第6話
「おつかれ。俺貼ろっか?」
白波瀬に声をかけられた。
「あ、お願い」
絆創膏を渡す、ごつごつした、厚い皮膚にあたる。
少し狭くなった距離、少しの汗の匂い。
「ありがと」
あ、そっか。白波瀬って100メートルだっけ。
「礼は高いぞ?」
普段はハーフアップの髪、今日は全てまとめられている。
「何?」
さっきより近づいた距離。
「リレーは見ること」
アナウンスが鳴って、リレー選手が招集された。
小さくなっていく背中に書かれた数字を覚える。
まあ髪長いし目立つか。
好きな人だったら、こんなことしなくても見つけられるものなのかな。
リレーはうちのクラスは一位だった。
白波瀬はアンカーで2人を抜いた。
目の前を通り過ぎる時、後ろ髪が揺れた時、ドキッとした。
練習が終わり、湿度が数パーセント上がった教室で、白波瀬の髪の先をしばらく眺めた。
あいたい 家猫のノラ @ienekononora0116
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