同級生との昼食

 各々がタブレットで注文をしてから10分程すると料理がテーブルに運ばれてきた。俺が頼んだのは半熟ミラノ風ドリアというドリアの上に半熟卵が乗ったというものだ。もちろん、ドリンクバーも注文している。


「そんじゃ、食べるか」


「そうだな」


「「「いただきます」」」


 そう言って俺達は各々の頼んだ料理を食べ始める。ちなみにだが智也はハンバーグセット、彩花はカルボナーラを頼んでいた。2人はこの店に来慣れているからか注文に迷いがなかった。まぁ、この店は学生御用達なので別段おかしなことでもないので何も言わないが。


「なぁ、悠はそんだけで足りるのか?」


「ん? 全然足りるが?」


「悠くんも男の子なんだからもっと食べた方がいいんじゃないの? 悠くんさすがに細すぎると思うよ?」


「そうか?」


 平均的な高校1年生男子に比べたら少し痩せ気味なのは否定しないが細すぎるということにはいささか疑問を覚える。俺の身長は176cmで体重は60kgくらいだ。痩せ気味ではあるがこれくらいでも問題ないと俺は思っている。


「悠の場合は身長もあるから余計に細く見えるんだよ」


「なるほど」


「確かに悠くん身長高いもんね~」


「まぁ、俺は気にしてないからいいや」


 結局、細すぎるだのなんだの言われても俺自身が気にしていないので太ろうなんか考える必要は無いのだ。それに、全世界の女の人を敵に回す覚悟で言うと俺は太りにくい体質なのだ。太ろうとするには多少の努力せざるえないので俺はそこまでして太りたいとは思わない。何よりめんどくさい。陰キャは基本的には面倒くさがりなのだ。


「なぁ、2人って付き合ってないんだよな?」


「そうだが。朝も言っただろ?」


「恋人とかいるのか?」


「!?」


 智也はいきなり何を言っているんだ? それに、何で彩花はモジモジしてるんだ? 智也が質問をしてから彩花の様子が何かおかしい。お皿の上でフォークをずっとクルクルと回している。そこにはパスタは無いぞ?


「なぁ、智也。友達もいなかった俺に恋人なんていると思うか?」


「だよな。知ってた」


「じゃあ、聞くなよ……」


「いや、俺が気になったのは柏村の方だ」


「私は……いないよ?」


 そう言って彩花は何故か俺の方を上目遣いで見てくる。そこでなぜ俺を見る? 質問をしたのは智也なんだからそっちを向けばいいものを。けどまぁ、確かに智也の言いたいことも分からないでもなかった。彩花は間違いなく学年でトップクラスに可愛いくなっていた。それなら、彼氏くらいいてもおかしくは全然ないのだから。


「そういう智也はどうなんだ?」


「俺か? 俺は高校生活で頑張るんだ……」


「そうか。まぁ、頑張れ」


 そう言って智也は少し上を向いてしみじみと言っているが、その言葉に妙な熱意を感じた。聞いた俺としては特に興味もなかったのだが、会話の流れ的に聞いておくべきだと思ったのだ。まさかこんな決意表明みたいなのを聞かされるとは思わなかったけど。


「ねぇ、悠くんは気になる子とかいないの?」


「いないが?」


「そっか……高校生活で見つけられるといいね!」


「別にいらないが?」


「「……………」」


 彩花がどこか安心したような、けれど残念そうな顔をしたと思ったら今度は絶望的な顔をしていた。智也は智也でありえないものを見たといった顔である。どうして高校生は恋人を求めるのだろうか? 青春を謳歌したいだなんて言うが、恋人がいれば青春を謳歌したことになるのか? それなら、恋人のいない人は全員が青春を謳歌していないことになるのか? それはおかしいと俺は思う。俺は友達も恋人も作らずに1人で中学生活を過ごしていたが、それを不満に思ったことは無いのだから。


「俺は悠が心配だよ……」


「なにがだ?」


「はぁ……柏村も苦労するな」


「!? ……本当だよ」


 彩花が苦労する? 一体何を言っているのか俺には分からないが2人は妙に納得したような感じがしているのでそういうことなのだろう。分からんけども。


 そんなこんなで、昼食を食べたあとは店でゆっくりとドリンクバーを満喫したあと、店を出て今日のところは解散となったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

陰キャな俺の初恋相手の妹が、学年一の美少女になっていた。それでも、俺からしたらそれだけだ。 @sirahama0407

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ