第2話 文芸部の再建
「ふうん。そんなことがあったんだ」
ここはバイト先のファミレス『ケスト』。僕はここで一年生の頃から働いている。勤労。
休憩時間に先輩の日向坂奈緒と、談笑していた。
日向坂先輩は、僕の秘(ひそ)かな憧れである。
容姿は艶やかな栗色の髪に、くりっとした眼許。それからあどけない童顔である。年齢は二十歳。国立の大学生。
「全く、何がマヨラー同盟なんですかね。でも、なんか可愛げがあって」
「結君って、そういう女の子が趣味なの?」
そう言われて、頬をぽりぽりと掻く。
「いや、そういうわけではないんですけど……」
すると、机に胸を乗せて、「じゃあどういう女の子が好みなの?」と魅惑的に言ってきた。
思わず生唾を呑み込んだ。咄嗟に眼をそらす。
「えっと、清楚で礼儀正しくて……」
「へぇ、君ってオタク?」
は? どうして清楚で礼儀正しい女の子が好みだったらオタクに結び付くんだ? それを訊ねると、日向坂先輩は微笑しながら、
「だってその趣味、童貞臭いんだもん。童貞オタクって好きでしょ、そういう清楚系女子。まるでアイドルみたいな」
「それ、すっごい偏見ですよ! 日本中の童貞とオタクを敵に回しましたよ!」
「いいもん。だって私、いつだってそんな童貞オタクが好きなアイドルだからさ」
蠱惑的な笑みを見せる。それを聞いて、そうだったと思い出した。つい、忘れてしまうが日向坂先輩は人気アイドルグループ『小坂達』のセンターを張るようなアイドルだった。
普段はそんな「私ってすごいアイドルです」みたいな雰囲気を出していなくて、屈託ない表情だったり、裏表がない部分が合わさって、印象が、日常生活に溶け込む一般人のようになるのだ。
「そうでしたね。先輩は芸能人オーラがなくって忘れてましたよ」
「何だって? 喧嘩売ってんの?」
少し吊り上がった眼でこちらを睨みつけてくる。そんな表情も可愛いと思わせてしまうのだから、日向坂先輩はすごい。
「いやいや、褒めてるんですけどね」
「どこが褒めてんのよ。それ、私が一番気にしていることなのよ。街中をマスクなしで歩いていても、誰一人声をかけないんだから」
おっと、地雷だったらしい。素直に謝る。すると、ニヤリと日向坂先輩は笑って、
「じゃあ、今度の週末、ライブに来てよ」
「いやいや、小坂達ってすごい人気グループですよ。チケットなんか取れないですって」
「それがね、チケット二枚余っているのよ。だから、誰か友達と来なよ」
そう言って、日向坂先輩は近くのロッカーからバッグを持ち出し、そこからチケットを手に取った。それを僕に渡宇。
「私の勇姿、見に来てよ」
「でも、僕、友達一人しかいませんし……。そいつはアイドルとか興味がなくて」
「そのマヨネーズ女子でもいいじゃない。いい、絶対来るんだよ!」
僕はチケットを凝視した。これをどう扱うか悩む。日向坂先輩の言うように森と行く方法もあるが、何となくそれは嫌だなと思った。
適当に、へへと笑って誤魔化した。
2
翌日。僕は昼休みに文芸部の部室の横を通ろうとしたとき、あのオカルト女が立っているのが見えた。
声をかけるつもりはなかった。それでも、なぜか声をかけた。そうせざるを得ない状況で、あたかもあるかのように。
「ねぇ、文芸部に何か用なの?」
「え?」
彼女は、ぎょっとした眼でこちらを見返してきた。そして、弱々しく首肯した。
「はい。でも、文芸部は定員割れで、活動はやっていないって」
「そうだよ。それが?」
彼女は、部室を見つめた。そして蚊の飛ぶようなか細い声で、
「私、文芸部に入ってみたかったんです……」
「……」
彼女は俯いた。それを見ていると、どこか守ってあげたくなる。奉仕してあげたくなる。
「お前、名前は?」
「えっと……友利香音です……」
僕はこの場をどうするべきか悩んで、頭をぽりぽりと掻いた。
「活動をやっていないんだったら仕方ないだろ。というか、文芸部に入りたいってことは小説を書いていたりするのか?」
「うーん、書いてはいますよ。でも、なんかうまくいかなくて……。仲間がいたら、もっと変わるかなとか、思っていたりするんですよ」
「それで、文芸部か——」
すると、香音の右腕に青痣が見えた。どこかにぶつけでもしたのだろうか。
「お前にはいろいろと聞きたいことがある。どうだ、これから喫茶店で話でも?」
すると、香音は慌てだした。「いや、親に早く帰ってこいって言われているので……!」
「親? 厳しい家庭なの?」
「そういうわけでは……ないというか、あるというか……」
なんだか煮え切らない返答をして、また俯いた。
家庭で何かしら問題があるのだろうか。
だが、それがわかったところで自分には何も出来ないし、するつもりもなかった。
同情の言葉でもかけてやろうか。そう思ったが、やめておいた。そんなことを上から目線でやろうとするなんて、何様のつもりだよって話だ。
手持無沙汰になって、僕は彼女に別れを告げて教室に帰ろうとした——。したのだが、なぜか胸の内側がきゅっと熱くなって、そしてそれがきっかけなのか、衝動的に言ってしまった。
「文芸部の再建の手伝い、してやろうか?」
すると、彼女の眼が輝きだした。「本当ですか?」
「ああ。大したことなんか出来ないけど……それでよかったら」
「ありがとうございます!」
彼女は律儀にも頭を九十度に下げた。それを見て、少しばかり可愛いななんて思った。
でも、なんであんなこと、言ってしまったのだろう……。自分は冷めた人間じゃないのか?
「とりあえず、作戦会議だな」
「なんか、わくわくしますね」
香音の表情は昨日とは違う、オカルト信仰者のものではなく、ただの純粋な少女が見せる無邪気なものだった。
元文芸部の部室である教室を借りて、その中で机を正面につなぎ合わせた。
互いに向かいあって、どうすれば文芸部を再建出来るか話し合うことにした。
「どうしますか? 何か方策はありますかね?」
僕は唸りながら、「それよりもまず、部員の定数は一体どれぐらいなんだ?」と訊ねた。
「えっと、四人です」
「まず、俺はやってやるとして、あとお前だろ。残り二人か」
「え、ちょっと待ってください。あなたも入部してくれるんですか?」
「うん。そうしようと思ってる」
「どうしてですか? まさか昨日の呪文が効果を及ぼしているんじゃ……」
彼女は不安な眼で見てくる。それに僕は苦笑して返した。
「なわけないだろ。呪文なんてあるわけないし」
すると、彼女が勢いよく立ちあがった。「いや、呪文はあります。信じなくても別にいいですけど、そうやって軽々しく存在を否定しないでください!」
なんだこいつ。少しいらっとしたが、その苛立ちもすぐに霧散するように消えた。
「——わかったよ。じゃあ、次に話し合うことはどうやって残りの二人を集めるかだよな。お前は友人は多い方か?」
彼女はそう問われてしゅんとうなだれた。
「実は、一人もいません……」
「ふーん」
「あれ、驚かないんですか?」
「ああ。だって俺も友人は一人しかいないからさ。いや、厳密に言うと二人か? 待てよ、あいつは昨日会ったばかりで友人と呼ぶほど親しくないし……」
ぶつぶつとぼやいている僕の顔を、香音は覗き込んで、それから溜息をついた。
「なんか、あてにならないですね」
「何だと?」
「だって、互いに友人関係は希薄。頼れる知り合いもいない。そんなんじゃあ部員を募れませんよ」
また腹が立ったが、ぐぅの音も出ない。
「……まぁ確かにそうだな。でも、そんな言い方はないだろ?」
「——すみません」
別にいいけどさ、と僕は少し不服に頬杖をついた。
「……あいつに会いに行くか」
「あいつ?」
「ああ。俺の一生の親友だ」
その言葉に、香音は小首を傾げた。
髪の色を金髪に染めている、豪胆な男子生徒が教室で雀卓を囲んでいた。そいつに声をかける。
「何だよ、結。今マージャンやってんだよ。用事なら後にしてくれ。あ、それポン」
僕は嘆息を零して、この男子生徒の耳を引っ張り、立ち上がらせた。
「痛い、痛い。何すんだよ」
「なぁ鷹ちゃん。相談に乗ってくれよ」
飯田鷹は、きりっと睨みつけてきたが、そのあとに横にいた香音の姿を見て、驚いていた。
「結、彼女が出来たっていう報告か?」
肩を竦めてそれを否定する。「なわけないだろ。文芸部に興味はあるかっていう話だよ」
「はぁ? 文芸部だって? そんなの興味なんてねぇよ」
「まぁ、そう言わずにさ。話だけでも聞いてくれよ」
鷹は半眼でまた睨みつけてきて、そのあと溜息をついた。
「仕方ねぇな。話だけは聞いてやるよ」
「ありがとう。一生のダチ!」
僕のわざとらしい興奮した口調に、鷹はやれやれといったように肩を落とした。
「この可愛い子が文芸部を再建したいと」
鷹が元文芸部の部室で、窓側によりかかって薄雲を眺めていた。
「そうなんだよ。手伝ってもらえるか?」
そしたら鷹はきざったらしく前髪を手で払い、にやついた。
「俺は入るつもりはないけど、小説が好きな友人なら一人、心当たりがあるぜ」
「本当か! そいつの名前は?」
「森加奈だ」
僕は一気に高ぶった感情が冷めていくのを感じた。あのマヨラーを文芸部に? ちょっと考えられない……。
いや、まだ同姓同名という可能性もある。だから、その森加奈の特徴を聞くことにした。
「そいつ、どんな奴だ?」
「とにかくマヨネーズが好きで、マヨネーズのためなら死ねるっていうちょっと変わった奴だ」
「それ、だいぶと変わっているから! 変人だから!」
すると、意外そうに僕の顔を見てきた。「どうしたんだ? そんな豹変して」
僕は俯かせて、
「その森加奈に昨日出会ったんだよ。僕の焼きそばパンにマヨネーズを塗ろうとしてきてな。本当に変な女だった」
と言うと、鷹は鼻で笑った。
「そりゃ災難だったな。でも、そんな変人女だが、意外な才能があるんだぞ」
「何だよ」
「RM文庫の作家なんだよ」
すると、今まで黙っていた香音が立ち上がり、叫んだ。
「その人、ぜひ文芸部に呼びましょう!」
僕も鷹も驚いた。彼女の異常な熱量に。
「……どうしたんだよ」
「RM文庫って、日本一のライトノベルの出版部なんですよ。そんなところで本を出しているライトノベル作家なら、信用が出来ます。ぜひぜひ、入部してもらいましょう」
僕は小説のことはあまり詳しくはなかったが、ここ近年のラノベ人気は知っていた。深夜アニメなんかでも、原作がラノベということも珍しくはない。
鷹に向いて、訊ねた。「森って、何ていうタイトルの本を書いているんだ?」
「『アイドルって唯我独尊です』だったっけな。ザ、ライトノベルっていうタイトルだろ」
「それって……」と香音が言う。
「ん? 知っているのか?」と僕は質問する。
「はい。確かペンネームが『キューピーちゃんは神様』っていう長すぎるもので、本の内容でも頻繁にマヨネーズという単語が出てくるんですよ」
何だそれ、と呆れた。馬鹿らしいにもほどがある。
「それで売り上げは?」
「十万部だったはずです」
「ふぅん。世の中、物好きな読者もいるもんだな」
少なくとも、僕だったら『キューピーちゃんは神様』なんていう名前の作家の本は、手に取らない。
「とりあえず、そいつを誘ってみるか」
僕が言うと、鷹が「ああ、そうしてみてくれ」と言って笑った。
「私の小説、知っていたんですね」
森が眼を輝かせながら、らんらんと興奮している。その姿を凝視しながら、全くこいつは、と半ば呆れていた。よくあんなふざけた小説を書いていて——読んではいないが、容易に想像が出来る。だってマヨネーズが意味なく頻繁するのだから——理解しがたいのだ。
そんな僕の隣で、これまた同じく興奮している少女——香音は、どこから持ってきたのかその森の小説を手に持ち、地面を跳ねている。
何をやってんだか、と僕は香音を咎める意味合いを込めて、きりっと睨みつける。だが、それに気付かず飄々としている。
「サインを頂けませんか?」
香音はそう言ってサインペンと小説を森に渡した。受け取った森は鼻をふんと鳴らし、表紙に、『キューピーちゃんは神様』と記した。僕はその行為に、ずっとむかっ腹が立っていた。小説家というものに嫌悪感を抱いているわけでは当然なく、昨日の変人っぷりと、厳粛たる小説家のイメージとがかけ離れていて、こんな奴が小説家だなんて、世も末だ。まぁ、確かにどんな職業でも様々な性格の人物がいることだろう。だが、森の行動を『性格』だなんて落とし込めない。性格とは、便利な言葉だとは思うが、汎用的に用いていいものではない。
「で、話って何ですか?」
真面目な顔で言った彼女に、僕は今だ興奮冷めやらぬ香音に代わって応える。
「文芸部に入ってくれないか? お前は“腐っても”小説家なんだろ」
すると、それを聞いた森が眉をひそめる。「腐っても、ってどういう意味ですか。馬鹿にしてるんですか? マヨネーズ一本、口にくわえさせて流し込みますよ」
「どういう罰ゲームだよ! 吐くわ」
「それぐらいのことをしたっていうことですよ。今、マヨネーズを持っているので、やってあげましょうか」
そう言って、森は側にあったポーチからマヨネーズを取り出して見せた。いつも携帯しているのか、こいつ。変人すぎるだろ。
「結構だ。というか、お前は文芸部に入ってくれるのか? どうなんだ?」
マヨネーズの話なんてしたくもない。論点は、森が文芸部に所属してくれるかどうかだ。それさえ明確にすれば、早く立ち去りたかった。僕はこの女が苦手なのだ。憎めないところもあるかもしれないが、偏屈な女の相手は嫌だ。
「はい。でも、一つ条件があります」
入部するぐらいで、条件を求めるなんて図々しいにもほどがあるが、こちらは部員数が足りないので、お願いして入部してもらうのだ。その条件とやらを吞まなくてはいけない。
「何だ、一体? あ、マヨネーズ関連以外だぞ」
そしたら森は口をあんぐりと開けて、呆然とした。まさか図星だったのか?
「私からマヨネーズを取り除いたら、何も残りませんよ」
「はぁ⁉ 意味わかんねぇよ」
森はやれやれと嘆息をついて、「わからないんだったら、教育するしかありませんねぇ」と言い、マヨネーズのキャップを開けて見せた。いやいや、どんな教育をしようとしているんだよ。おぞましさしかないわ。
すると、どこに感銘を受けたのか、香音は興奮して、ぴょんぴょんとまた飛び跳ねている。
「すごく可愛いです。さすが森さんです!」
「いやいや、どこが可愛いんだよ。こんなマヨラー女。この変人のどこがいいんだよ」
そしたら、香音がきりっと睨みつけてきて、「女子に変人とか言うのは禁忌ですよ。相手が相手だったら殺されてますよ」
「おいおい、急に殺伐なこと言うなよ」
森は勝ち誇ったような笑みを見せて、「そうですよ。キューピーちゃんに殺されますね」と言った。
はぁ、と長い長い溜息をついて、「で、その条件って一体何なんだ?」と訊ねた。
これ以上、不毛な会話を続けたくない。
森は長い睫毛を下にして、それから粛々というふうに言った。
「新作の小説の手伝いをしてもらえませんか?」
「……それが条件か?」
僕は、全くも意外だった。この女から発せられた言葉を聞いて、本当に小説家なんだな、と思ったからである。先ほど、『腐っても』と言ったが、実は真面目に小説を書いているんだろうな、と。
意外な表情をしていたのを不審に思ったのか、森は眼を細めて、疑うような目線をしてきた。
「どうしたんだ?」
「いえ、失礼なこと考えているんじゃないかと」
おっと、的を得たことを言ってきたぞ。図星だったので、思わず眼をそむける。
「やっぱり、そうだったんですね。全くもって心外です! さぁ、口を開きなさい。マヨネーズ丸々一本、胃の中に注入してあげますよ」
「結構だ!」
僕は、顔を手で覆った。少しでも好印象を抱いていた自分が馬鹿だった。こんな森みたいな馬鹿を相手にするのは、やっぱり疲れる。
すると、香音が「小説の手伝いなら、私に任せてください。自分も、小説を書いているんですよ」と言った。それを聞いた森が、偉そうにも腕を組み、
「なら、頼むよ。助手君」
と、漏らした。僕は、それに無性に腹が立った。
「お前は何様なんだよ。いい加減にしろよ!」
森はきゅっと睨みつけてきて、
「文芸部に入らなくてもいいんですか? 私は一向に構いませんよ」
と、試してきた。それを言われては、こちらは何も言い返せない。ぐっと、堪えるしかないのだ。
「わかった。その条件、吞んでやるよ」
森は頬を緩ませた。その姿を見て、僕は可愛げを感じていた。先ほどまでは、腹が立っていたのに……。
こうして、森は文芸部に入部してくれることになった。
帰宅途中、文芸部について思考を巡らしていた。
あと一人、どうするか。
森を誘ったあと、校内の掲示板に『文芸部募集』という質素な張り紙を貼った。それでどれだけの生徒が文芸部に興味を抱くかはわからない。けれども、今はそれに祈るしかない。
すると、通りすがってきた高校生の肩にぶつかった。
その高校生は、見る感じ柄が悪く、銀色の頭髪をワックスとスプレーでがっちり固めているように見えた。令和には見かけない、オールドタイプの不良だ。
「何、メンチ切ってんだよ」
おや、言動も昭和だ。『睨みつける』ではなく『メンチ切る』と言っている。
まるで、八十年代にタイムスリップしてしまったかのようだ。
「すみません」
まぁ、何にせよ、面倒事は避けたいものだ。しずしずと頭を下げると、不良はいきり立って、僕の胸倉を掴んできた。近くなったせいで、鼻腔を高校生の口臭から発せられるメンソールの匂いが刺激する。
「何か殴られる前に言うことあるか」
「……未成年喫煙は違法ですよ」
次の瞬間、僕は右頬を殴られ、地面に倒れた。おいおい、痛ぇじゃねぇか。
「よくもまぁそんな舐めたこと言えんな。どつきまわすぞ」
「もうどついてるじゃないですか」
出血した口許を拭って、立ち上がった。
そして構える。この場を乗り切るには、闘うしかない。
「おっ、やんのか」
と、不敵な笑みを浮かべる。それを見た僕も、同じくにやついた。
そして、拳と拳が交わるその瞬間——。
僕は不良の眼を指で突いた。不良が痛みから絶叫する。
「お前、卑怯だぞ」
「僕はそういう奴なんですよ。それじゃあ」
颯爽とこの場から立ち去り、不良から識別される距離から離れたところで僕は叫んだ。
「すげぇ、怖かったああああああ! もうちびりそうなくらい、怖かったああああっ‼」
ズボンの股のところを触ってみる。
「ちびってないよな。大丈夫だよな」
そんな行動をしている僕を、周囲の人達は恐怖の眼差しで見ていた。明らかに、異常者を見るような目付きだ。
僕はこの場に居づらくなったので、足早に去っていった。
片翼の魔女 大瀧潤希 @ootakijyunki9630
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