第9話
部屋の中、再発したあなたは目をつむっている。布団の中で、微動だにできず、ただ意識をとぎれさせるだけの行為をしている。そんなあなたを、ぐるりと囲んで、みんなが言う。
「どうしてこんなことになってしまったの」
と。
あなたは、目を開く。水中にいる様に視界が曇っている。耳の内にこぼれ落ちて、それが涙であると、うろんな意識の中に悟る。
あなたは、その言葉も、何もかもを覚えては居なかった。しかし、ただ、ひどく胸が痛んでおり、なにかに傷つけられたのだと、感じる。
なにに傷ついたのだろう。その疑問は、言葉どころか、一音にもならぬままに、あなたの意識の海から散って、飛散していく。
そして、ちかちかと明滅する視界の向こうで、またあの光景が浮かぶのだった。
それは、もはや、あなたにとってはどうでもよいことだった。
けれど、それでは満足しないものたちが、きょうもあなたを囲むのだ。
「答えを出して」
と囲むのだ。
あなたは、見いだしたところで、何かが変わるわけでもないのにと思う。しかし彼女たちの言葉には切実なものがあった。
あなたは、散らばり浮遊した意識のなかで、何とか思い出そうと試みる。
けれども、どうにもそれを視認することもかなわない。
しかし、掘り返す。
いつのまにか子供は、あなたの顔をしている。
泣きながら目覚めても、そこには誰も居はしないのだ。
かこめかこめ 小槻みしろ/白崎ぼたん @tsuki_towa
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