当日 ー現実ー

 待ち合わせの場所にキョウコちゃんは来ていた。

 白のフリースジャケットに赤と黒のチェック柄のシャツ、細いデニムパンツにトレッキングシューズ姿だ。

 対するボクは学級・名前入りの学校ジャージに運動靴だ。

「どーせ汚れるから、コレを着て行け」と、かーちゃんが言ったから……

 二人の装いが全然合って無い!

「待った?」

「今来たとこ」

「じゃあ、行こうか」

 二人は歩き出す。


 キョウコちゃんは軽快に山道を歩いて行く。

「キョ、キョウコちゃん、ま、待って~!」

 ボクは急な山道で息が上がりフラフラになっていた。

 デコボコの地面が薄い運動靴の底から足裏を痛めつける。

 彼女は振り返ると、ボクに手を差し出して、

「ほら、掴まって!」

「あと少しだよ!」

 と励ましてくれた。

 彼女はボクの手を掴むとグイッと力強く引っ張りあげてくれた。

 みっともない所を見られて、情けない……


 なんとか展望台に着いて休憩をする。

 彼女に冷たい飲み物を出そうと水筒を開けて出すと、中身は温かい麦茶だった。春先のハイキングなので、かーちゃんが気を利かせたみたいだ。

 彼女を観ると、ペットボトルのスポーツ飲料を直接のんでいた。

 しかたが無いので温かい麦茶を飲もうとするが、汗をかいて熱くなった体が拒否反応を起こしていた。

 飲むのを躊躇しているボクをみて彼女は、飲みかけのペットボトルを渡してくれた。

「こっちの方が冷たいよ」

 ボクは貰ったペットボトルを一気に飲み干した。

 あれ? これって……


 頂上のお弁当タイム。ボクのお弁当はかーちゃんの作った「爆弾おにぎり」だった。彼女は手製のサンドイッチだ。

 これでは、おかずの交換も「あ~ん」もできない……


 なんだかんだで無事にハイキングを終えて駅に着く。後は彼女を家に送るだけだ。

 ボクは、

「家までボクが送るよ!」

 と言ったが、彼女は、

「ごめんなさい! これから家族と外でお食事会をするの……」

「だから、ここでお別れね」

「は、はい……」

 ボクは力なく答える。

 急に彼女はボクの肩を引き、ある方向へ指をさす。

「ねぇ、アレを見て!」

 ボクはさされた方向に顔を向ける。


「……⁈」


 彼女はボクの頬に軽くキスをした……

 驚くボクに彼女は悪戯っぽく笑って、

「次に会うためのオマジナイだよー!」

「夏休みになったら、またデートしようね!」

「それまで浮気しちゃダメだよ!」

 そう言って改札口へ駆け出していった。


 残されたボクはキスされた側の頬に手を当てて、

「次のデートの為に完璧なプランを立てなければ!」

 と思っていた……



 とっぴんぱらりのぷう

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予行演習 わたくし @watakushi-bun

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