第19話 新刊無事発売!!

「念願のバイオレット先生の新刊ーっ!!」

 私は胸に本を抱き抱えながら、屋敷の居間でテンション高めにはしゃいでいた。

 本日、無事亡国姫の冒険シリーズの新刊が発売され無事購入。


 お義理母様は年に1回出版社と進捗状況の連絡を取っていたから、今回の件は順調に進んだ。

 最初、お義理母様の方から出版社に原稿出来たから読んで欲しいって連絡を入れた時、大パニックだったみたい。

「え? 原稿ってあの原稿ですかっ!?」って。


 それもそうだと思う。だって、十年間まったく進んでいなかった原稿が完成したんだもの。


 最終発売日から空白期間十年越え。

 新刊発売は難しいだろうなぁと誰もがあきらめていたけど復活!!


 十年ぶりの新刊は、新聞などでも大々的に取り上げられ、書店でもフェアが開催。

 私も本を購入するときに書店で見てきたんだけど、店内は当時子供だった大人達で溢れかえっていた。


 懐かしむ人たちに混じりながら、私も同じ気持ちに……

 うんうん、気持ちわかるよ! って、ひたすら共感した。


「良かったね、ソニア。本の続きが出て」

「はい!」

 ソファに座っているルヴァン様はにこやかにこっちを見ながら言った。

 部屋にはお義理父様とお義理母様が一緒にいるんだけど、二人はお茶を楽しんでいる。


「本が出たということは、作者は生存していたのか」

「ちょっと、ルヴァン。前にも言ったけど、勝手に殺さないでって言ったでしょ!」

 ルヴァン様の台詞に対して、お義理母様が立ち上がり眉をつり上げながら言う。


 お義理母様、急に立ったからティーカップからお茶が零れそうですよ?


「すみません……そういえば、母上も好きでしたね。亡国姫の冒険シリーズ。買いましたか?」

「……いえ」

 買ったというよりは、出版社から献本貰ったはず。

 私も一冊貰ったけど、書店でも買いたくて買ってきた。


「定期的に本が発売されるといいな。ソニアが喜ぶ」

「別にソニアさんだけに喜んで欲しくて書いているわけじゃないわ。いろんな人たちに楽しんで欲しくて書いているのよ……作者は」

 お義理母様、そんな風に思って書いていたのかぁと思いながらじーっと見ていると、見過ぎてしまったせいで視線がばっちりあってしまう。

 お義理母様はむすっとした顔をすると、すぐにそっぽを向いてしまった。


 ツンツンですね、お義理母様。

 そんなツンツンでも、読者に楽しんで欲しいと思って書いているんですね! と、心の中でにやにやする。


「またきっと、すぐに亡国姫の冒険シリーズの続きがでますよー。だって、近くにネタ探しを手伝う人がいますから。ね、お義理母様」

「……悪魔の囁きだけどね」

 私の言葉に、お義理母様がそうぽつりとつぶやいた。




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結婚したら猛獣使いと呼ばれています~創作のために王宮潜入しませんか?~ 歌月碧威 @aoi_29

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