第4章 儀式
バラージ共和王国の最上位魔術師、ダヤン・ナカの葬儀の翌日、
魂の浄化の儀式が、バラージ城の蒼神の聖堂で執り行われていた。
聖堂の天井は高く、窓はあるが、薄紅色のカーテンが掛けられ、照明は、祭壇にあるキャンドル数本だけになっているが、それでも、祭壇は、眩しいくらいの光に満ちている。
祭壇を前に、巫師メリッサ、そして、ダヤン・ナカに育てられた、バートン・キラ、国王ベイシア、副国王バルジャン、交友があったカイル・アルライン、そして、カイルの師匠、パルキンが立ち、魂との交信する様子を静かに見守っていた。
魂の浄化の儀式は、肉体が失われた時に、肉体から離れたアストラルとエーテルを1次的に、別の場所に納めるために行われている儀式で、魂と交信できるシャーマンである巫師が、魂の声を聞き、この場にいる者と、巫師を通じて会話ができる場でもある。
長い髭を蓄えた、面長のメリッサは、呪文を数分唱え、険しい表情をし、また呪文を唱えはじめた。
聖堂には、メリッサの言霊が響き、その心風は、たおやかな風に変わり、キャンドルをかすかに揺らしている。
メリッサは、しばらくして、皆の方を振り向いて、目を見開いた。
「ダヤン・ナカ樣からご返答がありません。」
その声は低く重かった。
ベイシアは、
「返答がない?それは、どうしたことだ。」
ベイシアは思わず、大きな声で、メリッサに尋ねた。
「国王、魂と交信できないのです。ダヤン樣が、ここにおられないのです。」
メリッサは、自分をなだめるよう静かに言った。
「ここにいない?では、どこにおるのだ。」
ベイシアがそう言い終えると、
バートンはすぐさま、メリッサに尋ねた。
「魂と交信する出来ないとすれば、魂が失われてしまったということなのでしょうか?」
「はい。失われてしまったか、あるいは、隠されたのかもしれません。いままで、そのようなことは珍しいことではありますが。」
メリッサは、バートンを見て答えベイシアに言った。
「魂をなんらかの理由で、遮蔽して、連れ去ったことも考えられます。」
「魂の遮蔽か?なんらかの理由というのは、ダヤンと交信させてはならないと思う者の仕業か?」
「ダヤンの不審な死因を思えば、考えられなくはないこと。そうですね?バートン。」
カイルは、深妙な表情のバートンに言った。
「信じがたいことではありますが、こうなった以上、魂が遮蔽されて、隔離されているとしか、説明できないと思います。」
ベイシアのとなりにいた、副国王バルジャンは「国王ベイシア、魂を隔離する魔術を使えるのは、この国でも数名、ダヤン・ナカ樣を除けば、わずか2、3名です。」
バルジャンは、あらためてバートンを見て言った。
「あなたもでしたな。バートン。魂を隔離するスペルを習得しているソーサリーは。」
「おっしゃる通りです。」
バートンは、まっすぐな瞳でバルジャンを見て答えた。
迷宮救助隊 〜ダンジョン・レスキュー〜 柏木星凛(せいりん) @seirin1985
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