永眠

 …結局眠れないまま夜が明けてしまった。睡眠薬は全く効果なし。すると、朝早くから彼くんから電話が来た。

「…もしもし。どうしたの?」

『ああ、起こしてしまったかな?』

「ううん、眠れてないから大丈夫だよ。」

『そっか。俺も実は眠れてなくてさ…。』

「そうなんだ。…僕から電話かければよかったな。」

『今日も朝一緒に登校しような。』

「うん。」

 プツッと電話が切れた。


「お!来た来た、おはよう!」

彼くんは清々しい声で言う。

「おはよう。」

彼くんはやけに嬉しそうだった。手を繋いで学校に向かう。

いろいろ話していたらもう学校に着いた。自分のクラスに入ると、

「おはよーさん。ごみ。」

 クルーだ。いつもナルシストで僕のことをからかってくる最低男。

「…その呼び名やめてよ。」

「本当だぞ。俺のかわいい子ちゃんに変な言葉かけんじゃねーぞ。」

 クルーはニヤリと笑う。

「あーあ、可哀想だねぇ!男同士でしか恋愛出来ないのかな?ボクなんかいつも女の子にモテモテなんだよ?あはは!…お前みたいな汚れた腕とか暗い性格、誰か好きになるのかな〜?」

すると僕の腕をガシッと掴んだ。

「おい、やめろ。この前も言っただろう、今度やったら許さんぞって。」

彼くんは少し怒り気味だ。

「ちぇ、あーあ、ごみのせいでボクの手が汚れちゃったー。最悪だ。…死ね。」

 僕は最後の言葉にカチンときたのか、

「じゃあ殺してよ…!今すぐに…!目障りなんでしょ?!」

 僕は自分に刃物を向ける。

「おいまさかお前…。」

彼くんは焦った様子で僕の胸ぐらを掴む。

「ばかな行動するなっ!たったのあの一言で死にたいと思うなっ!」

「おやおや…これはボクのせいかなあ…あはは…。」

 クルーは頭をかきながら自分の席に着いた。

 彼くんはその手を離すと僕は地面にぺたんと座り込んでしまった。

「…今度そんなこと言ったら捨てるからな。」

 彼くんもやがて自分の席へ言った。

「大丈夫ですか…?かなり騒いでいたようですけど。」

 顔を見上げると真弥(まや)さんだった。

「…別にっ…。」

 僕は自然と涙が出てしまった。

「あんな人は気にしない方がいいですよ。所詮あんな人は将来みっともない男になりますから…。」

「ねぇ。聞きたいことあるんだけど、いい?」

僕は立ち上がる。

「はい、いいですけど…。」

 僕と真弥は廊下へ出る。

「どうやったら僕、自然に眠れるようになるのか教えてよ…。」

「自然に…。そうですね、子守唄とか自然の音を聴いていると自然と眠くなると思いますよ。」

 …そんなの、雑音にしか聞こえないけれど…。

「人間って、変だね…。」

真弥は少し驚いた様子だったけれどすぐに納得がいったようだ。

「いつか永遠に眠れる日が来ると思います。その時が来るまで待つしか無いのかも知れないですね…。」

 真弥もそれを望んでるかのような顔だった。

「一緒に簡単に永遠に眠れる方法、探しません?」

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2年B組 エンド @uni_endless

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