聖女は魔王城に居る

紅 蓮也

第1話 あの国が動き出した

「魔王様、魔王妃様、イルミナ王女様。ナリキン王国が動き出したようです」


「今度は何をしてくるのだ?」


「はい。創世の女神からのお告げがあり、聖女が魔王城に囚われていると知った国王の命で、勇者である王太子が聖女を魔王城から救い出し、魔王様を討伐するつもりのようです」


私を救い出す?聖女であるけど魔王の娘である私を救い出すってなんだ?

私は攫われたわけではなく元々魔王城がお家なんだけどな。


「アルテナお母様……そんな神託を授けたのですか?」


「イルミナ。私がそんな神託なんて授けるわけないでしょう。

ルシフェールと結婚した時に世界の運営は妹のアルテミスで引き継いでもらったもの」


「アルテミスちゃんにですか」


「アルテミスの許可なく神託を授けられないわよ。

それにあの国には私やアルテミスを主神とする神殿は無いから神託なんて授けられないわよ。

それにしてもアルテミスはイルミナにちゃん付けで呼ばせているのね」


アルテミスちゃんに会った時にアルテミスお姉ちゃんかアルテミスちゃんって呼んでと言われてアルテミスちゃんと呼ぶことにしたのよ。


「はい。アルテミスちゃんに頼まれましたから……

創生の女神と言えばアルテナお母様のことですし、あの国は誰を主神にしている神殿何でしょうかね。


「まぁ、誰でもいいわ。女神が創生の女神を騙っているなら神界での裁きも必要だけど、あの国が別の女神を創生の女神と言って主神にしているだけなら放っておきましょう」


女神が別の女神を騙ったら人間だけに任せるわけにはいかないですもんね。


「そうだな。あの国は私達が手を出さなくても無くなるだろうからな。

またイルミナを攫うつもりならその者たちだけを始末すればいい」


また攫うつもりなら?私、あの国に攫われた事があるの?


「ルシフェールお父様。私、誘拐されたことがあるのですか?」


「あぁ……イルミナが1歳の時だから覚えていないよな」


1歳の時……1歳の時……。

ああ、魔法が初めて使えて浮遊魔法で城から抜け出して街に出ちゃった時かな……


いきなり真っ暗になって、長い間真っ暗だったのに明るくなったと思ったら知らない所で、知らない顔ばかりの人間が居た。


「あの……私が浮遊魔法で城を抜け出しちゃった時ですか?」


「おお!覚えているのか。あの時は城中大騒ぎになったんだんだぞ。

イルミナ付きのメイドや騎士たちがこの責任は命で償いますと騒いだりしてな」


「知らない人間に囲まれていたらルシフェールお父様が大きな扉を蹴り破って入って来たかと思えば、周りに居た者をすごい形相で蹴散らし、先程までの怖い顔が嘘だったかのような笑顔を向けて抱っこしてくれましたね」


「そうだな……その後の雷にイルミナはビックリしてしばらく泣いていたな……」




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