第2話
――翌日、早朝。
私は南の宮の周辺をぶらぶらと散歩していた。
本来であれば嫁いだ翌日なんて閨のあれやこれやで疲弊して起きられないところかもしれないけれど、私たちの場合はそもそも旦那様である東宮殿下がそんなことを考えていられるような体調ではない。
だから必然的に一人寝となった私は何事もなかったどころかむしろいつもよりも早く就寝してしまったくらいで、早朝からすっきりとした目覚めを迎えているというわけなのだ。
「さすがは皇宮だわ。どこもかしこも綺麗に整えられているわね……」
まだ人気がない早朝の清涼な空気の中、目の前に広がる壮麗な建物や庭園の風景に思わず感嘆の吐息が漏れる。
そして誰が見ているわけでもないという気楽さに任せて、一度両腕をぐっと上に伸ばしながら大きく息を吸い込んだ。
ちなみに、誰もいないというのは通行人ばかりの話ではなく、私の随行者もいないという意味である。
……もちろん、本来であれば東宮妃などというこの国でも屈指の高貴な身分になってしまった私は、ふらふらと一人で出歩けるような立場ではないだろうと思うのだけれどね?
それは重々承知していたのだけれど……侍女を早朝から働かせることになってしまうのも、なんだか申し訳ないと思ってしまったものだから。
だから短時間で切り上げて誰も気付かぬ間に私室に戻ってしまえば問題ないだろうと結論付け、私はなるべく地味めな服を着込んで単独行動しているのだった。
そうして特に目的地も定めずにてくてくと歩きながら、ふと頭をよぎるのは昨日のこと――。
「あの
――東宮殿下のそばに控えていた、提燈の声……こほん。提燈のことである。
彼はどう見ても、東宮殿下の最側近と言っても過言ではない立ち位置の人物であったように思う。
加えて顔も悪くなく、何よりも素晴らしいボイスの持ち主。
それなのに前世の声優のボイスでないところを見る限りストーリーに出てくることもない名無しのモブの可能性が高そうだというのは、一体どういうことなのだろうか。
「あのポジションにいれば、たとえ
ストーリーの時点において、彼が殿下のそばにいなかった。あるいは、いられない何らかの事情があった。
そういうふうに考えることも出来るのではないだろうか、と。
「「ゔゔゔん……」」
でも、お生憎様!
名探偵よろしく小さなヒントからずばずば推理できる天才であったり、殿下がおっしゃっていたような特殊能力を持っていたり、それ以外でも何かしらの転生チート能力を持っていたりしたならばともかく、私はただのしがない声フェチ令嬢なのよ!!
いきなり頭脳労働をしようとしても専門外すぎて、何も思いつくわけはないわよね……と思わず遠い目になってしまったところで。
「うん?」
小さな違和感に苛まれた私は、その場にはたと立ち止まった。
「あれ? 待って。私の唸り声に、他の誰かの声もかぶさっていたような……?」
きょろきょろと周りを見回した私は、自分が整備された石畳の道を外れて緑あふれる庭園らしき場所に足を踏み入れていたことに今更ながら気がついた。
そしてその庭園の風景をじっと見つめ、うんうんと唸りながら、手元のキャンバスに何かを書きつけている小柄な少女の姿も。
少女との距離はまだ多少あったので、向こうはこちらの存在には気付いていないようだ。
……宮から勝手に抜け出してきている手前、誰にも姿を見られないほうが良いだろうと頭では理解していたのだけれど。
だからすぐに踵を返してこの場から去るのが、私が今取るべき行動に違いないということも当然分かってはいたのだけれど。
それでも――。
「綺麗……」
――私は思わず彼女に近づき、その手元を覗き込んでしまう。
というのも彼女が描いていた風景画は、遠目に見ても信じられないくらいに見事なものであったからだ。
「え?」
さすがに近づいて声を発すれば、向こうも私の存在に気付く。
くるりと振り返った少女は私の存在に驚いたようではあったけれど、賛辞の言葉には素直に喜色を浮かべて「ありがとうございます」と頭を下げてくれた。
「本当に、これはなんて見事な絵なのかしら……!」
「そうですか? 私、いつもは人物画を描くことが多いのですけれど、せっかく手に入れた異国由来のこの美しい緑色の顔料を最大限に活かした絵をどうしても描いてみたくなってしまって。それで試行錯誤しながら異国風の本格的な風景画に挑んでみているものですから、お褒めいただけたことはとても自信になりますわ」
「なるほど。確かに、なんだか怖いくらいに心惹かれる緑色ですね。あなたの繊細な筆致とも完璧に調和していて、この絵が完成したら一体どれほどの名画になることでしょうか!」
その鮮烈すぎるほどに鮮烈な印象を残す緑の色彩に何か引っかかるものを感じつつも、心からの気持ちを込めてそう伝えた私に対し、少女はどこか儚げな笑みを浮かべて頷く。
「自意識過剰と笑われるかもしれませんが、自分でもそう思っています。……ふふっ。描ききることができれば、ですけれど」
「え……?」
よく見れば、少女は少し顔色が悪く見える。
体つきも華奢というレベルを超えて細いように思われて、もしかしたら根を詰めて描いているせいで体調が悪く、少し思考がネガティブになっているのかもしれないと考えた私は――。
「当然、描ききれるに決まっていますよ! お疲れならば、少し休んでからでも良いと思います。……いえ。お急ぎでないのならば、むしろ休んでからのほうが作業効率も上がるのではないでしょうか?」
――心を尽くし、懸命に彼女を励まそうと言葉を重ねた。
「……そう、ですね。そう言われれば、そんな気もしてきますね」
そんな私の気持ちが通じたのか、女性がふっと口角を上げたところで、後宮外にある鐘楼から朝を知らせる鐘の音がごーんと辺り一帯に鳴り響いてきた。
それは人々が一日の行動を開始する目安にしている音であったため、私たちは互いに慌ててその場から立ち去ることとなる。
こうして偶発的に発生した出会いはやがて忙しい日々の中で色褪せていき、記憶の彼方へと忘れ去られていってしまう……かに思われたのだけれど。
不思議な運命の因果を知ることになるのは、このわずか数日後のことなのであった。
***
「えっ、う、嘘でしょ……!?」
私の呆然とした呟きが響くここは、南の宮の一室。
平常はあまり物がなく、東宮の住まう宮とは思えないくらい殺風景のそこは、数日前――見事な風景画を描いていた女性と出会ったあの日の昼間に限っては、運び込まれた大量の名品の数々で足の踏み場もないほどに溢れかえっていた。
というのも、商人が南の宮まで訪問販売に来てくれていたもので。
原則としてよほどのことがない限り後宮外に出ることが出来ない妃嬪たちのために、後宮へは定期的に商人が物品を持ち込んでくることになっているらしいのだが、あの日は定例の日とは別で特別に呼び寄せてくれたのだそうだ。
――他でもない、私だけのために。
臥せるばかりでろくに夫らしいことも出来ず、婚礼の儀さえまともにさせてやれなかったことへの罪滅ぼしとして、欲しい物があればなんでも購入して構わない。
そんな殿下のありがたい心遣いから、あの場をセッティングしてくれたのだという。
……そんなこと、これっぽっちも考えなくても構わないのにね。
そもそも私は全部織り込み済みで嫁いできたのだし、殿下の麗しい声を聴かせてもらえればそれで十分なのだから。
とはいえ、私に格別の配慮をしてくれたことは素直に嬉しく思う。
別に無駄金を使うつもりはないにせよ、日々の暮らしに必要なものがあればちょっとだけ買わせてもらおうかしらね。
そんな気軽な気持ちから、私は商人が品を並べた部屋へと足を踏み入れたのだった。
だがそこで、驚くべき事態が発生した。
「東宮妃殿下にお目にかかります。わたくしは後宮に出入りさせていただいております、しがない商人にございます。以後どうぞご贔屓に」
「……へっ!?」
……この人が「しがない商人」ですって? んな馬鹿なことがあってたまるものですか!!
腰を低くしてにこやかに挨拶してきた白髪の商人に、私は心の中で即座に言い返してしまった。
いや、実際には気付かぬ間に多少言葉に漏れていたかもしれない。
だって、この商人の声は――どう考えても、CV天瀬拓実だとしか思えなかったんだもの!!
天瀬拓実――それは前世において、大御所の一人として名を轟かせていた男性声優の名前だ。
長いキャリアの中で担当したキャラクターは数知れず。
「虹色」とも称されるその魅力的な声音で、作品に登場する全役(おそらくは最低でも三十人分くらいはいたはずだ)をたった一人で担当するという偉業を成し遂げたことでも知られている、まさに
そんな声優の声帯を持つこの人が、「
そんなこと、絶対にあり得るわけないでしょうが……!
とはいえ私の反論の根拠は商人の声、ただこの一つきり。
さすがにこれほどまでに薄弱すぎる根拠で何かを論じても誰も聞く耳など持たないだろうと考えられる程度の理性は、情動を荒ぶらせている私の中にもきちんと残っていた。
だから私は悶々としながらも東宮妃の仮面を被り直して「大儀」と鷹揚に応じてみせ、その後は東宮殿下と提燈に見守られつつの買い物へと移行したわけだけれど……とてもではないけれど、品物に集中できるような状況ではないわよね!
だって、すぐそこでずーっと
商品説明の声を聞きたいがあまりに「あれは何?」「これは何?」と繰り返してしまったのは、申し訳ないけれど必然の流れだったのではないかと思うわ……。
その衝動は、ついに無言で堪えきれるレベルを遥かに凌駕した。
私の買い物が終わったと見るや商魂たくましく東宮殿下にも売り込みを始めた商人が、異国由来だという美しい緑色の布地を手にして巧みな弁舌を披露しているさまを見つめ、私は思わず呟いてしまう。
「ああ……(尊すぎて)死ぬわ……」
すぐにはっと気付いて口を閉ざし、「ちゃんとした東宮妃」の仮面をもう一度被り直したつもりだ。
しかし浮き立つ気持ちはその後も収まることはなく、素晴らしいボイスを全身に浴びることが出来て私はもう天にも昇る気持ちだった。
そして、その日からさらに数日経過した今――商人が撤収してまた殺風景になったあの部屋で、私はどういうわけだか面会を要請してきた提燈と向き合っている。
ややあって深い一礼とともに告げられたのは、衝撃的な一言。
「明華様がいてくださったおかげで、毒殺の危機を回避することが出来ました。心より感謝を申し上げます」
「……へっ?」
ど、毒殺ですって!?
確かに私は毒疑惑の調査を命じられ、この後宮に入った。
でもここまでに私がやったことといえば、率直に言ってイケボに悶え転がっていることくらいだったと思う。
肝心の調査の進捗は特になく、これから頑張らなくてはいけないなと思っていたところだったのだけれど……。
「明華様。あなたは商人の声を聞いた後に、緑色の布地のほうを見つめながら、『死ぬわ』とおっしゃいましたよね? それでピンとこられた東宮殿下が調査を命じられ、その結果あの異国由来の布に猛毒が含まれていることが判明したのです! 異国でもつい最近まで毒があるなどとは知られておらず、それゆえにあの美しい緑に魅せられた人々の中にはもうすでに犠牲者が出てしまっているようなのですが……。しかし今ではあの布に使われている染料――確か『
「……」
しかしこの国にはまだ、毒成分はもとよりそもそもあの布の存在すら情報が流れてきていなかったので、この
明華様がおられなければ東宮殿下が購入していただろうと仰せでしたし、あるいは殿下が購入されなかったとしても売れ残っていれば私が私費で購入しても良いかなと思うくらいに美しい布でした。
そう考えると、まさに間一髪のところで私たちは「声に愛されし東宮妃殿下」に助けられたわけですね……などとその後も提燈はつらつらと言葉を続けていたが、一旦こちらにも落ち着く時間を与えてもらいたいと思う。
なにせいきなり与えられた情報があまりにも多すぎて、私のポンコツな脳みそでは今にもパンクしそうになってしまっているからね!!
とりあえず深呼吸を一つ。すぅ……はぁ……よし。
それじゃあ、早速確認を始めてみましょうか。
まず私が「死ぬわ」と言ったのは、当然のことながら生物学的な死の意味ではない。
尊すぎて死にそうという、オタクによくあるあくまでも情緒的な問題に関する話なのだ。
そして、私が見ていたのは毒布というわけではない。
正確にはそれを手にして巧みな商品説明を繰り広げていた、CV天瀬拓実の商人のほうなのであった。
しかし「人の声を聞くだけで色々なものを看破したという伝説の初代皇后陛下がお持ちだった特殊能力を、私も持っているのではないか疑惑」(※もちろん私にそんな能力はない)と相まって上手い具合に曲解された結果、私は「商人の声から何かを察し、緑の布地が人に死をもたらしうる危険物だと見抜いて見事に警鐘を鳴らしてみせた」ことになってしまった、という話であるらしい……。
「嘘でしょ……?」
偶然と誤解が謎の融合をして、こんな結果が生み出されることなんて、ある?
……いや、つい最近にもあったか。
だって私が東宮妃になったことだって、私の発言を(父によって意図的に)誤解されたことが発端だったんだものね……。
「ははっ……」
まあとにかく、現状はそういうことであるようだ。
とりあえず自分が置かれた状況をまとめ終えた私は、はぁと大きく息を吐いた。
じゃあ次に、与えられた情報を吟味してみましょうか。
使われた毒は「花緑青」と言っていたわよね?
……別に、私は特段毒物に詳しい人間というわけではないのだけれども。むしろ、どちらかと言えば疎い人間であろうとは思うのだけれども。
でも殊これに関して言うのなら、前世の人生でちょっとだけ聞いたことがあるような気がするわね。
確かエメラルド・グリーンやパリス・グリーンなどと呼ばれ、その美しい緑色が愛好されてヨーロッパあたりで一時期広く流行したとかいう代物じゃなかったかしら?
しかし、後にそれはとんでもない毒物だったと発覚した。
その染料で美しく染め上げた緑色のドレスは、着たら死んでしまう文字通りの「死のドレス」に仕上がってしまった。
壁紙に使われたそれはかの有名なナポレオンの死因ではないかと言われているくらいで、とにかくそれを使った製品は人体に有害なものでしかなかったわけだ。
そんな危険物が私の目の前に現れて、しかも危うく東宮殿下か提燈が触ってしまうところだっただなんて……今更ながら、背筋が凍るような話である。
あまり考えたくはないけれど、提燈がドラマに出てこないキャラクターであるという一件にも、もしかしたら絡んでくるような話だったんじゃないかしらと疑心暗鬼に陥る。
例えば、この毒に誤って触れて命を落としてしまっただとか。
……いやいや。証拠もないのに、今こんなことを考えていてもどうしようもないわよね。
「というか、待って。怖いくらいに美しい緑色って……」
私、つい最近に他のどこかでも見たことがあるような気がするんだけど。
「どこだったかな……。あっ、そうだ! あの画家さんだわ!」
「明華様、どうかなさいましたか?」
「私、この後宮でとても美しい風景画を描いている少女を見かけたことがあるんです。服装から察するに皇帝陛下の妃たちが着ているようなものほど華美ではなかったはずなので、どこかの宮で仕えている侍女か何かではないかと思いますけれど。まあそれは置いておくとして、その少女は緑色の顔料をうまく活かして見事な絵を描いていたのですが、もしかしたらそれも『花緑青』――つまり、命に関わる危険な毒物だったのかもしれないと思って! 現に、すでに体調も悪い様子でしたし……。もしかしたら、早急に対処してあげないと、本当に取り返しのつかないことになってしまうかもしれなくて……!」
「わかりました。該当者がいないか、こちらで取り急ぎ調査してみます」
もちろん異常があればすぐに治療させますよと力強く請け負ってくれた提燈の言葉に、私はほっと安堵の吐息を漏らす。
それならば、きっとあの子も大丈夫よね。
そうして少女の無事を願っていた――さらにその数日後。
「な、なんで? なんでいきなり、菫淑妃と面会することになってしまったのかしら!?」
私は内心でひどく狼狽しながら、南の宮の私室で身支度を整えていた。
身支度と言っても、私はただ侍女に言われるがままに立ったり座ったりしているだけだけれどね。
なにせ高貴な身分の女性は基本的に身の回りの世話を自分ですることはない上に、自分のセンスに自信がない私はありとあらゆるコーディネートを侍女たちに任せきりにしているもので。
しかしそのおかげで、私は現在進行形で物思いに耽る事ができている。
頭の中を占めるのは、今朝方にもたらされた突然の面会要請。
その面会相手というのが、皇帝の妃の一人である菫淑妃ということだった。
現皇帝には何人もの妃がいるが、その中でも皇后のいない現在の後宮において最高位に位置しているのは四夫人――つまり、貴妃・淑妃・徳妃・賢妃の位をいただく四人の妃たちだ。
菫淑妃は、まさにそのうちの一人。
ちなみに、私の年の離れた姉である暁華は徳妃の位をいただいている。
「幸いなのは、菫淑妃は別にお姉様と敵対してはいなさそうだということかしらね……」
皇子の母親同士は皇位を巡っての対立が発生しやすいようだが、淑妃の子どもは
権力争いとは一線を画した位置にいるおかげか、淑妃はどの妃とも比較的友好的な関係を保っているらしいと聞いた。
「だからといって私という人間をどう見ているのかは知らないし、どうしていきなり
呟いている間に、私の身支度はつつがなく終了していたらしい。
渡された扇を手に立ち上がると、数名の侍女を引き連れて応接間へと移動する。
宮の前で待つことしばし。
現れた豪奢な輿からしずしずと降りてきた菫淑妃は、どこか儚げな印象を与える温厚そうな佳人であった。
「この度は急な面会要請に応じていただきありがとうございます」
「いえ、ようこそお越しくださいました。どうぞこちらへ」
挨拶もそこそこにすぐに宮の中に入ってもらい、応接間にて向かい合った彼女の口から語られたことは何かと言えば――。
「明華様、この度はわたくしの娘をお救いいただき本当にありがとうございました! なんとお礼を申し上げたら良いものか……」
「……えっ!?」
もう十分に予想外のことは経験したと思っていたけれど、まだまだ驚くことに慣れるなんてないものなのね……。
おもわずそんなことを思って現実逃避に走ってしまうくらいには考えのつかなかった事態に、私は思わずぴたりと動きを止めてしまったのだった。
「ど、どういうことでしょうか……?」
「絵を描いていた少女をお助けくださいましたでしょう? 実は、その少女というのはわたくしの娘である公主だったのでございます。親馬鹿と言われるでしょうが、母親思いの素直で可愛い子で。嫁ぎ先も決まってさあこれからというところでしたのに、急に体調を崩してその原因もわからないという状態に陥ってしまいましたのよ。わたくしを含めた周囲は絶対に治ると言い聞かせておりましたけれど、聡いあの子はもう自分は先が長くないようだと悟ってしまっていたのでしょうね。大好きな絵に没頭して、勝手に宮を抜け出してまでも理想の絵を完成させるべく努力していたようです。でもそのおかげで娘はあなた様に出会うことが出来ました。顔料はすぐに廃棄させ、今は治療に専念させているところですから、きっとまたすぐにでもあの子の元気な姿が見られるようになるはずですわ」
声フェチ令嬢がうっかり美声に悶えていたら、東宮殿下(神ボイス)との結婚が決まってしまって身も心も死にそうです! 桜香えるる @OukaEruru
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