いるかのなみだ
@karaageShota
いるかのなみだ
いるかは、なみだをながしました。
ずっとずっと、いっしょにいたうみがめが、ワカメに書き置きをして、とつぜんいなくなってしまったからです。
そこにはこう書いてありました。
「任務に向かう。必ず帰るから、待っていてくれ」と。
いるかは、心配でたまりませんでした。
いつもいつも、危険な任務に向かううみがめが、もし永遠にいなくなってしまったら。
そんなことを考えると、ますますいるかのなみだは止まりませんでした。
そのころ、うみがめは、空にいました。戦闘機に乗っているのです。
うみがめのいるアオウミ隊と、敵のアカウミ団とのたたかいは、激しさをましていました。
つぎつぎに破壊されていく味方の戦闘機、はっきりいって、アオウミ隊は劣勢でした。
でも、そんなことでへこたれるうみがめではありません。
愛するいるかのため、よりいっそう洗練された動きでアカウミ団を撃ち落としていきます。
アカウミ団も、すこしずつ戦力をけずられています。
このまま勝ってうちへと帰る。
その想いを強く持ち、ついに全てのアカウミ団を倒した、かのように見えました。
しかし、アカウミ団には隠し玉ががあったのです。
それはとても大きなカメ型ロボットでした。
口を開ければレーザーを飛ばし、甲羅からはミサイルが飛んでくる。
ついに、うみがめの戦闘機にも傷が付きました。
ついにこの時が来たか。
うみがめは、首にかけたペンダントを開き、いるかの絵にそっと口付けをしました。
そして、静かに覚悟を決めました。
アカウミ団のカメロボットに、ひとつの戦闘機がものすごい勢いで飛び込んで行きました。
カメロボットは慌てて口を開けてレーザーを出そうとしますが、そこに戦闘機が思いっきりぶつかり、大きな音を立てて爆発しました。
レーザーを撃つために口を開けていたカメロボットは、内部まで焼き尽くされ、完全にその動きを止めました。
この戦いは、アオウミ隊の、勝ちでした。
しばらく経ったあと、いるかのもとに1通のワカメが届きました。
それは、うみがめの最期を伝えるワカメでした。
いるかは、なみだをながしました。
いままでに流したなみだの、なんばいもなみだをながしました。
「そんなに泣かないで、ぼくはここにいるよ」
そう声をかけたのは、うみがめでした。
あの時、カメロボットにぶつかった戦闘機には、すでにうみがめは乗っていませんでした。
ぶつかる方向を定めたあと、直前にうみがめは空から海へと飛び込んでいました。
だれもが爆発に巻き込まれたと思われていたうみがめは、じつは生き残っていました。
いるかのもとには、うみがめの殉職と戦いでの功績によって、多額のお金が渡されていました。
「これだけあれば2人で暮らすには十分だよ。僕はなくなったことになっているし、もう危険な任務にいく必要もない。ずっと一緒に暮らそう。」
うみがめはそう言いました。
いるかは、なみだをながしました。
これが、いるかのさいごのなみだとなりました。
それからは、ずっと幸せだったからです。
いるかのなみだ @karaageShota
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