第六話 この広い世界に-後編-
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----エッダ、、、?
朦朧とする意識の中、ダイムは美しき神の温もりを感じていた。
(---ダイム!?---ダメだ魔力が枯渇してる--。おい、トト!--呆けてないで--早くバギーを---)
(ダイム!しっかり---!)
途切れ途切れの意識の中、トトとロイドの念が飛び交う。---やがてダイムは意識を失っていた。
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2日前の夜から降り続いた雨は、日の出の前には止んでいた。
窓から射し込む柔らかな光が顔を撫で、
目覚めて直ぐにそこが全く知らない場所である事に気付く。
暖かい陽射し。
暖かい部屋。
暖かい布団。
--何処だ?ここは---。
目覚めると、壁一面にぎっしりと飾り付けられているドライフラワーが目に入る。中でも、一際目に入ってきたペールブルーの色を
目が慣れてくると、壁の薔薇を囲むように床一面所狭しと くすんだ色の白やピンク、淡い緑の草花で造られたドライフラワーが所狭しと、その花々が乱れ咲くが如く置かれていることに気付く。
ダイムは起き上がると、花を踏まないように忍び足で部屋を出ると、扉近くにあった階段を下った。
そして、降りた先には朧気に見覚えのある家紋の様なモチーフが飾られた扉を見付け、ゆっくりと開いた。
((---ダイム!!))
---トト。--それに--ディン??
そうか-ここはディンの家か---。
ダイムの姿に気付いたトトは、目尻を紅く染め、青い瞳からは今にも一雫
(良かった--。気が付いたのね。)
ディンの母親、イリスがダイムを抱きしめてくれる。彼女の頬を伝う涙が彼の肩を濡らすと同時にメイの姿がそこに居ないことに気が付いた。
--母さん---。トト--!
彼はトランスミッション・ウェアを装着していない事に気付くと、テーブルの上で見付けた紙と鉛筆を取る。
『トト、母さんは?』
そう書いたと同時に、トトの顔を見る。
トトだけでは無い。その場に居た三人が三人とも神妙な面持ちで目を伏せている。
--くっ---。
壁に掛けてあった、自分のコートとトランスミッション・ウェアを乱暴に取り上げるとダイムは部屋を飛び出す。
(--ダイム!待って!)
すぐに追ってきたトトに肩を掴まれ、ダイムは立ち止まり、肩を落とす。
何も訊かなくとも、彼には分かって居るようだ。
(トト--。母さんは助からなかったんだろ---?俺が--もっと強ければ--。)
ダイムの頬を大粒の涙が流れる。トトは親友の肩を抱き、彼と一緒に涙を流していた。
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同時刻、隣国『ジェニス』首都・アルシュラン某場所にて---。
『ジェニス』--かつて、ガルキウスの脅威に対抗すべく十五国連合を結成した際、初めて連合結成を提唱した国である。当時まだ鎖国状態であり、隣国でありながら謎多き魔導国『ジャピニオン』を連合に引き入れ、戦況を逆転させた功績を残す、旧十五国連合一の大国である。
3年ほど前に宰相に就任した者の意向により、十五国連合からの脱退を表明し、南側諸国と独立国家を形成していた。しかし、脱退のその真意は未だ謎のままであった。
「---なんだよ。結局、オリジナルは取り逃し---ただ15の兵士を無駄死にさせただけかよ。」
左右の目の色が異なる、長身の男--旧十五国連合南北分裂のきっかけを作った男、レオン・ゼス・ジェニスは部下である小隊長を叱責する。
「はっ。申し訳ございません。まさかあれ程までに---。」
小隊長は片膝を地面につき、
「--確かに。それはかなり厄介だな---。何のためにこの数百年もの間、奴らを黙らせ続けたのか--。先人達の苦労も水の泡だと言う事だな--。」
「僭越ながら--私もその様に考えておりました。アレが本来の力を取り戻した暁には--世界が終わるやも知れません。」
「それだけは何としても--オリジナルは無傷で捕獲し、無力化させる。ヤツが自分自身を何者かと理解していない今だからこそ、好機だと思え!---ひとまず、俺は隊の再編を早急に行なうよう、元首会に掛け合うとしよう。お前達は次の作戦に備え充分な休息を取るように。」
「はっ!」
レオンは講堂を出るとその足でエレベーターホールへと向かい、タイミングよく到着していたエレベーターに乗り込む。
最上階のボタンを押すと、到着までのしばらくの間、思慮に
(---オリジナル--まさか西側ではなく敵国だったはずのジャピニオンに潜んでいたとは--。しかし、いつ---?どうやって入り込んだのだ---?)
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ダイムがディンの家で休養し始めて一週間が過ぎていた。枯渇していた魔力は既に回復していたが、母を失った悲しみに彼は押し潰されそうになっていた。
また、この一週間で思わぬ収穫があった。
国境警備局の調査により、野盗の身元が判明していたのだ。
彼等の死体や装飾品から、数千年前にこの地と隣国『ジェニス』を支配していたクジャ族の兵団に特徴が似通っていると報告されていた。
クジャ族は少数民族ではあるが、好戦的な民族であるが故、現在は近隣諸国より傭兵として雇われている者が多いのである。雇い主まではまだ辿り着いてはいないが、十中八九 旧十五国連合 南諸国のいずれかによる犯行であろうということであった。
ダイムは母への悲しみを打ち消すべく、何かに取り憑かれたかのように『デミ・エクスプロージョン・フレイム』やその他の魔法を鍛錬している。その甲斐あってか、一週間も経たずして彼は魔力をコントロールすることで、連続詠唱を成功させた。
その日も、いつもの様に荒野の岩山を標的に魔法の鍛錬を行っていた。
(おーい!ダイム!トト!)
こちらに向かってディンが駆け寄ってくる。
(どうしたの?)
トトがディンに向かうと、何やら封書らしきものを手渡されている。
ディンに促されたトトは、封書を開封し中から白い紙を取り出すと、みるみるうちに彼の表情が綻んでいった。
(--ダイム!ちょっとこれ、見てみなよ!ティム先生から---おじさんの足取りが--ガルキウスに入ったあとの足取りが掴めたって--!)
(---!?本当か?!)
ダイムは詠唱を中止すると、トトの元へ駆け寄り、手渡された手紙を食い入るように読み始めた。
(---決めた。トト、やっぱり2人で首都に行こう。そして父さんを追う。それが母さんの弔いになると思うんだ。)
(---ダイム。--分かった。行こう。僕もおじさんに聞かなきゃならないことがあるんだ。)
トトは空を見上げ、小さな溜息をついた。
あの日、エッダを呼び出せたのは何故だろう。幸いにも、ダイムは夢の中での話だと思っているようだった。
オルテガを追うことで、自身に隠された真実を見つけ出せるのではないか---。
そう思っていた---。
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サイレント・シティ リド。 @Rid_anvicious
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