第3話 降りられない

 過去に心霊スポットとして名高いテナントビルで働いていたとき。

 在庫を取りに地下に行かなければならなくなり、エレベーター待ちをする時間も惜しかったので従業員階段を駆け下りながら、毎日残業キツイな、だってこの階段、全く進んでいる気がしないもんな……ホントに昔は坂道ダッシュとかできてたのになあ、蓄積疲労かな、と考えながら階段を駆け下り続けて、

(待ってホントに長くないこれ)

と焦ったことがありました。地下二階に向かうために一階から降りてきただけなのに、階段は五坂位を折り返している、と気づいたのです。このビルの怖い話を探っていた中で、地下に降りたら帰れなくなった人の話、というのを見たことがあった私は心底恐ろしくなってしまって、大好きだった戦隊ヒーローの勇気溢れる歌などを脳内に思い浮かべつつうろ覚えの般若心経もリミックスして無心で

(もう少しで、あと一つ階段降りたら倉庫、絶対そうに決まってる)

とだけ考えて足を動かし、無事に倉庫にたどり着いて胸を撫でおろしたという経験があります。

 そこの仕事は、辞めました。

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拾った話 砂倉衣あや @sakuraiayako

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