【短編】音響妖精キュルル②~お題:闇堕ちとは創作する者達への〇〇なのか~【今日はおうた歌えるんか?!】

南方 華

フォールン・クリエイターは魂の汚れを浄化できるのか

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 *あてんしょん、ぷりーず*


 *この物語は、台詞と適度な韻を用いた【音声作品】とご理解ください*




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 えー、ああー、マイクテス、マイクテス。



 もう始めちゃって大丈夫ですかー? 



 ……では、いきまーす!



 初めての方は、はじめまして!


 再び出会った方は、お久しぶり?


 わたしは、音響妖精オンキョーヨーセイキュルル!


 気軽に『キュルル』って呼んでくださいね!

(まんまやないか!)


 今回もしっかりツッコミが入ってますね!


 ちなみにキュルル、独立した短編としてデビューすることになりました!

(わ~、どんどん、ぱふぱふ~!)


 ここまで来るのに苦節8日……、良い時も悪い時もありました。

(どんな?)


 謎の転校生(男子)が後ろの席に座ることになり、ちょっと不良ぽいし目つき悪い感じだしということで、どきどきしながら一限目の授業を受けたり。

(あるあるー)


 謎の転校生が右隣の女子と実は幼馴染おさななじみでちょこちょこ話をしていたり。

(あるあるー)


 謎の転校生が、隣のクラスの女子と中学校の頃、仲が良かったらしく、ちょくちょくうちのクラス来るようになったり……。

(あるあるぇー?)


 謎の転校生が、片目に白い眼帯をしている一年生の後輩と急に仲良くなったり。

(あるあr……ねーよ)


 謎の転校生が、保健室の先生(28歳)といきなり目の前でキスをしたり。

(ないない)

(ないないないない)

(復帰したときどこかの鉱山から救出される場面のパロディやるくらいの展開だわ)



 ちょっと待て、わたしは?


 わたしの居場所 is どこ?!


 わたしは謎の転校生の攻略キャラにならないんかい?!

(そう、人生とはあまりに無常むじょー――)

一切万物いっさいばんぶつ

生滅変転しょーめつるてん

永遠不滅えいえんふめつはないないない!)


(永遠はないよ――、ここには――)


 という感じで色々あった挙句あげく、良いポジションを取っていたにもかかわらずモブと化したわたしは、ソウル宝石ジュッエールにごっていくのを感じてしまったわけですが、そういうことって往々おうおうにしてありますよね!



 というわけで、今日のお題発表! 


 だらららららららららら……、でん!



【~闇堕ちとは創作する者達への祝福なのか~】


 

 闇堕ち。


 それは、何かを夢見る者たちにとって、避けられぬイベント――。

(あ、ここらへんで、びゅおおぉぉぉぉ……って、強い風のSE流しますね!)



 例えば、受験。


「一緒に〇〇中学行こうね!」

「うん、約束だよ! 私も頑張るから、二人で一緒に――」


 片方だけ、受かる。



 例えば、吹奏楽コンクール。


「オーディション受かろうね!」

「うん、一緒に全国行こうね!」


 やはり、片方だけ、受かる。 


 と、このように何かを夢見る者たちにとって、運命とはかくも残酷なもの!


 同じ夢を見ていても、叶わない者はいて、その人生は心に描いたものとは違うものになっていくのであります。

(運命にする者は一人のみ)

まわりゆく車輪ホイールにあなたのその手は届かない)


 それは、私たちの業界も同じなわけで!


 

「この度、連載していた○○が、△△文庫から書籍化することになりました! 詳細につきましては、次報をお待ちください! ……」

「この度、■■コンテストに応募していた〇〇が、大賞を受賞し、コミック化することになりました! 詳細につきましては、追ってご報告いたします! ……」



 ああ、聞こえる。

(ぶくぶく)


 魂が濁っていく音が。

(ぶくぶく)


 賞賛の声を上げるリプライの中に。

(落ちた)


 周りの同じ境遇に居た者たちの中に。

(落ちろ)


 潜む暗がりが、その優しい想いと顔をゆがめていく――。

(落ちていく 墜ちていく 堕ちていく)



【~闇堕ちとは創作する者達への呪いなのか~】



 と、いうわけで、賞レース!


 たくさん走るは有象無象、でも!


 彼らの目標は同じ席!


 そこに座れるのは一人だけ!


 

 こればかりはどうしようもない現実。


 でも、結局、闇堕ちしたところで、自分を救うことは出来ないんですよね!



 じゃあ、どうするのか?


 続けて、求めて、色んなところに出して、色んな人に見てもらうしかない!


 書いて、描いて、作って、掲載けいさいして、応募おうぼして、広める努力とかもして、上手く行かないこともあるけど!


 やるっきゃないない!

(ないない!)


 やるっきゃななない!

(ななない!)


 一体全体よくわからない時代を突っ走っていくしかない!

(ない!)


 諦めたら、そこでしあいし……、

(版権の関係でこれ以上は血がにじんて読めない……)



 ぜぇぜぇ。


 思いのたけを叫んだキュルル、皆さんにこの気持ちは届いたでしょうか。


 悩むのも大事、苦しいこともいっぱいある。


 でも、自分ときちんと向き合えば、また、歩きだせる、ひかり輝く未来へ。


 そして、その創作物は、いつか、誰かのための物語になっていくはずだから。



 さあ、温まってまいりました!

(ほかほか)


 ここからがキュルルのメインステージ、おうたの時間です!

(きたきたきたきた)

(待ってましたー!)


 今回は尺的にいけるよね、ぷろでゅーさー?!


 ……え? BGM系の音響機材が急な豪雨の影響で搬入はんにゅうできてない?


 あと、スタッフがまだ到着してない?


 ついでにこのスタジオ、あと5分で追加料金?!


 うそでしょ、何とかしてよ?!!!!


     *


 はい、今日も歌えませんでした。


 皆様のまたのお越しをお待ちしております。


 あー……わたしのソウル宝石ジュエエールは何色かなあ、いま。


(あんてん)

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【短編】音響妖精キュルル②~お題:闇堕ちとは創作する者達への〇〇なのか~【今日はおうた歌えるんか?!】 南方 華 @minakataharu

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