(全体的に修正中)前世を思い出した俺。今度も新しい体で、別の異世界を旅をする。
MANKIND
第0章 俺氏、思い出す。
第1話 俺氏、思い出し、決意する。
「俺、もうこのギルドやめるよ。」
俺は、自分たちが建てたギルドの一室で、ギルドマスターである仲間にそう告げた。
「...それは昨日の件が原因か?」
昨日の件というのは、
俺の婚約者とここにいるギルドマスターが接吻する様子に、俺が出くわしてしまったのだ。つまり前々から、浮気をしていたのだ。
「...いや前々から出ようとは思って、もう引き継ぎはしていたのさ。もうそいつにも引き継ぎは伝え終わったからさ、明日からにでもつかせるよ。」
「...そうか。」
「...まあこういう形で裏切られるとは、思いもしなかったがな。」
俺がそのようにいうと、ギルドマスターは目を瞑り、顔を項垂れさせたまま黙っていた。
婚約者だった、側にいた秘書も先ほどからずっと顔を青ざめていたまま、黙っていた。
「...すまん。」
「...もう謝られても遅いさ。俺たちは、すでに修復が不可能なところまでいったんだ。」
俺は、そういうと顔を背け、出入り口の扉に向かって歩き始める。
「ああそうだ。今日で、君との婚約はなかった事にする。まあそいつと幸せになれよ。裏切り者。」
「あ待ってくだ...。」
俺は元婚約者の言葉に耳を貸さず、手を扉にかけ、そのまま出ていった。
自分に用意された部屋で、荷物をまとめ終わった俺は、部屋を出て、慣れ親しんだ食堂を通っていく。
まだ夜も更け時間が経っていないので、仲間たちが酒を楽しそうに飲んでいたり、
飯を美味そうにたらふく食べて、まるで日常生活で抑えられていたものが、はずれたように過ごしている。
出ようと思った矢先、どうやら出て行こうとした俺を見つけて、一人の冒険者が声をかけて来た。
酒臭い。どうやらもう出来上がっているようだ。
「おう、副マス!また依頼に出るのか?」
「ああ。そんなところだ。」
「がんばってくれよ!そんなあんただから、俺たちはあんたについて来たんだからな!」
そういうと、また彼は酒の席に戻っていった。
そして何事もなかったかのように、仲間達と会話している。
「...後の事は、任せたぞ。」
そしてそんな彼らを横目に見ながら、俺はそのまま誰にも気づかれず外に出た。
こういう形で出ていくと、引きずるかと思っていたが、意外と次の事は何をしようか考える程、結構気楽に考えていた。
やはり、元から出て行く事を想定し、引き継ぎをしていたのが大きいのかもしれない。
「...俺自身も全く引け目はないわけではないが、思った以上にあいつらとの関係も稀薄なものだったのかもな...。取りあえず、どうしようかな?一先ずは、街を出ようかな?」
と考えていた矢先、
まるでハンマーに叩きつけられたように、突然激しい頭痛が起こった。
「う!? ...頭が、痛い...。」
もう立ち上がれなくなる程、痛みが激しくなり、その場に蹲ってしまった。
それはその時に、頭の中に流れて来た。
それは別の世界の記憶。
自然の多い田舎に生まれ、育てられて来た記憶。
父親らしき人物と喧嘩をしながらも、翌日には何もなかったかのように一緒に遊ぶ姿。
母親らしき人物と一緒にどの服を買うのか楽しむ姿。
姉と一緒に映画を楽しむ姿。
その地域のソウルフードであり、好物だった白くて太い麺を啜る自分らしき姿。
地元を出て、大都会の大学に通った姿。
友人ができ、それを楽しみつつ、大都会の荒波に飲まれた姿。
そして、今と同じように卒業した後、人間関係に疲れ、地元に帰って休んでいた姿。
全て思い出した。
俺の前世は、ニホンという国のサヌキで生まれた、和田幸信(ワダ=ユキノブ)という人間だったのだと。
そして今と同様、他人との付き合いに疲れ、そして止む無く過労死で死んでしまった。
何故このタイミングで思い出せたのか、おそらく先ほど友人と恋人に裏切られたのがきっかけなのだろう。
記憶を思い出すまでは、俺は何も考えずに、働いて来た。
この世界では孤児だったが、力や魔力が同年代に比べると、遥かに高かった。
そこに目をつけられた。富や名声をやる代わりに、魔王を倒せと。
独立したかった俺は、この提案に賛同し、参加。
結果、勇者パーティーとして魔王を討伐した。
だがしかし、その後が問題だった。
魔王を倒しても、次から次へと魔王の親族の生き残りを見事なまでに惨殺し、
時には国を裏切った一つの村そのものを焼き払う事まで、俺だけに押し付けられた。
しかも、他人に任せればいい小さな案件からギルド全体でやる大きなものまで押し付けられた。
そんな言いなりだからいつの間にか、言われるがまま魔物退治を行い、恋人にも捨てられた。
しかもここ最近は、この国自体魔物が減って来たせいか、俺の活躍する場がなかった。俺単騎でもいいから遠征に出たいと言っても、ギルマスが俺の力の影響を恐れて、出さしてくれなかった。
ちなみにこの世界での俺は、もともと魔王と呼ばれる悪を倒し、この世界の平和をもたらした勇者パーティーの一員である。そのメンバーの中に、元婚約者とギルマスもいたが。
おそらく、勇者という肩書きが政治にも影響をもたらすと判断したのだろう。
だから中々、モンスターの退治にも行かせてくれなくなった。
他のギルドの仲間たちも、何故俺を出さないのか?と疑問視していたほどに。
思い返せば、俺他人に身を委ね過ぎじゃね?
なんで今まで反抗しなかったんだ俺。
「...父に、虐待を受けていた前世の影響だろうか?」
もう考えても埒が明かない。でも言える事が一つある。
「...もう他人に人生を委ねるのはごめんだな。
今度は人生を楽しく生きよう!ここから第二、いや第三の人生の始まりだ!」
そう俺は、固く決意し、月に照らされる街を出たのだった。
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