第3話

「最初は何から始めればいいの?」

スミレが尋ねてきた。

「まずは魔力を制御することからだな。魔力を感じ取らなきゃ魔法は使えないから。」


 俺はスミレに魔力制御の方法を教えた。

教え始めて1時間ほどでスミレは魔力を体内で循環させられる様になった。


…覚えるの結構早いな。

俺ほどでは無いがもしかしたらスミレには魔法の才能があるかも知れない。


「じゃあ、初級魔法を覚えていくぞ。」

わかったわ、とスミレが元気よく返事した。


「手に魔力を集中させて小さい火の玉を手に乗せるイメージをしろ。」

「ふむふむ」

 スミレは目を閉じながら魔力を集め出した。

すると小さいが火の玉が出来た。

「呪文を唱えて火の玉を目の前に飛ばしてみろ。イグナだ。」

イグナ、とスミレは唱え火の玉を飛ばして見せた。


「やっぱり飲み込みが早いな。」

「できた?ねぇ私できてた?」

スミレが無邪気な子供のように尋ねてきた。


「まだ不安定だけど最初にしては十分出来てた方だな。」

「やったわ!私才能があるのかしら」

「まだ初級魔法だからな。あまり調子に乗るなよ」


「ねぇ、他にも色んな魔法を教えてよ。」

「今日は俺が疲れたからまた明日な。」

「明日絶対だからね。」


 その日から魔法のレッスンが始まった。


 スミレは覚えがよく1週間ほどで初級魔法覚えた。

 中級魔法の練習をしていたある日、スミレが尋ねてきた。

「ねぇ、魔王との戦いはどんな感じだったの?」

 俺は魔王との戦いを詳しく話した。


「そっか。魔王ってそんなに強いんだね」

 スミレは魔王の強大さにショックを受けているようだ。


「ユーヤは魔王にリベンジしないの?」

「戦いたくても魔力を封じられてたら俺に出来る事はないだろ?」

「そうなの?勇者みたいに剣で戦えばいいんじゃ無いの?」

スミレがアホな提案をしてきた。


 多分こいつは皮肉とかじゃなく、本当に出来ると思って言っているんだろな。

「あのな、俺は今まで剣を使った事が無いんだぞ?そんな簡単に使いこなせるわけ無いだろ。」

「でも、魔王に好きなだけ言われて悔しくないの?」

「そりゃ悔しいに決まってるだろ。」

「じゃあリベンジすればいいじゃない?」

「いや、だから…」


「私も1週間前から魔法の練習を始めたけど、ある程度使えるようになったわよ?」


 言い返せなかった。

スミレの言う通りである。

 こいつは少し前に魔法の修行を始めて、今中級魔法も覚えようとしている。

 俺はやる前から剣は使えないと諦めていただけだった。


 ここ最近の俺は魔法を教える以外は特に目標も無く、ただ不貞腐れていただけだった。

 仲間が殺されたってのにこんなんでいいんだろうか。


「決めた、俺剣の修行をする。絶対魔王を倒す。」

「よく言ったわ。私の魔法の指導も忘れないでね。」


そこから修行の日々が始まった。


 まずは村で安い剣を買った。

早速素振りをしようと思ったのだが、


「重すぎる。これは無理だ。」

 剣が重すぎて振ることすら出来なかったのである。俺の体はかなり貧弱だった。


 それからは筋トレとランニングをひたすらこなした。剣士になる為には体作りが1番大切なようだ。


 毎日腕立て・腹筋・スクワットとランニングをして空いた時間にスミレに魔法を教えた。


 ランニングは村の外を走りたかったが、魔物が出るとどうしようも無いので村の中を走っていた。


 村人からの視線はかなり痛かった。

だが、そんな事は気にしていられない。


 毎日同じ事を続けて、気がつけば1年ほど経っていた。


 1年後、俺の体は仕上がっていた。

 今までは木の枝の様だった手足も血管が浮き出るほどになり、腹筋も割れて体全体に厚みがでてきた。

 筋トレを始めてから半年ほどで剣も普通に持てる様になったので、素振りも始めた。


 自分で言うのもなんだが、よく頑張った方だと思う。


 さて、そんな中スミレはどうなったかというと。


 上級魔法も全て覚えてしまった。

俺の教え方が良かったのもあると思うが、それにしても早すぎである。

 もう、最果ての村に居るレベルでは無い。


 まぁそれは置いといて、俺は今日冒険に出る事にした。


 最後にスミレにお別れを言っておこう。


「スミレ、大事な話がある。」

俺はスミレに話しかけた。

「なに?新しい魔法を教えてくれるの?」

「違う。俺はこの1年間修行してきた。やっと準備が出来たから今日この村を出て行く。」

「わかったわ。私もすぐ準備するから待ってて。」


「は?俺は魔王討伐の旅に出るんだぞ?」

「それくらい知ってるわよ。馬鹿にしないで」


 いや馬鹿だろ。魔王について話したのに普通俺について行こうとするだろうか。


「私もその為に1年間鍛えたんだから、足手まといにはならないわよ」


 こうして俺達の冒険は始まった。





















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