶ、並木道
その中を歩いていく。
その時、携帯が震えていたことに気づく。
神崎からの大量のスタンプ。
「何だよあいつ、ふざけんな。」
すぐさまアプリを開く。
「警察の方が私たちを呼んでます。あたしは先に行っとくからね!」
体に鳥肌がたつ。見計らっていたかのようなタイミング。
とにかく足を素早く回転させ、なるべく加速した。
警察署に着いた。何だが、ここですら懐かしく感じる。俺の知っているあの人は……
「あの、立花 空です。」
「立花さんですね。こちらへどうぞ。」
1、2、と上がっていく。
案内されたのは、面会室だった。
「立花!やっと気づいた?」
「おお、すまんな。」
「昨日2日ぶりだね。立花くん。」
あの刑事、浜崎武尊。
俺は身体中から冷や汗をかく。
「久しぶりだな。何か。」
「違和感に気づいたか?最後、内心焦ってしまってつい、話を少し曲げてしまったんだ。
「足跡の事か?」
「ご名答。」
「あんた、アイツらの足跡をわざと残したのか?」
「あらま、そこまでバレてるのですか?」
「いや、あくまで推測だ。根拠は無い。」
「まぁ、合ってますけど。」
「何を考えていた。」
「私ね。最後に、見ちゃったんですよ。
あの家に尋ねた時。
これを。」
彼は紙を差し出す。
「うん…?」
「あなたは知っているはずです。私が質問をした時に、きちっと答えておられましたから。」
俺は頭から、記憶を掘り起こす。
あいつとあったのは……
「もしかして……手紙か?判読不明の。」
「よく思い出しましたね〜。これは、その手紙を解読して別紙に書き出したものです。」
「でも、あれは母の言葉じゃ……」
「それは、また別の方ですよ。あなたは、愛されていたんですね。」
その言葉から、俺は読まなくてはいけない。そう言われてる気がした。
俺の手は折りたたまれた紙を無造作に開く。
みんな。すまない。朱音。雫。受験は上手くいったか?俺のせいでうまくはいかなかったか?
朝早く出ていってしまうその後ろ姿を見て、
成長を感じると共に、少し寂しくも感じます。
荷物を持ちに、毎回迎えに来てくれて、その笑顔や真剣に勉学に取り組むその姿に俺は感動した。
赤い星は後に続くものって意味があるんだそう。
でも、君たちは俺の後を追って来るなよ。
お前らは俺を追い越すんだ。
後に続きたいのであれば、俺の大事な後輩にしろ。あいつならめげずに偉業をきっと成し遂げる。俺には分かる。あいつは、人の立場になって考えられる。だからこそ、人を従える立場になれる。
お前らはそれについて行くんだ。
もう一度言っておくが、俺の後には来るな。
次に、赤星花。君は俺にいつも対等に接してくれた。時に、頼りがいのある1面。けど、天然さも兼ね備えた最高の天使だ。
ご飯は美味しい。気遣い、我慢をしてくれてありがとう。たまには、俺にも頼ってくれてもいいんだぞ。俺にもなにか背負わせてくれ。
時には、人を頼る事も大切だぞ。これは、俺が刑事にもらった言葉だ。
君は2人を立派に育てあげてくれるだろう。俺は思う。
俺が居なくなって不自由があるかもしれない。
身勝手な判断をしてすまない。
俺はきっと花に会うのはこれで最後だと思う。
だって、俺はこんな事しておそらく地獄行きだろう。けど、お前はきっと、あの子達を守ってくれる。そして、人を助けられる。
花はきっと天国行きだな。
朱里や雫と一緒に幸せに。
最後に、君へ頼みだ。
幸せに生きる事。それと、
この手紙をぜひ、後輩にも見せてあげてくれ。
俺はあなたを最後まで思っていましたよ。
愛してる。
最後に、後輩。立花 空。
お前は唯一花以外で、俺と対等に接してくれた。そして、俺と同じキラキラネームを持つ者。
すかいは、俺の人生を華々しく飾ってくれた。
俺を照らしてくれる存在だった。
昔の明るかった頃の自分と重なって懐かしく思えた部分もあったよ。
君は良い奴だ。同じ立場のものとして言おう。
すかい。この社会を変えてくれ。
人々はまだ、差別についての考え方で他の国に遅れを取っている。
もっと、意見を多様化させて理解を深めてもらえるように。
理解するには、やはりその人の立場がで物事を見れるようにしないといけない。
また、リアリティがあるほど、自分と重ねて考えることが出来る。すると、より一層理解が深まる。
君はもっと、自分にとって、都合の悪い部分を
表に出して行って欲しい。誰もが隠したいと思う。けど、それを1人でも出せばそういう状況は
切り開かれる。つまり、言いやすくなるんだ。
あなたは相手の立場に立って、物事を考えられる。客観的に物を考えられる。
きっと、周りから慕われる存在となるだろう。
君みたいな強い人間はきっと皆の憧れとなるだろう。
幸せになれよ。 赤星 光より。
手紙はここで終わる。
「感動したよ。しかも、母を助けるために子供が火の海に乗り込んでいく姿にも。だから、アイツらの跡を残した。」
俺達は無言でその場を立ち去り
警察署の前で、泣いた。
暖かい風が俺達を優しく包み込んだ。
少年少女A 5の遣い @cat7fish3
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