魔法についての考察

ろくろわ

魔法に対する知識と考察。そして十秒の思考。

「この魔法はあと十秒で解けます」

「この魔法はあと十秒で解けます」

「この魔法はあと十秒で解けます」

「この魔法はあと十秒で解けます」

「この魔法はあと十秒で解けます」

「この魔法はあと十秒で解けます」

「この魔法はあと十秒で解けます」

「この魔法はあと十秒で解けます」

「この魔法はあと十秒で解けます」

 ある日、唐突に頭の中で警報のように鳴り響く声が聞こえた。


 私は頭の中で繰り返される「この魔法はあと十秒で解けます」について恐怖よりも好奇心が勝った。これは考察をしなければならない。

 まず「この魔法は」と言う言葉から、私もしくは私を取り巻く環境には、既に何らかの魔法がかけられていると言う事がわかる。

 次に「あと十秒で解けます」と言う言葉から、今の状況や世界がで成り立っている可能性が高いと言うことが考えられる。

 すなわち十秒後に魔法が解けた時、今の状況から何かしら変化が起こる可能性があると言う事だ。


 それでは「この魔法」とは何かを考えてみよう。

 私の中で魔法とはこの世の理に縛られないもの。等価交換に属さないもの等だと考えている。つまり何にも無い所からいきなり物が出てきたり、宙に浮き空を自由に飛び回り距離や時間を無視した移動が出きること等だと考えている。

 しかし生活をしている上で起きている現象は全て科学や人々によって説明がつく。よってこの魔法とは、何も無い所から火が出る水が出るや空を飛べる等の不思議現象と言う訳ではなさそうだ。

 となると環境や法則そのものに魔法がかけられている可能性が高いのかもしれない。

 しかしそうなると先の「不思議では無い」と過程していた事がそもそも誤りであるのかもしれない。

 だとすると本当は人間の手から炎が飛び出し、空を飛び、遠くのところまで一瞬で移動し無から有を生み出すことは当たり前の事なのかもしれない。


 つまるところ、魔法が何なのかや、何に対してかけられているのかと言う事を把握するのは難しくて分からないのだ。


 魔法が解けた時、世界が世界のままなのか、私は私のままなのか。或いはそもそも私と言うものが存在しているのか。物理法則はどうなっているのか。魔法とは何だったのか。


 その事が解るのは一秒後だ。


 私は最初の「この魔法はあと十秒で解けます」を聞いてから九秒で様々なパターンを想定した考察を行い、きたる十秒後に備え地に足をつき目を見開き注意を周囲に向けた。






「この魔法はあと十秒で解けます」





 了

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