この街で私は
どうしてこの街はこんなにも綺麗なのだろう。
もう人など住んでもいない、水没した街。今でも水面の上にあるビルからは、生活の面影を感じられる。
私はこの街の探索を続けるべきなのだろうか?それとも、もうやめるべきだろうか?
あまりに長い期間続けていれば、この船も壊れるかもしれない。命を落とすかもしれない。
だが、私にはやめることはできなかった。
私は、この美しさに心を奪われてしまった。
もう、戻ることはできない。
それでも後悔はしない。
ビルの隙間から覗く青空が、深い
水から舞う光の粒が、透明な空へ吸い込まれる。
水を泳ぐ魚たちの陰が、私の船の下を通っていく。
どこからか聞こえる美しいピアノの旋律が、私の心を見透かしていく。
きっと私は近いうちに死ぬだろう。
だが不思議と怖くはない。
この手記はもういらないだろう。
これからは、気ままに探索することにする。
もし、この手記を手に取りこの文を読んだ人がいるならば、伝えてほしいことがある。
それを伝える人は、だれだっていい。家族でも、友人でも、恋人でも。
ただ、真摯に伝えてほしい。
——「愛している」と。
一人一人の日常世界 ロクボシ @yuatan
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。一人一人の日常世界の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます