夢日記:ヤシー

高黄森哉

ヤシー


 私は高校生で、修学旅行に来ていた。どこへ来たのかはわからない。京都かもしれないし、そうでないかもしれない。とにかく、どこかの商店街にいた。商店街というより、お土産屋といった方が近いかもしれない。二列の細長い建物に、たくさんのお土産屋が入っていて、その二列の間が崖になっている。だから、あちらへ渡るためには、吊り橋を通らなければならない。橋というよりも板といったほうが正しい、つり橋を渡らなければならない。


 私は友達の跡に続いて、そんな橋を渡ろうとした。すると、なんの前触れもなく、目の前で橋が分断された。その橋は、真ん中を軸に回転する、旋回橋だったのだ。下の景色が見える。とても高い場所だ。私は現代に、こんなに危険な通路が許されているのが、信じられなかった。


 友達は、その通路が百八十度横に回転したので、こちらから、あちらへ移った。私はその時、この橋の、歩かなくてもよい、という利点を見つけたが、それだけのために、このような危険にさらされるのは、不条理だと思った。橋が回転する際は、必ず、警報機を鳴らして知らせるべきだ。


 私はようやく渡り終える。私のことと橋のことを見ていた同級生は、その橋をヤシーと命名した。そして、いつ回転するか、そしていつ崩落するかもわからない橋を、度胸試しのように捉えた。やんちゃ組のある男子生徒が挑戦する。


 私はそれで、この橋が、修学旅行にきた生徒の度胸試しのために、残されているのではないかと思った。思い出として、そういった日常から逸脱した行為をするために。もしそうなら、安全性を無視している。嫌悪感が背中を、ムカデのように這い上がるのを感じた。


 いつの間にか、二列の建物は駅のホームになっていた。どうやら、そろそろ帰らなくてはいけないらしい。私は、学生時代の実際の友達とホームにて、電車を待っている。小雨がしんしんと絶え間なく降っていた。とても世界が暗いが、しかし夜ではない。台風の午後のような空模様だ。


 電車が駅に停まった。後ろから、もう一台、電車が来ていた。私たちは電車が、突っ込むのではないか、という予感がしていた。また、ホームにいるクラスメイト全員が、事故を起こせ、と一斉に念じているのが、思考に流れ込んできた。待て、この速度ならば本当に事故を起こすかもしれない、、、。


 案の定、電車は電車に衝突した。車両の前方が、車両の後方にめり込んでいく。どれだけの人間が死んだのか、と考えると恐ろしかった。中でたくさんの人間が圧死して、、、。これは全国ニュースになる。大変なことが起きてしまった、という空気は伝染するかのように、ホームを支配した。


 しかし、悲劇はそれだけではなかった。次から次に、電車がやってくる。電車がやってきて、前の車両を押しつぶす。やばい。ここから逃げなければ。私は、同級生と逃げることにした。次はホームに突っ込んでくるかもしれない。


 その通りだ。今度の電車は横転して、横なぎにホームへ滑り込んだ。幸いなことに、階段が壁になって、事なきを得た。階段だ。あの階段は丈夫にできているようだ。私は階段まで走った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夢日記:ヤシー 高黄森哉 @kamikawa2001

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

同じコレクションの次の小説