第2話
ここは数少ない地球にある拠点《きょてん》。
見た目は、周りと同じような民家だが、地下に私たちは大きな基地を作っている。
広々とした大間の扉を2回ノックした。
「魔王様。少しよろしいでしょうか」
私は重要な報告をすべきと、自分で判断したので、こうして許可なく立ち入っている。
「その声は…誰だっけ?急に何かな?」
「アリスだよ。そろそろ覚えなきゃダメだよ?長い付き合いなんだし」
魔王はそっかそっかと笑いながら、ソファーにゴロンとし、身体をソファーにあずけた。
「それでなんですが、あの施設にまた1人、魔力持ちが加入しました」
長いソファーに寝っ転がってた小さな少女は「あの12人目ぇ?」とめんどくさそうに返した。
「人工的なものも合わして16名。これ以上、奴を長期間送り込んでもあんまり成果は得られそうにありませんが…如何なさいますか?」
少女は悩んだ素振りを見せ、数秒考えた後にこう答えた。
「なら君が行ってきてよ」
「は?」
私はその意味を理解出来ずに!何も言わずに扉を閉めた。
扉越しから「ねぇ、ちょっと待って!」と、止められたことは気にしないでおこう。
〇
久しぶりになっちゃんと再開してから2週間がすぎた辺りのことだった。
平穏な日々も束の間。その日、事件は起きた。
「ねぇぇ!なっちゃんまた布団に入ってきたの!?」
「ぅぅん…こえがおおきいよぉ……」
「これ私の布団なんだけど!?」
何度目か分からないような質問をなげかけても、彼女は幸せモードに入ってるようだった。
まあ、まだ4時辺りだからそうなるけど…。
でも起こされた身にもなって欲しい。
「ねぇ、なっちゃん聞いてる?もう私の体は触らないで」
「ふぇぇ?」
彼女は、今も私の体を撫で回したり、揉んだり、くすぐってみたり、色んなことをしていた。
「突然びっくりして声でちゃったよ」
私はあんまり体を触られたくないタイプなので、今、とても気分が悪い。
なんなら気晴らしになっちゃんに抱きついてやろうと思って、私はなっちゃんの体に飛び込――
「こ、寿さん、何を、してるの!?」
1人の女子生徒の姿がそこにはあった。
「あの、いや、これは違くて…!」
結局、説得に失敗し、団地並みの速さでこの事件が広まっていった。
当のなっちゃんは「私たちラブラブだね」と、恥ずかしさなんて1ミリも感じてなさそうな可愛いお顔でニコニコ笑っていた……
○
暑い日差しに照らされながら、地球温暖化を感じていた今日この頃、とても嫌な気持ちで授業を迎えた。
「今日は対人訓練!ペアはそれぞれ各自で組むように!」
陰キャには厳しい2人ペアを組むことには心配はいらない。
私にはなっちゃんがいるのだから!
「なっちゃん、一緒にペア組も!」
そういうと、彼女は苦笑いしながら「ごめんね、私、神山君に誘われてるから……」と申し訳なさそうに言った。
神山天斗。
同級生の男子生徒。
いちばん敵視している危険な存在だ。
(も〜また約束されてるぅ!なんで!?なっちゃんは渡さないから!!)
私は相手から声をかけてもらおうと、つったっていると1人の少女がやってきた。
「やぁやぁご機嫌麗しゅうかな?」
「は、はぁ」
多分間違ってるであろうその言葉に、私は次の言葉を探した。
「あ、あの。私とペアになってくれませんか?」
そう言うと背の低く可愛らしい少女は「おん。いいぞ!」と言った。
彼女の名は
「皆さん!ペアは決まりましたね?それでは〜開始ィ!」
その時、みんな一斉に動き出したが、私は何が何だか分からなくて、ボーっと突っ立っていた。
もしやと思い、竹下さんの方を向くと、いつの間にか消えていた。
「……竹下さん。これ何するの?」
そう聞くが彼女は現れない。
というか先生も、みんないない。
(え、神隠し!?)
そんなバカなことを考えてると、急に目の前に人が現れた。
「しゃぁぁぁ!私のかちぃ!!」
勝ち誇ったようにニッコリと笑うなっちゃん、今日も可愛いよ。
それに比べて傷だらけの神山君は滑稽だ。
ざまぁねぇなと(心の中で)嘲笑ってやった。
続々と帰ってくる生徒たちを見ながら、頭の上にクエスチョンマークを浮かべていると先生がこっちに来た。
「あぁ、有栖ちゃんには言ってなかったけ?対人訓練っていうのはあそこのでっか〜い山の中でおこなわれるもので、ペアのどちらかを鬼として、その鬼に40箇所傷を負わせられると勝利!ってやつなんだ」
「?」
わけも分からず放心状態になっていると「そういえば上神ちゃんは?」と誰かが言った。
そういえばどこだろう……
(もしや、まだ山の中で戦ってるとか……いやそれは無いか!)
結局、竹下さんは放っておいて、次の授業へと進んでいった。
そうして時間が流れて日が暮れ始めた頃。
あたりは紅色で埋め尽くされ、とても幻想的な光景だなと思った。
そろそろ門限なのに帰ってこない竹下さんを心配しつつ、空の美しさを眺めていると先生がお姫様抱っこで、泡を吹いた少女を抱えていた。
「……ん?竹下さん!?」
それはよ〜く見るとぐったりした竹下さんで、どうやら気絶しているようだった。
「先生!一体何があったんですか!?」
(まさか優希がちょっかいをかけに?そんなことだったら……)
私は「自分はなんて無力なんだ!」というような目を向けてると、先生は「ん?これね。どうやら有栖ちゃんが息を潜めて隠れてるって思ったらしくて、ずっと探してるうちに木から落ちて気絶。それだけだよ」
「は?」
私は全く理解が出来ずに、可哀想だな。とか申し訳ないな。とかアホだなとか。色んな感情に埋め尽くされた。
破滅の悪魔の成れの果て @homme
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