わたくしと愛のない結婚をする予定だった婚約者「君を愛することはない――とでも言うと思ったか?」(3/3)

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115 :愛奈氏

みなさま、ご無沙汰しておりますわ!

あれから間があきましたけれど、諸々落ち着きましたので顛末をご報告いたしますわ!


これまでの経緯といたしましては、


わたくしに思い人(=A様)がいると知っているお父様が急に婚約を取りつけようとする。

→しかもお相手が「エムリス」様でどうしましょう? とこちらで相談。

→色々あって途絶えていたA様からの手紙が届くも、1対1でお会いしたいという内容。

→こちらに相談して「エムリス」様同伴でお会いすることに決める。


というところで終わっていましたので、そのすぐあとから書いて行きたいと思いますわ!

ただ長々と結末まで付き合わせるのも申し訳ありませんので、

先に書いておきますと、A様はわたくしに魅了魔法(のようなもの)を使っていましたの。

今はもちろんそれは解けていて、後遺症もなくごく普通に暮らしておりますわ。


次から書いて行きますけれど、時間がかかりそうですので、一気に読みたいというお方はしばしお暇をつぶしてお待ちくださいませ~。



116 :ななしの令嬢さん

お帰りなさいませ、愛奈氏様!

またここでお会いできてうれしいですわ。

なんだか大変なことになっていたようですのね。



117 :ななしの令嬢さん

お帰りなさいませ~。

わざわざ結末を書き込んでくださるのはありがたいですわ!



118 :ななしの令嬢さん

お久しぶりですわ!

上でどなたか「魅了魔法では?」というようなことを書き込んでおられましたわよね。

まさかそれが当たっていただなんて……。



119 :ななしの令嬢さん

「魅了魔法云々」は>>89様ですわね。

続くレスで「正直男の趣味が悪い」と言われていましたけれど……たしかに断片的な情報しか得られない状態からでも、その殿方はどうですの? という気持ちになりましたもの。

魅了魔法であったほうがスッパリ気持ちを断ち切れそうでよかったのではなくて?



120 :ななしの令嬢さん

どうして魅了魔法だとわかったのか、どうやって解かれたのか気になりますわ~!

とにもかくにも後遺症がないのはよかったですけれど、今現在愛奈氏様がA様をどう思っていらっしゃるのかは気になりますわね。



121 :ななしの令嬢さん

魅了魔法をかけられていたなんて知ったら、わたくしでしたら百年の恋も冷めますけれど。

いずれにせよ魔法が解けてよかったですわね!



122 :ななしの令嬢さん

自分の意志と関係のない言動をしていたのだとすれば、恐ろしすぎますわ……。



123 :愛奈氏

みなさま、温かいお言葉の数々、感謝いたしますわ!


経緯を書いて行きますわね。

先にも書いた通りかなり長くなってしましたわ。


あの相談書き込みのあと、みなさまのご助言の通りに「エムリス」様に相談いたしましたの。

「エムリス」様はわたくしの予想に反して事情を深く聞くこともなく、「会うな」とも言いませんでしたわ。

意外でしたけれど、薮蛇になりたくなくてこちらも突っ込んで理由を聞きはしませんでしたの。

お父様には話をしませんでしたけれど、もし不測の事態が起きたときのために信頼できる使用人に一応A様にお会いする、という話はしておきましたわ。

その使用人にはかなり心配されましたけれど、「エムリス」様と一緒だと伝えて強引に押し切りましたの。

お父様にお話ししなかったのは、お父様であれば反対されるだろうなと思ったからですの。

実はA様のからのお手紙はお父様の部屋にありましたの。

わたくしが決してお父様を憎まないからと、A様には「エムリス」様と婚約することをお伝えしたいと説き伏せて、どうにか手紙のやり取りを再開させたという経緯がありまして……。

ですから、そんなお父様でしたら、A様とお会いすることは絶対に反対なさると思いましたから。

親不孝ですけれど、お父様には黙って「エムリス」様と共にA様に会いに行きましたの。


久しぶりにお会いしたA様は……なぜか以前のようにはきらきらして見えませんでしたわ。

正直に言って、この時点で「あれ?」となりましたの。

けれどもA様はわたくしが動揺しているのにも気づかれていないご様子で、「エムリス」様がいるにもかかわらず、馴れ馴れしくわたくしに触れようとしてきましたの。

それはもちろん「エムリス」様がわたくしを引き寄せる形で、やんわりと阻止しましたけれど。

その時点でまたわたくしは「あれ?」となりましたわ。

A様が「エムリス」様がいるにもかかわらず、わたくしに甘い言葉をかけてくるのも「あれ?」となりましたし、やはり馴れ馴れしく距離を詰めようとしてくるのも「あれ?」となりましたの。

A様はその時点で、わたくしが「エムリス」様と婚約するというお話は承知のはずでしたのに。

そういう小さな「あれ?」が積み重なっていって、だんだんとわたくし、自分の顔が強張っていくのがわかりましたわ。


A様は次第にあせっていくのが顔にも、わたくしにも見えてきて、ついにわたくしの腕を強くつかみましたの。

びっくりしてA様の目を見たら……なんとも形容しがたいのでしたけれど、すごく気持ち悪くて。

生理的嫌悪をかき立てたのもそうですけれど、加えてなんだか怖くなりましたの。

突然の行動もそうですけれど……今となっては上手くA様の目が思い出せないくらい、なんとも言えない印象しか残っていない目でしたの。

なんというか、上手く言えないのですけれど。

お化けがいるとわかっている真っ暗闇を覗いてしまったかのような……。

上手く表現できなくて申し訳ないですけれど、とにかく怖くなってしまって。

わたくしの喉から「ひっ」と引きつった声が出てしまったら、「エムリス」様が動いて。

わたくしの目の前にいたA様の腕を取って、あっという間に後ろ手に拘束してしまいましたの。

そのときにA様がどんな目をしていたのか、やはりぼんやりとしていて思い出せないのですけれど。


「エムリス」様がそうやってA様を拘束すると、建物の陰から官憲の制服を着た数人の男性が出てきましたの。

加えて、わたくしの前世の世界で言うところの私服警官的な方々もやってこられて……。

わたくし、なにがなんだかわからなくてその場にぼうっと突っ立っていることしかできませんでしたわ。

「エムリス」様はその官憲の制服を着た男性にA様を引き渡されましたの。

A様はすぐに目隠しをされて、護送馬車……とでも言えばいいのかしら?

まあ前世の世界で言うところの護送車の馬車バージョンのような馬車の車部分に乗せられてあっという間に連れて行かれてしまいましたの。


それで、なにがなにやらさっぱりわからないわたくしを連れて、「エムリス」様が屋敷まで送ってくださって。

そこで沈痛な面持ちをしたお父様から、A様が魅了魔法……らしきものを使って、方々で詐欺を働いていたという話を聞かされましたの。


とりあえずここで一度切りますわね。

想定以上に長くなってしまって申し訳ありませんわ。



124 :ななしの令嬢さん

書き込みお疲れ様ですわ!

わたくし怖がりですから、A様の目の描写でちょっとビビってしまいましたわ。



125 :ななしの令嬢さん

書き込み乙ですわ~!

途中からホラーが入ってきていて想定外でしたわ!

でも魅了魔法なんて使われた当人からすれば恐怖しかないですわよね。



126 :ななしの令嬢さん

A様、かなりの悪人だったようですわね……。

愛奈氏様のお父様と「エムリス」はそれに気がついていたということなのかしら?



127 :ななしの令嬢さん

書き込みお疲れ様ですわー!

愛奈氏様にはご自分の書き込み等を振り返っての感想を聞いてみたいですわ。

やはり「なんだこれ?」みたいなお気持ちになられました?



128 :ななしの令嬢さん

失礼を承知でぶっちゃけますけれど、他のわたくしはよく愛奈氏様のお相手を根気よくされているわね……と思いながらチラ見していましたの。

けれど本来の愛奈氏様は思っていたよりもしっかりとした方のご様子。

ちょっとホッとしましたわ。



129 :ななしの令嬢さん

A様は魅了魔法を使っていたことが確定だとして、その後どうされるのかしら?

というかまだどうするかお決まりになられていない段階なのかしら?

それとA様という気がかりがなくなった今、「エムリス」とはどういった関係なのかとかも聞きたいですわ。



130 :ななしの令嬢さん

いずれにせよ「エムリス」と出会ったからには添い遂げる以外のルートはないと思いますけれど……。



131 :ななしの令嬢さん

それにしてもA様の目が魅了魔法の起点だったとして、急に気持ち悪く見えたのはなぜなのかしらね?

もしかしてそれが本来の姿、ということなのかしら?



132 :ななしの令嬢さん

愛奈氏様が描写されたA様の目、SAN値が減りそうで普通に怖いですわ!



133 :愛奈氏

みなさまの労いのお言葉がしみますわ~!


続きを書いて行きますわね!


みなさまご推察の通り、お父様はA様の悪い噂を聞きつけていましたの。

悪い噂と言うのは、推定魅了魔法を使っての睡眠強盗めいたものから、結婚詐欺まで色々とあったご様子。

けれどもA様の真実を話して、ひとり娘であるわたくしを傷つけたくないという思いから「エムリス」様との縁談を進めることにしたらしいですの。

あ、魅了魔法なのかどうかよくわかっていないのは、わたくしの世界には魔法はありますけれど、ほとんど絶えてしまっていますし、魅了魔法もさらに伝承上、神話上の存在……という感じだからですの。

話を戻しますわね。

わたくしとしてはA様の真実を話してくださったほうがよかったのですけれど、そのときは推定魅了魔法にかかっていたことを考えると、お父様の決定は苦肉の策だったと理解もできますわ。

ですから、幸いお父様とのあいだにわだかまりなどは残りませんでしたの。

「エムリス」様はお父様からほとんどすべてを聞いた上でわたくしとの婚約を決められたらしいですわ。

なぜ……というのが正直な感想ですけれど、ここの書き込みを見る限りでは「そういう運命」なのでしょうね。

ひと目惚れとは言われましたけれど、こちらはどこまで真実なのかは怪しいと思っておりますわ。

表向きは先の戦争でお父様と縁あって、その娘であるわたくしと婚約して入り婿に……という感じになっているのですけれど。


本当に、最初にA様へ憧れの気持ちがあったのは事実ですけれど、推定魅了魔法をかけられたことのある今となっては、どこまでその感情が真実なのかはわからなくて……そこだけはなんだか少し怖いような、さみしいような気がしますわ。

けれどもA様への感情がなにもなくなってしまったのが事実ですの。

憎む気持ちすら湧かなくて、本当に「どうでもいい存在」になってしまったようですの。

たしかに推定魅了魔法をかけられていたなんて今でも怖いですけれど、本当に「もうどうでもいい」という感想しかありませんの。


わたくしが推定魅了魔法にかかっていたころの書き込みを読み返すと「だれこれ?!」となりましたわ!

読んでてイライラされた方がいらっしゃいましたら、今ここで謝罪しておきますわ。


ここから先はA様の結末ですけれど、少し残酷な話が出て来ますので注意してくださいまし。


A様は余罪がたくさん出てきたこともありますけれど、なによりその目を放置しておくことは危険として、両の眼球を抉り出された上で鉱山送りになったと聞きましたわ。

そちらで働いて賠償金を捻出されるとか……。

A様のご実家についても取り潰しになるだとか、よくない噂を耳にしますけれど、まだ爵位は維持されているご様子。

ただ、これから沙汰がくだるのか、爵位を返上されるのか、どうなのかまではわたくしにはよくわかりませんの。

いずれにせよ、この件はこれで一応決着したと見ていいと思いますわ。


最後になりますけれど、わたくしの相談にお付き合いくださったすべてのみなさまに感謝申し上げますわ!



134 :ななしの令嬢さん

最初の書き込みから追っていましたから、いいところに着地できたようで安心しましたわ!



135 :ななしの令嬢さん

愛奈氏様、書き込みお疲れ様ですわ!

わたくしはただ野次馬しつつ書き込んでいただけですから、そんなに気することありませんわ~。



136 :ななしの令嬢さん

結局、魅了魔法らしきものがどこからきたのか、出どころはわからずしまいですのね。

怖いですわ~……。



137 :ななしの令嬢さん

A様は完全な自業自得と言えど、純粋に慕っていたと思しき愛奈氏様から「どうでもいい」と言われるような存在になってしまったことを思うと、本当に魅了魔法ってよくないと思いましたわ……。



138 :ななしの令嬢さん

他人に当然備わっている意志を無視して、尊厳を踏みにじる魔法ですものね。

「愛の反対は無関心」という論もありますし、愛奈氏様はそのままA様については忘れるに任せたほうがいいと思いますわ。



139 :ななしの令嬢さん

愛奈氏様のお父上はもう少し手段を選んだほうが……と思わなくもないですけれど、苦肉の策でしたのね。

父子の中がこじれなかったのは幸いですわ。

これからもお父上を大事になさってくださいね。



140 :ななしの令嬢さん

やっと追いつきましたわー!

愛奈氏様、書き込みお疲れ様ですわ!

愛奈氏様にとってよいところに収まったと思いますけれど、その後「エムリス」とはどうなりましたの?

差し支えなければどう思っているのかお聞きしたいですわ。



141 :ななしの令嬢さん

そういえば「エムリス」とは結局婚約白紙にはできていないんですのね?

……まあ「エムリス」と一緒になるのはわたくしたちの定め、みたいなところはありますけれども。



142 :ななしの令嬢さん

>>141様

それでもワンチャン抗えないかなと思っているわたくしもいましてよ!



143 :ななしの令嬢さん

>>142様

無理だと思いますわ~。



144 :ななしの令嬢さん

無情ですわ~。



145 :愛奈氏

先ほどの書き込みで最後のつもりでしたけれど、「エムリス」様について質問がありましたので書いておきますわね。


「エムリス」様とは良好な関係を築けていると思いますの。

我が家の使用人たちも「エムリス」様には好感情を抱いているようですし。

それに……わたくしも。

どうにも、愛するよりも愛されるほうが好きみたいだということに気づきましたの。

もちろんこちらからも「エムリス」様に愛情表現は欠かしませんけれど。

たしかになぜわたくしを好きなのか、とか不気味なところはありますけれど、わたくしは「エムリス」様のことを愛せる……と思いますわ。


本当にこれで最後の書き込みにしますわ。

みなさま、本当に本当にありがとうございましたですわ~!



146 :ななしの令嬢さん

愛奈氏様、お幸せに!



147 :ななしの令嬢さん

愛奈氏様は「エムリス」好き派ですのね。

でもそのほうがきっと幸せですわよね。



148 :ななしの令嬢さん

「エムリス」やお父上と仲良くね!



149 :ななしの令嬢さん

「エムリス」ってなんであんなにわたくしたちのことが好きなのかしら?



150 :ななしの令嬢さん

きっと前世で助けたカメムシとかですわ~。



151 :ななしの令嬢さん

カメムシはおハーブですわ。



152 :ななしの令嬢さん

ネコかイヌかで言えばイヌですわよね、「エムリス」。

そして犬種で言えばシベリアンハスキー。



153 :ななしの令嬢さん

けれどもシベリアンハスキーみたいな愛嬌はないと思いますわ……。



154 :ななしの令嬢さん

やはり前世助けたカメムシなのではないかしら?



155 :ななしの令嬢さん

まあたしかになに考えているのかわからないという点では昆虫っぽさはありますけれど……。



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(以下、しばらく「エムリス」の話題が続く)

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