k-13
@mktim
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映画館に行ったら、スタッフの制服が変わっていた。「前の方が良かったのに」誰にも聞こえない音量で独り言を呟く。学生時代週4で働いたこの映画館も、時が経てば私の居場所ではなくなってしまったみたいだ。新制服を着こなした一回り年下のアルバイトの男の子に、いらっしゃいませと言われる。
そのシルエットに、一瞬彼を重ねた。当時アルバイト同士で付き合っていた彼。映画を作る仕事に就くのが夢だった私たちは意気投合し、やがて恋に落ちた。「結婚したらこの映画館の1番大きいスクリーン借りて、力作の生い立ちムービー流そう」そんな冗談を言い合って、映画を見て、私たちは付き合っていた。それから数年経ち、私がこの映画館で1番大きいスクリーンを訪れたのは、生い立ちムービーではなくなんだか小難しい、私の好みとは程遠い映画を見るためだった。私たちのお気に入りだった座席、私がK-13で、彼が14。今日は片方しか埋まらない。映画が始まっても、やっぱり難しい内容のせいか、一度彼を思い出して止まらなくなったせいか、話なんて入ってこなかった。でも、ここだけは見逃さなかった。エンドロールの黒い背景に彼の名前が白く映えて、眩しい。隣にいたはずの彼が今では遠い目線の先、そしてすぐに上の方へ消えた。映画は終わり、「どこに泣く要素なんてあったんだ?」と、通り過ぎたカップルに笑われた。恥ずかしくて立ち上がれない。私だけがK-13の席に、取り残されたままだ。
k-13 @mktim
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