第2話 俺氏、過去を回想。そして捜索する。
ギルドのある街を出てから、たどり着いたのはのどかな村だった。
街からは遠く離れた場所で、馬車だと乗り継いで、一週間程度。
体力が有り余っている俺は、とりあえずほぼ夜通しで歩いていたら、
なんと、たったの3日程度でついてしまった。
「...俺、こんなに体力有り余りすぎていたのか...。」
こんなに体力があったのを気づいたのは、あのムカつくギルマスに今まで行動を制限させられていたせいだろう。
どうして、今まで強く反抗してこなかったのか。自分でもわからない。
ちなみにここに来る道中、俺はどうして言いなりになっていたのかを調べるため、自身のステータスを調べたかったものの、この世界は教会が持っている特殊な道具でないと調べる事すら出来なかった。
調べたかったものの、その道具は、教会は教会でも大きな都市にある支部しかなく、近くの教会には設置していなかった。
催眠魔法とかされたのかと思っていたのだが、今までの記憶を思い出して見ても、思い当たる節はなかった。
「...もしかして、他人のいう事を聞いておかなきゃと自己暗示をかけていた可能性もあるな。でも、どうして?...」
これがどういう理屈なのか、どういう理由なのかがわからない。
ただ思い当たるのは、一つあった。
「...前世での記憶による影響か?」
前世での俺は、相手に自分の言いたい事をいう事ができない人間だったと思う。
その原因は、当時の家庭環境にあった。
親父は自分のいう事が聞けないと、暴力を働かせる奴だった。
けれど普段はむしろ温厚で、仕事も真面目にこなす不器用な人間だった。
怒った時にだけ、いつも手を付けられない人間と化してしまった。
日常生活では、彼の沸点を沸かせないように気を使う事で、うまくやって行けた。
しかし、俺はいつも怒らせないように、おどおどしていたと思う。
それでもなんとかやっていけていたある時、
怒った親父がある事件を起こした事で、その均衡が崩れてしまう。
どんな理由なのか分からなかったが、ある日怒った親父が俺の姉を殴ったらしい。
その日を境に、姉は部屋に引きこもるようになり、理由を知った母親が激怒。
姉と一緒に家を出てしまい、別居生活を行う事になった。
父親は、反省し後悔したものの、時すでに遅し。
そのまま別居が続き、俺の高校の卒業を機に、母は離婚届を提出した。
そのタイミングで、俺も母に説得され、家を出る事にした。
その後は、親父達と距離を取るために、県外の大学に入学。
親父との遣り取りは、ほぼメールだけ。
結局、本人が亡くなる最後まで、直接会う事はなかった。
大学を卒業し、数年が経ったある日、突然父が交通事故で死去。
葬式には、本番にだけ参加した。
急にいなくなって、なぜか虚しさだけ感じた。そんな感じだったと思う。
物思いに耽ってしまった。
長々と俺の過去を述べたが、今に戻ろう。
村に着いた俺は、早速食糧を手に入れる為に、辺りを巡る事にした。
「とりあえずまずは食かな。流石に三日三晩ほぼ寝ずに歩くと、お腹は減るしな。あの街から早く離れて、できる限り国外へ出たいのだが。」
辺りを散策していると、突然叫び声が聞こえてきた。
「助けてくれ!」
声が聞こえた方向を見ると、男性が手を地面について、息切れしていた。
彼は腕から血が出ており、何者かに攻撃されたのが伺えられる。
「どうしたんだ!」
「娘が...。娘が森に行ったきり、帰ってこなくて...。探しに行ったら、狼が襲ってきたんだ!誰か頼む!娘を助けてくれ!」
狼?珍しいな。この辺りではあまりでないはずだったが...。
群れごと、どこからか移動してきたか?
しかし何か引っ掛かる。
なぜか俺が行かなければ行けないと...。そう思わせる何かが。
そのように考えていたら気づいたら、
いつの間にかそのけがをしている男の前に立っていた。
「...おい。その娘さん、森のどこの辺りでいなくなったか分かるか?」
先ほどの村の近くには、広大な森がある。
地図上で、その森は他国との境界線ともなっており、
実は頻繁に賊がこの森を超えて移動しており、モンスターも多く生息している。
そんな危険な森に、今俺はいる。
先ほどの怪我をした男の話を聞くと、娘さんは普段から薬草の採取に来ているらしく、深い所までは行かないらしい。
また狼は、この森にしか生息しない特殊な種類らしく、普段は奥までいかないと襲ってこないそうだ。
だが今回は、森の入り口に近い所で襲われたと言っていた。
おそらく、群れが繁殖しつつあるのかもしれない。
「...そう言った割には、なんか周りにはモンスターはいないな?なぜだ?」
そう聞いていたので、入り口付近から結構警戒していたのだが、
なぜか周囲に気配は感じられない。
しかも、そのまま奥に進んでも、娘さんや狼どころか、虫すら一匹もいないのだ。
「...気味が悪いな。早く娘さん見つけてあげないと。」
事前に薬草が生えている地帯を教えてもらい、そのエリアを中心に広範囲を探した。
だがやはり娘さんは見つからず、しまいにはモンスターも見つけられなかった。
「...やはり異変が起きているのかもな。やれやれもう実質勇者じゃなくなったのに、面倒なのはごめんだぞ。」
その後も引き続き、奥地まで行き、捜索をしていた。
そしたら、突然何もないところで服が引っ掛かるような感覚が生じた。
実際に服を見てみたが、破れたとかの異変もない。
「ん?なんだ?もしかして...。」
目に魔力を込めてみる。
そしたら、何かしら白い薄い壁が目の前に現れた。
どうやら結界が張られている場所であり、
そこから先は魔物等が入れないようになっているらしい。
「もしかして、この先に行っているのか?でも入っていいのか?」
入る事に躊躇していると、突然後ろに気配を感じた。
目の前の障壁に気を取られていたとはいえ、
いきなり気配を感じるようになったのは、少しおかしい。
「...賊か?...いやこれは...。」
後ろを向いた瞬間、蔓みたいなものが俺に向かって攻撃して来た。
「うお!?」
ギリギリのところで、避けた俺は体制を立て直す。
顔を上げると、それはいた。
大きな牙と口を持ち、枝がしなやかにうねっている食虫植物、
いわゆるマンイーターだった。
「おいおい。こんなモンスターいるって聞いてないぞ。...娘さん喰われてないよな!?」
『キシャあああ!』
記憶を取り戻してからの、初めての戦闘がこうして始まったのだった。
次の更新予定
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(全体的に修正中)前世を思い出した俺。今度も新しい体で、別の異世界を旅をする。 MANKIND @Greatfulroad13
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