第4話

 スミレは村の中ではロングスカートでいかにも村娘という恰好をしていたが、今はショートパンツに着替えている。

魔法使いというより普通の剣士のような格好だ。


「やっぱり冒険といったら動きやすい恰好に限るわよね。」

嬉しそうに呟いている。


 こいつもしかして剣士とかやりたいんじゃないか?

そう思ったがこいつに剣を持たせるとそつなくこなしてしまいそうなので、剣士の話題は振らないことにした。


 対して俺は長いローブを着ていかにも魔法使いというような服装である。

慣れ親しんだローブを着ないという選択肢は俺になかった。


「さーて、それじゃあ冒険に出発!」

 スミレは買い物に出かける子供のように嬉しそうである。全く命がけの旅だというのに。


 旅の目的だが大きく4つある。


1つ目は魔王を倒すことである。これが最終目標だ。


 1つ目は俺の呪いを解くこと。

剣士として戦う覚悟はできているが、それでも魔法を使えるに越したことは無い。

冒険をしながら呪いを解き方を調べるつもりだ。


 2つ目は魔法無効化を解除する方法を調べる事だ。

魔王が使っていた魔法無効化は俺の予想では何らかのスキルの一種だ。

なので相手の特殊効果を解除する魔法やアイテムなどを見つければもしかしたら対処できるかもしれない。


 3つ目は勇者に剣を教えたベルダに会う事である。

昔勇者について聞いた時、アイツはロマリカの街でベルダに剣を教えてもらってたと言っていた。まずはロマリカに行ってベルダを訪ねてみよう。


 4つ目は魔王を倒すことである。これが最終目標だ。


「よし。まずはロマリカの街に行くぞ。」

「ロマリカってどこにあるんだっけ?」


「ロマリカはここから東に位置してる町だ。かなり距離があるから途中の街で休みながら行くぞ。」

「ロマリカになんの用があるの?」

「その街に勇者の剣の師匠がいるらしい。俺もその人に剣を鍛えてもらう。」


「なるほどね。ところでユーヤに聞きたかったことがあるんだけど。」

「どんな質問だ。くだらないことは聞くなよ。」

「大事な質問よ。ユーマは街にずっと籠ってたけど、剣で魔物と戦ったことあるの?」

舐められたものである。俺もそれなりに冒険をしてきたのだ。魔物退治など慣れたものである。


「俺だって勇者パーティーの一人だったんだぞ。そんなの余裕に決まってるだろ。」

「そう?ならよかったわ。」

スミレは安心したようだ。


 そんなことを話しながら歩いていたら早速魔物が現れた。

 ウサギのような魔物ラージアである。やはり魔王から離れたところにいる魔物はたいして強くないようだ。


「この程度なら俺一人で十分だ。下がっていろ。」

「わかったわ。」


 俺は剣を構えてラージアと対峙した。

だがなぜだろう、凄く緊張している。

 今までこの程度の魔物に何かを感じたことは無いのだが、今日は調子が悪いのだろうか。手汗も酷い。


 俺はラージアに向かって剣を振りかぶったが、それを躱され突進攻撃を受けた。

吹っ飛ばされて地面に倒れた。


 俺は起き上がりもう一度ラージアに剣を振ったが、躱されてしまう。

もしかしてこの魔物はラージアではなく別の上位種の魔物だろうか。攻撃を当てられない。


 横で見ていたスミレが火の魔法を唱えラージアを倒した。

「やっぱり思った通りね。」

「どういうことだ?」

「ユーヤは今まで魔法しか使ったことが無いから魔物の動きが分かってないのよ。魔法だったら唱えれば大体当たるし」

 なるほど。つまり俺は魔物の動きに慣れていないから攻撃が当たらなかったということか。


「だからユーヤは弱い魔物を何度も倒して魔物の動きに慣れなきゃだめよ。魔物との距離間もわかってなさそうだし。」

 確かに魔法は魔物に近づかなくても遠距離から唱えても当たる。

剣は魔物に近づかないといけないから魔物も躱すし、こちらも恐怖心が生まれやすい。


「ロマリカの道中はとにかく剣で魔物を倒しなさい。危なくなったら私が助けて上げるから大丈夫よ。」

いきなり上下関係が生まれてしまったようだ。


「絶対お前に頼らなくても魔物を倒せるようになってやるからな。」

「はいはい。無理せず頑張ってね。」

スミレはニヤニヤと笑いながらそう言った。








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元魔法使いは諦めない まろまろ @maromaro0645

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