第5話
僕はそれなりにモテてきた気がしていた。人生で何回か告白されたことがあったのもそうだが、一夜限りの過ちというのを何回も経験していた。そういうことが人生であったから、僕はモテてきたと思っていた。何もない人に比べてモテてきた、と言えるのかもしれなかった。そうなると当然、彼女がいた事になるのだが、もちろん、彼女はいたことがあった。今はいない。いるのは大好きな妻だ。モテてきたとか、モテるだとか、今はどうでもよくなった。だから恋はやっぱりテキトーがいい。
居酒屋で彼女から聞いたことは、彼氏と別れたことだった。他にもたくさん話をしたけど、彼氏と別れたことが印象が強すぎて、他に話した内容を覚えていない。下衆な事を言うけど、彼女が彼氏と別れたことが本当に嬉しかった。
その話を前の職場の皆に言うと、からかわれるし、笑いながら、人によっては真剣に、最低な男と言われるけど。この送別会から今日までの話が僕が人に唯一話せる恋の話だ。もしかしたら鉄板の笑い話なのかもしれない。誰に言っても笑ってくれるし、話の広がる、いじりがいのある話になる。さすがに、最初に一夜を共にしたことは言ってないけど。
前の職場の皆というのが今の僕と妻との共通の知人、共通の飲み仲間、ずっと長く続く共通の友達になる。
情けない自分自身を受け止めた僕には、情けない自分を受け止めてくれる大切な人達がいる。
恋なんてテキトーでよかった 穏眠そろ @onmin-soro
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます