《充電切れ》

15時頃に僕らは横浜駅に着き、ボストンバッグをロッカーに預けた後、大まかな予定を立てる。というよりは、彼が説明してくれる。僕の方が長く神奈川に住んでいるものの、特にオススメできるスポットも無かったので彼の行きたい所を回るという感じだった。

「んで、まずこっからちょっと歩けばランドマークタワーあるから…」

「え、待って、歩くの?」

「え、うん。20分くらいだし。」

「え、足しんどくない?登山の疲れ残ってるし。桜木町駅まで電車で行った方が…」

どうやら彼は彼は横浜の街を歩きたいらしく、少し顔が曇る。

「おし。歩くか。」


そして僕らは日産の本社やアンパンミュージアム、臨港パークに立ち寄りながら、ランドマークタワーに着いた。

ただ、別にこれの上に特別行きたいわけでもなかったのでここもすぐに通過する。そしてワールドポーターズへと向かう途中、上を見上げると横浜感が漂う景色が広がっていた。左にはランドマークタワーが聳え立ち、右へと順に視線を向けると、帆船日本丸、コスモワールドの観覧車、ロープウェイが並んでいる。

「おお〜。」

二人同時に歓声が上がった。その後、僕らは汽車道を通ってワールドポーターズ、赤レンガ倉庫へと向かった。

赤レンガ倉庫を出た時には時刻は20時になっており、ここまでずっと歩いてきたが、全然苦痛ではなかった。

僕はあまり横浜には観光スポットが無いと思っていたが、間違っていた。ここは最高のデートスポットである。あぁ、彼女がいればなぁ。

どうやらそんな虚しい願いすらも天には拒まれたようで、小雨が降ってきた。幸いにも、この後は最後に中華街に向かうだけだったので、彼にとっては降ってくるタイミングが良かった。

中華街につき、大鶏排やタピオカなどの食べ歩きか、食べ放題に入るかかなり迷ったが、歩き疲れてお腹が空いていたこともあり後者を選んだ。

僕らは席についてすぐ、興味のあるものを片っ端から頼んでいった。そして予想通りすぐに限界が来てしまった。まだ机にはかなりの量が残っているにも関わらず。僕は目の前の友人に尋ねる。

「今、何合目?」

「八合目。そっちは?」

「ん?滑落中。」

などとふざけ合いながらなんとか胃に収める。そして、最後にラストオーダーの時間に、胡麻団子とフカヒレスープだけ頼んだが、待っている間に次第にお腹が膨らんできて、料理が運ばれてきた時には絶望しかなかった。それから20分ほど経った頃、店員さんが店を閉めるという声かけを始めたので、僕らはなんとか口に詰め込んで会計を済ませて店を出た。そして大通りまで出た後、二人とも道の端にうずくまる。

食べ過ぎた。なぜ、僕はこうも毎回、自己管理ができないのか。後悔とともになんとか口の中の食べ物を胃に収め、駅へと向かう。

それから僕らは横浜駅へ到着し、バスタで軽く話した後、別れを告げた。スマホの充電は、残り10%を切っていた。


家に帰ると、暗闇に包まれた部屋に流れる沈黙が、独りだという事実を感じさせる。

電気をつけて、部屋着に着替えた後、ベッドに横たわる。

スマホを見ると、ちょうど1%だった。

その後、電池が切れたように眠った。

外では虫が囁き、静かな夜に僕は沈んでいった。


〜完〜


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


(余談)


えー、前回ですかね。彼に忘れ物がないか、と尋ねたのは。あの後の彼の返答は嘘です笑。僕が適当に考えました。ただ、僕が尋ねたのはほんとです。その際に、彼はたぶん無い!と自信を持って答えたんですけど、後日いざ洗濯物を干して見ると、彼の靴下だけでなく、Tシャツを忘れていってました笑。面白い子ですね。


まあ、それはともかく、ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。

少しでも想像の中で富士登山を楽しんでいただけたら幸いです。

皆さんはぜひ、もっと計画的な登山をなさってくださいね。


繰り返しになりますが、本当にありがとうございました!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【人生谷ばかりなら山でも登ろう】 空川陽樹 @haruki_sorakawa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ