第6話

「まさか泊まることになるとは思いませんでした」


 コンビニで下着を買ってお風呂に入った夜空は、恥ずかしそうに頬を赤くしながら和樹の部屋のベッドに座った。


 下着は先ほどコンビニで買った物、その上から和樹のワイシャツを着ている。


 男物だからブカブカで下着が見えるわけではないが、異性の前であまり太ももを見せたことがないからか本当に恥ずかしそうだ。


 学校ではタイツをはいているから生足を見れるのはレアなことだろう。


「ねえねえ、夜食は作ってくれないの?」


 先にお風呂に入った和樹は寝巻きであるジャージを着ており、夜ご飯の味が忘れられなくておねだりをした。


「あれだけ食べたのにもうお腹空いたんですか?」


 本当に食べるの好きすぎですね、と少し呆れた様子の夜空の隣に座る。


「夜食作ってくれないようならヤンデレにさせるために色々としようかな」

「色々、ですか?」

「うん」


 ヤンデレにさせて美味しい料理を沢山作ってもらうのが目的のため、ご飯を食べていない間は夜空をヤンデレにさせるために動くべきだ。


 とは言ってもヤンデレにさせる具体的な方法なんてなく、思い付いたことをこれからやっていくだけだが。


「あ……」


 ヤンデレにさせるどうこう以前に惚れさせる必要があるので、和樹は夜空の肩を抱いて自身へと引き寄せた。


 毎日ご飯を作ってあげてくっつきもすれば、どんな人だって異性として少しは意識するだろう。


 少しも離れるのが嫌って思うくらいにヤンデレにさせる。


「い、今は2人きりだから、ここまでくっつく必要は……」


 あうぅ、と恥ずかしそうな声を出してはいるが、抵抗しようとしない。


 恥ずかしすぎて抵抗するのを忘れているのか、それともくっつかれること自体が嫌ではないのかまでは分からないのもも、抵抗してこないのは有り難すぎる。


 抵抗しないのは、ここで離れてしまえば彼氏役を断られると思ったからかもしれない。


 本当に嫌なことはしない約束のため、安心している面はあるのだろう。


「まず夜空はイチャイチャすることに慣れて。あまりにも恥ずかしがってたりすると怪しまれるから」


 あまりにも反応してしまえば、先ほどのひよりのように疑ってしまう可能性がある。


 ヤンデレにさせるついでにくっつくのに慣れさせる必要がないもあるだろう。


「人前でこんなにくっつくなんてほとんどないですよぉ」

「確かにないけど、これくらい慣れておけば人前でも大丈夫になるだろ」


 人前では手を繋いだら軽くくっつく程度かもしれないが、密着度が高い状態で慣れておけば学校で一緒にいても恥ずかしがることがかなり少なくなるはずだ。


 お互いにメリットがあるからこそこんか関係になっているものの、周りにバレてしまっては意味をなさない。


「カズくんは恥ずかしくない、のですか?」

「ないよ。そもそもヤンデレになってくれと言うやつがこの程度で恥ずかしくなるはずがない」


 イチャイチャが恥ずかしいのであれば、ヤンデレになってくれと告白すら出来なかっただろう。


 美味しそうなお弁当を見て終わりだ。


「二人きりでもカズくんなんだね」

「だって人前で間違えて苗字で呼んでしまわないようにしないといけないですから」


 確かに人前で間違えて苗字で呼んでしまえば、どうしても疑う人が出てくる。


 なので二人きりでもカズくんと呼ぶことにしたのだろう。


「初日からここまでくっつくことになるとは思わなかったけどね」

「私もですよ。絶対妹さんのせいです」


 恥ずかしすぎるのを隠したいのか、夜空は和樹の胸板に隠すように顔を埋めさせた。


 そんなことをしたら彼女が彼氏に甘えているかのようだが、今の夜空にそんか余裕はないだろう。


 確かにひよりがイチャイチャとか少し疑ったりするからくっつく羽目になった。


 そうでもなければ初日からこんなにくっつくはずがない。


「あれですか? 実は妹さんに私のことをヤンデレにさせるから煽ってくれとか言ってたりしてませんか?」

「言ってないよ」


 何でひよりにそんなことを言わないといけないのか不思議だし、言ってたら協力しなかっただろう。


 そもそも自分の都合で妹を巻き込むつもりはない。


「初日からこうなったってことはヤンデレになる未来はそう遠くないかもね」


 このままいっぱいくっついて意識させてヤンデレになってもらい、沢山料理を作ってもらう作戦は上手くいきそうだ。


 もし、いっぱいくっつくのが嫌で離れて他の人に彼氏役を頼んだとしても、和樹にはバレてしまっているし、そもそも既に見ている人たちからしたら夜空がすぐに男を乗り換えるビッチだと思われて嫌だろう。


 つまりは夜空もしばらくはこうやって一緒にいないといけないわけだ。


 もちろん本当に嫌なことをするつもりはないから大丈夫だろう。


「このままいけば本当にカズくんの思い通りになりそう、ですね」


 つまりは少し自分がヤンデレになる未来を想像してしまったということだ。


 物凄く有難いことであり、ヤンデレにさせやすくなる。


「もし、夜空がヤンデレになってくれた頃には俺もきっとベタ惚れ状態だと思うよ」

「本当、ですか? ヤンデレにさせるだけさせて料理だけ堪能してかまってくれないとかはないですよね?」

「それはないね。その時には両想いだよ」


 毎日のように美味しい料理を食べてくっついてもいれば、間違いなく異性として意識して好きになる。


 もちろん料理を毎日作ってくれるという前提ではあるが、作らせて彼女を放置するなんてあり得ない。


「だから安心してヤンデレになってくれ。両想いになったらいっぱい愛し合うから」

「はい。もし、そうなったら……」


 未来のことなんて誰にも分からないし、この関係がいつまで続くか分からないが、もしも両想いになったらずっと一緒にいることを決めた。

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料理上手な学校一の美少女をヤンデレにさせれば一生安泰 しゆの @shiyuno

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