コンビニ跡
「たまにはこういうのもいいわね」
「うん」
とある道にあったコンビニらしき建物の跡の駐車場にキャンピングカーを止め、私とルナは後ろの生活用スペースでのんびりとしていた。
「ここはどのコンビニだったんだろうねー」
「んー……? わからない」
「完全に掠れ切ってるものね」
看板も建物の上の部分も掠れ切っており、文字が全然読めなくなってしまっている。だからどのコンビニだったのかは判別できない。
因みに電気は稼働していて中にあった冷蔵庫とか冷凍庫は動きっ放しだった。あと思ったより中は綺麗なままだった。当然だけど普通に汚れているものもあるし、商品だったであろう物が崩れて散らばっていたりもしているけれど。
「なんか所々電気が生きてるわよね。今に始まったことじゃないけど」
「ん」
このコンビニに限らず、道路沿いにある街灯や建物、店など。
全部ではないものの、明かりがついていることが多く、意外と夜はそこまで暗くない。光は弱くなっているものの、ほのかに辺りを照らしている。
発電所も動いていないはずだろうし、不思議である。いつも思うけれど。
太陽光や風力などといった自然発電施設ならば動いていてもおかしくはないというのがルナの談。確かに人工的に何かしなくても発電できるものね。
でもそういうのって勝手に動くものだろうか。
「ん。操作とかしている間に消えたのであればあり得る」
「あー」
まあどの道あって困るものではないからいいのだけど……。
太陽光発電のシステムであれば私のこのキャンピングカーにも搭載されているわね。自分がキャンピングカーを買った時点での最新技術で作られた小型の太陽光パネルがいくつか設置されている。この太陽光だけでも大抵の電気は賄えているのが現状だったりする。
燃料で発電できる発電機も当時の最新のものを積んでいるので電気変換効率はかなりいいと言える。
だからこそ、冷蔵庫等といった電化製品も問題なく動かせてる訳なのだけども。そんな電化製品も同じく最新のもので固めているので省電力。
結果、効率の良い電気変換と省電力の家電……そりゃ減らないわね。むしろ、発電量のほうが多いまである。
まあ、曇っている時とかは太陽光も最新とはいえほぼ役に立たなくなるのでその時は変わってくるかもしれないが。
「……」
「……」
お互い話が止まってしまい、両目がルナと合う。
「今更だけど。ルナは……文明が崩壊する前って何かしていたの?」
「ん……」
付き合ったところまではいいけれど、そう言えばお互いのこと意外とあまり知らないわよね。話題に出すことがなかったとも言えるけど。
「わたしはいつも通り過ごしていたと思う。スフィアと同じで普通に過ごしていた時に、突然崩壊した」
「そっかー。やっぱり私たちは似た者同士ね」
「ん」
本当に突然なのだ。
何の前触れもなく、地球上から人類が消滅した。そして何故か私とルナだけが残されていた。何者かによる攻撃? であるなら私たちのことだって消せたはず。
「謎が謎を呼ぶ」
「?」
「毎度のことながらこの世界は謎が多いなって」
「ん」
謎は謎だから謎なのである。
滅ぶことなく、普通に生活してたなら……私たちは出会うこともなかったかもしれない。
「どうしたの?」
「ちょっとルナの温もりを感じたかっただけ。ダメ?」
「……ん」
ルナの身体をそっとぎゅっとする。
ルナの熱を感じ、生きているのがよく分かる。これから先のこと……果てのない、この旅路の中、どう生きていくのか。
確か日本列島の全長は3000キロくらいだっけ? まあ、地殻変動とか起きて地形が変わっていなければ、だけれども。
「ここって大体度の辺りなんだろうね?」
「分からない。海が見えないってことは内陸なのは確か」
「それくらいしか分からないわよねえ」
「うん。目印になりそうなものが残ってない」
そこは仕方がない。
一番分かりやすそうなのは首都だった東京の跡とかかしらね? でもそれらしき場所には行けてないから東なのか西なのかも分からない。
「もしかしたら北海道かもしれないし」
「ん。それはあり得るかもしれない」
北海道は大きいからね。
ただ、北海道だと仮定すると東京跡まではかなりの距離になりそう。更にそこから西日本方面へも続いている訳だし。
「まあ……行けないことはないけど」
昔は北海道と青森の間は新幹線の海底トンネルのみしか存在していなかったから陸路で向かうのは不可能だったけど、ようやく割と最近に青森の風間浦村から北海道の函館市を繋ぐ全長20キロを超える長い橋が作られたから車でも行き来できるようなっている。
なので、そこを見つけられれば本州側に移動できる。まあ北海道だった場合だけどね。
「橋が生きていればいいね」
「……そうね」
よし、今は考えるのをやめよう。とにかく! 行けるところまで行くという本来の目的は変わらないのよ!
2人の少女は終わってしまった世界を旅する 月夜るな @GRS790
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。2人の少女は終わってしまった世界を旅するの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます