第1章第2話

心臓がどくんと波打つ。

なぜか強く、こう思った。

頭に強い風が流れ込んできたみたいだ。

明確な根拠もないに、どうしてこう思ったのかもわからない。

今までも何人もの魂を刈ってきたけど、こんなことは一回もなかった。


でも、「この人はまだ死なない。生きてもらわなきゃ。」と確かに感じた。

絶対にまだ生きる力か残っているはずだ。

なぜかそう言いきれる。


(どしたらいいんだろう、、、。)

初めてのことでどうしたらいいのかわからず、しばらく病室内を右往左往していた。

(命令だし、、、刈ったほうがいいのかな。でも、、、。)


すると、木暮さんが寝ているベッドの布団がもぞもぞと動いた。

そして、、、


「あのさ、人の病室で何やってんの。さっきから。」


、、、。

え、、、?

誰に言ったの、、、?


凍てつく冬の北風のような声。

ギギギ、、、と音がしそうなくらいに重い首を一生懸命に動かして周りを見てみたが、

病室には、誰もいない。

すると、木暮さんがまた口を開いた。

「おまえだよ。他に誰がいると思ってんの」


、、、。

まさかね。


私はまさか、まさかの思いで自分を指差して、こう言った。

「私のこと?」


「うん。」


、、、。

後ろを振り返ってみる。

、、、。

誰もいない。

、、、。

もう一度、、、。

、、、。

誰もいない。

、、、。


「ええええええええええええええ!?!?」


「うるさ。ここ、病院なんだけど。」


あっ、すみません。

ここ病院でした~、、、っていやいや!?

そもそも私どれだけ大声出しても、生きてる人には私の声、聞こえないんだけど!?

いや、そもそも私姿


驚きつつも、恐る恐る聞いてみた。


「あのう、、。私の姿が見えるんですか、、?」

「うん。」


即答。

ためらいも間も愛想もなく答えられた。

、、、。

どうしよう。

びっくりしすぎて言葉が見つからない。

だって、こんな人間はじめて出会ったもん。


「なんとか言えよ。」

「だって、、、ほら!『人は本当に驚いたとき、無言になる』って言うじゃん?」

「いや、そんなの聞いたことねぇし。つかお前、人じゃねぇだろ。」


ぐはっ!

た、たしかに、、、。

たしかに正論なんだけど、、、。


「えっと、私ね、生きてる人間に姿見えないはずなんだけど。」

「へーあっそ。」


、、、、。


「、、、。なんで見えるのかな?って。」

「知らね。昔からそういうの見えるから。」


、、、へー。

うん、なんか、ね?

冷たい、、、。


「えっと、、、そうなんだね。」

「、、、。」


なんというか、そっけない感じで会話が難しい。


「私、木暮さんみたいに死神とか見える人はじめて会ったから、、。」

「ふーん。お前、死神なんだ。てか、『木暮さん』ってのやめろ。うざい。ヒナタでいいから。」

「わかった。私は花城あかり。アカリでいいよ。」


ヒナタはやっぱりそっけない。

というか、なんか怒ってるみたいだ。

私の姿が、生きている人間に見られてるってことか、、、。

今までにない経験なので少し戸惑う。

お互いに話題がなくなって、沈黙が続いた。

その沈黙を先に破ったのはヒナタだった。


「そういやさ、お前、俺の霊を刈りにきたんだろ。」


あっ、そうだった、、、。

、、、って、


「なんでわかるの!?」

「いやいや、そんなでっかい鎌なんて持って、『死神でーす』なんて登場されてんだぞ?死神の目的なんて人の魂刈るしかねーじゃん。」


、、、。

たしかに、、笑


「ほら、はやく刈れば?」


冷たい声で言い放つ言葉。

なんでそんなに急かすのかな?

もっと生きたいって思わないのかな?

私はゆっくりと口を開いた。


「でもさ、元気そうだよね?」


そう言うと、相手はかすかに眉をひそめた。


「俺の心臓の病気は治らない。もう長く生きられないんだ。」


彼の言葉には違和感が感じられた。

根拠も何もないけど、絶対違うって。


「うそ。まだ生きられるでしょ。」

「うそじゃない。大体、仕事の命令が入ってるならやるしかねぇだろ。」


そうだ、、、、。

たしかにそうなんだけど、、。


「わからないんだけど、なんというか、、。まだ死んじゃいけないような気がするの。まだ生きられるって!絶対!がんばってよ!」


まだたくさん生きてほしい。

がんばってほしいんだって、応援したつもりだった。

しかし、ヒナタはうつむいた。

何かを考え込んでいるようだった。

そして―――――――――――



「「「余計なお世話だ!!何を根拠に、『絶対』生きられるなんて言えるんだよ!!」」」


こう、ヒナタは突然怒鳴った。

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チューリップと春風と もあ @moa_more_love

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