第67話 じじょうちょーしゅ

お休み明けの月曜日


楽しかった週末が終わってもウキウキして学校に来たのに今はどんよりぐったりです。


放課後、図書準備室の机でひとり伸びてます。



「お~い しおんちゃん 生きてますか どうしたの」


ほっぺつんつんされて顔を上げたら司書さん


イベントが終わってのーまるたいぷの司書さんです。



だってだって お昼いちばんの時間に英語の抜き打ち小テストやったんだよぉ

やられました。うきうき気分が吹き飛んじゃったよ。



「英語は出来ると便利だからね。今のうちに勉強しておいた方が良いよ」


わかってますよ。大事ですよ。でも単語が覚えられないから苦手なんです。暗記系がダメなしおんちゃんです。


ちなみに年号も覚えられないから歴史も苦手です。

日本史は『関ヶ原の合戦より前か後か』 世界史は『第二次世界大戦より前か後か』くらいで良いですよね。細かい数字はいらないと思います。



「トテちゃんも聖女ちゃんも英語得意なのにこまったものね」


聖女ちゃんは別枠でしょ 完璧美少女と一緒にしないでくださいっ

トテちゃんも図書室で王子様先生にイチャイチャしながら教えてもらってるんだよ。



「それに憧れのあかねさんは英語得意よ。イベントの時、外国からのお客様にきれいな発音で対応してたからね」


それは当然です。あかねさんは何でも出来るんです。どやっ



「しおんちゃんがドヤ顔するところじゃないでしょ しおんちゃんが英語できないとあかねさんが恥ずかしいかもよ。私の妹って英語もできないなんて およよよって」



およよよって何ですか あかねさんはおよよよなんて言いません。



「これだけ英語が得意にな人に囲まれているなら勉強教えてもらったらどうなの クラスメイトで教えあうなんて良いと思うわよ」


良い案です。勉強会しましょう。さっそく二人にお願いしなきゃ まずはお菓子の用意です。



「ところでふたりはどうしたの いつもなら来ている時間なのに」



トテちゃんは『白百合の聖女ちゃん誕生&騎士くん告白成功』を世に広めるため広報活動中です。忙しいのです。


「聖女ちゃんはどうしたの まさか自分から宣伝しないでしょ」


聖女ちゃんは事実を知った『聖女ちゃんを見守る会』会員からじじょうちょーしゅを受けていますので今日は動けないと思う。


騎士くんはクラスの子たちから背中をぺしぺし叩かれて『お祝い』されてました。

今は部活中なので先輩から竹刀でぽこぽこされて『お祝い』されてるんじゃないかな。


「ふたりとも有名人だからね。仕方ないか 剣道部の方にはほどほどにするように言ってあるから大丈夫だと思うけど、聖女ちゃんが心配ね」



――――

――――




教室では聖女ちゃんを中心に女子生徒の輪が広がっています。

輪と言うよりも包囲網と言った方が正しいでしょう。



「なになに みんな盛り上がって」


「聖女ちゃんがついに騎士くんに告白されたって」


「えっ まだ付き合ってなかったの」


「私たちの聖女ちゃんが奪われちゃう」


「そこは喜んであげようよ」



「「「それで返事はどうしたの」」」



熱い視線を浴びせられて戸惑う聖女ちゃん



「みなさん 落ち着いてください あっ トテちゃん 助けてください」



いつの間にか輪の中に入り込んでいるトテちゃん

ちょっと悪い顔していませんか



『聖女ちゃんどうしたの 告白の一部始終を近くで見守っていた私が通りかかりましたよ』




ざわっ



「トテちゃん なでなでしてあげるからここに座ろうね」


「みんなへの報告は乙女の義務ですよ」


「落ち着いて全部話してよ。内緒にしないでよ。キャラメルあげるから」



「「「解説お願いします」」」



『そんなにお願いされたら仕方ないです。お話ししましょう』えへん



――――

――――



この週末に『恋する仮面舞踏会』ってイベントがあったのは知ってる?



「知らなかった」「何 そのイベント」


「私のお母さんも行ったよ。街のみんなが集まって発表会をしたんだって」


「今年から名前も場所も変わってすごかったって兄貴が言ってた」




「私 行ったよ。しおんちゃんもいたよね。しおんちゃんのお姉さんにも会えたよ」


「わぁ 行きたかったな しおんちゃんのお姉さんってどんな感じの人なの」


「優しそうな人ですっごく大人だったよ。男子がみたら夢中になりそう」



「どのへんが大人なの」


「色っぽいと言うか ど~ん と言うか ぶるんと言うか」


「あ~ わかった じゃあしおんちゃんも将来すごそうだね 将来」



そのイベントでcafeのお手伝いをしてたの しおんちゃんと聖女ちゃんと私



「みんなドレス着てたよね。しおんちゃんのお姉さんもコスプレしてた」


「聖女ちゃんのお姉さんもコスプレしてたよ 聖女さまのコスプレ」


「聖女ちゃんにそっくりだったよ。聖女ちゃんがそのまま大人になった感じ」



イベントの二日目は全員コスプレだったんだよ。私たちは聖女見習いのドレス着て、騎士くんも本格的なコスプレしたよ。



「キリッとして年上にしか見えなかったよ」


「そうそう 騎士くん カッコよかったなぁ」




『私のですからね。取らないでください』



えっ



「聖女ちゃん・・・」


「あの聖女ちゃんが・・・」





「「「「「きゃあぁぁぁぁ 聖女ちゃん 可愛いっ」」」」」



§



それでね。騎士くんがさりげなくイベントの終わりに時間をくださいって申し込んだんだよ。



なのにどうしてトテちゃんが知ってるの」



だって近くにいたから聞こえちゃったんだもん しおんちゃんだって聞いてたよ。



「もちろん聖女ちゃんはOKしたんだよね」



世界樹の下で待ってますって答えたんだよ 聖女ちゃんらしいでしょ 体育館の裏とかじゃないんだよ



「なんで世界樹の下なの 世界樹って丘の上にある大きな木だよね。世界樹広場の・・・」


「イベント会場のcafeの真ん中に世界樹があったよ。ちょっとだけ光っていて神秘的だったよ」



イベントの時はにぎやかだったけどお客さんがいなくなってちょっと薄暗くしてあったからすごく神秘的だったの



「室内なのに薄暗くなったの? なんで?」


スタッフさんが聖女ちゃんのために雰囲気を作ってくれたんだよ。薄暗くなっても聖女ちゃんが待っている場所だけ少し明るくなってたもん



「みんな聖女ちゃんの味方なんだね。最高の場所じゃない」


「だって『恋する仮面舞踏会』だよ。みんな恋の味方だよ」



世界樹の下で待ってる聖女ちゃんに騎士くんが歩いて行ってね。それをスタッフさんも見守ってたの


騎士くんが聖女ちゃんの前に立ったら二人で見つめあって・・・



『もう 許してくださぁい 恥ずかしいです』



「はい 聖女ちゃん 大人しくしてようね」


「今からが一番良いところでしょ キャラメルあげるから静かに聞こうね」



こほん 



騎士くんがその場でひざまずいて誓ったの 


「絶対の忠誠を『白百合の聖女』に捧げます。俺と付き合ってください」




・・・



「「「きゃあぁぁぁぁ カッコいい」」」



「さすが騎士くんだよ。騎士の誓いだよ」


「俺と付き合ってください なんて言われたいよね」


「それで それで 聖女ちゃんはどうしたの 『はい』って言ったんだよね」




それがね。このふたりカッコいいの ここは本人に教えてもらいましょう。

さあ ドゾ



「隠さないでね 嘘ついちゃだめだよ」


「トテちゃんがいるからすぐわかっちゃうからね」



『あの・・・ 「その誓いお受けいたします。」って・・・』



「きゃああ 可愛いっ 可愛いっ」


「答え方まで聖女ちゃんだ」


「甘いです。甘すぎます」




それだけじゃないでしょ 最後まで言わなきゃ




『トテちゃんったら もうっ 「その誓いお受けします。私をずっと守ってください。」ってお返事しましたっ』




「聖女ちゃん それってプロポーズされたんじゃないの 結婚しちゃうの」


「小学校の時から婚約者って言われてたからね」


「告白じゃなくてプロポーズされちゃったんだ」




『あっ プロポーズ・・・ だったのかな』




「もう 夫婦でいいでしょ」

「聖女ちゃんになんて言わせるなんてねぇ」

「これで聖女ちゃんに近寄るバカがいなくなるね」


「白百合の聖女さまを守る騎士だよ。最強のカップルじゃない」


「これからは白百合の聖女ちゃんって呼んだ方が良いのかな」


「う~ん 長いよね 白百合ちゃんでどうかな」


「名前と変わらないじゃない。やっぱり聖女ちゃんでしょ」



それじゃあ 採決を取りますっ これからの呼び名は「カッコいい彼が出来てデレデレになった白百合の聖女さま」で良いと思う人は挙手っ



「「「は~い」」」



『トテちゃん 恥ずかしいです。それにデレデレになってませんっ』



聖女ちゃんのうそつき



「うそはよくないね。でれでれだね」


「でれでれですね」



『もう 許して・・・ 恥ずかしい・・・です』

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恋に恋する乙女たち ~恋する中学生とあかねさん~ 音無 雪 @kumadoor

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