第7話 幕間 ハリネズミとの再会
ガラスが割れるような音を立てながら、白い空間が溶けていく。足元の感覚が消え、ぐらりと身体が落ちていく感覚に襲われた高野は、この後に来るであろう落下の衝撃に備えて、身体を丸めて目を瞑った。
――だが、いつまで経っても予想していた感覚が訪れることはない。
高野が恐る恐る目を開けると、いつの間にか、暗闇に包まれた場所へ戻っていた。
「――っはぁ~~……、何とか、出られた…みたいやな」
深いため息をつきながら、ペタリと座り込む。先ほどのことを思うと、この真っ暗な空間に安心感すら覚えてきた。
何か変わった様子はないか周りを見渡していると、高野の耳に小さな足音が聞こえてきた。音の方向を向いて目を凝らすと、小さな白い生き物が、こちらへ向かって必死に走って来ていた。
「キュー!キューキュー!!」
「おお!ハリネズミ、お前無事やったんか!」
「キュゥ~~、キュ!」
高野が手を伸ばすと、ハリネズミはその中に飛び込み、甘えるように身を摺り寄せた。
「はは、なんや、心配してくれてたんか? ありがとうな……っいてて、ちょ、いた、ハリ!ハリ刺さって、いででで! 一回離れよか?!な!」
「ウキュゥ……」
「そんな目で見んな…これがハリネズミのジレンマってやつなんか……?」
ハリネズミからそっと手を離して、深呼吸を一つ。そして自分に気合を入れなおすように両頬をパチンと叩き、高野は立ち上がる。
「さて、次はどこに行ったらええのか……ハリネズミ、どうや? 道知っとるか?」
「キュッ!」
「よし、お前が頼りやぞー。案内任せたわ」
大小2つの足音が、また暗闇の中を進みはじめる。
――その背後を音も無くついていく影があったが、指摘できるものは誰もいなかった。
こっち来んな、都市伝説! 草葉野 社畜 @kusaba_no_syatiku
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