中年オヤジの愚行

前田・S・テツフク

1 何故中年オヤジが若作りをしてしまうのか

オジサンが流行のファッションでキメてしまったり(似合わない

髪を染めたり長髪にしてしまったり(似合わない

若いころの感覚のまま装いを整えてしまう理由を考察した。


オギャーと産まれてから成人ぐらいまでは文字通り成長の期間である。

日々体が大きく男らしくなり「俺も随分大人になったな」などと思いながら生きていく事だろう。

その後は劣化が始まるのだが、30前ぐらいまでは肉体的には全盛期であり、自分の衰えを感じる事はあまりない。

そう、30年もの間、人は成長しか経験しないのである。

その後、産まれて初めて身体の老化を経験する事になる。

なんせ初めてのことだから、老化というものがよくわからない。ましてや、毎日鏡で見ている自分の容姿が衰えていっている事にはなかなか気づけないのだ。その上、人間は歳をとればとるほど時間の感覚が早くなっていくので、見た目の老化の速度に感覚が追い付かない。

つまり、自分の状態を客観的に理解できていない事態に陥ってしまう。


もちろん、自分が老けたことはわかるのだ。若者と比べればヨレヨレになっている事が見えないなんてことはない。

ただ、他人と比べなければ、

薄く艶がなくなっている髪の毛を流行りの型にしたときのちぐはぐさや、

ぽこんと出ているお腹に若者向けの服を着せた不格好さに気づけないのである。


そんな馬鹿なと若い人は笑うだろう。

しかし、初めての老化なのだ。上手く付き合えなくても仕方がない。その上、時間感覚的には残りの50年より長いであろう、成長と全盛の30年間を過ごしてきたのだ。良い状態の肉体の感覚に散々慣らされた後、あっという間の10年で一気に老けるのである。30年もかけて確立してきた自分のスタイルが通用しなくなり、(感覚的には)短時間で新たなスタイルを作らねばならない。

その後は更に早い速度で老化していく。その恐るべきスピードに対応していかなければならないのだ。脳も衰えていくというのにだ。無理ゲーである。


他人が自分を見る目の変化にも、なかなか理解が追い付かないということも起きる。

だから、ちょっとカンチガイしたオジサンが量産されるのは構造的な問題であって仕方のないことだといえる。


では、勘違いしてない地味なおじさんはどうなのか。たぶんそれは元々地味な人なのだ。

かっこいいおじさんはどうか。きっと聡明な人なんだろう。

女の人はどうかというのは、そんなこと俺にはわかる筈もない。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

中年オヤジの愚行 前田・S・テツフク @himono99

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る