異世界転生といえば、思い浮かぶのは最強の能力や前世の知識を活かしてのチート無双ですが、この作品は少し違います。主人公は前世に辛い過去を抱えていますが、それに囚われることなく、自分の意思で未来を切り開こうとしてゆく。その姿が共感を呼びます。
家族との関係は重要なポイント。前世で得られなかった温かさに戸惑いながらも、主人公が少しずつそれを受け入れていく様子が丁寧に描かれます。彼女を支える家族もまた、一方的に彼女を庇護するのではなく、ひとりの人間として尊重します。絆の深まりが感じられ、やり取りひとつにも優しさがあります。
前世のしがらみをどうするのかという点も大きなテーマになっています。復讐に走るのか、新たな道を選ぶのか。どちらの選択肢にも理由があるからこそ、主人公の決断には強い意味があります。
転生先で何を得るのか、どう生きていくのか。その問いかけが、読後も心に残る作品でした。