日はまた昇る

第52話 平穏な日々

「じゃあ行ってくるよー!」

トマはそう言ってニナに手を振った。


「気をつけなさいよー!」

ニナは大声でそう言ってトマを見送った。


ニナはひと安心した。今回の報酬は安そうだけど人の良さそうな雇い主でよかった。あいつトマは世間知らずなんだからこの前の奴らみたいなのより、安くても堅実な雇い主のほうがいい。そう言ったのにしっかり騙されおってからに。


「あんたもひと安心だね」

シルヴァはニナの内心を見透かしてからかうようにそう言った。


「べつに心配なんかしてないもん」

ニナはぷいと顔を背けてそう言った。これは半分は照れ隠し、半分は本音である。トマは見た目は頼りないけど、大震災以降ずっとニナを守ってくれていたのだ。


「さあひと安心したところでちゃっちゃと働きなさい!患者は待ってくれないよ!」

シルヴァはそう言って軽くニナの背中を叩いた。もう!強欲なんだから!


「先生!急患です!」

そう言って看護師──かつてニナの外出用の変装道具をよく持ってきてくれてた侍女だった彼女は大声でニナを呼んだ。


「はいはい!いまいきますよ!」

そう言ってニナは彼女の医療所に向かって小走りに駆けだした。その様子を見てシルヴァは心の中で密かに祈りを捧げた。


──叔母アイニさま、必ず聖殿を復興させますからね。天からご照覧ください。


(完)

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精霊の加護に護られし聖地 @samayouyoroi @samayouyoroi

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