第2話

 俺は自分が森の中にいる事を思い出した。

森という事は魔物が出るかもしれない。急いで近くの街に逃げなければ。


 俺は少し高い丘に登って、近くに街は無いか見渡した。


 だいぶ遠くだが、村のようなものが見えた。とりあえずはあそこを目指そう。


 これまでの勇者との旅はのんびり歩きながら進んでいたが、今は魔物に襲われたら即死である。

 俺は必死に走って村を目指した。

魔王の言う通り俺は魔法が使えなければただの貧弱なガキである。

 戦闘中も後方で突っ立ったまま魔法を放っていただけなので、体力もない。少し走っただけで息切れした。


 10キロ近く走っただろうか。俺はなんとか村まで辿り着いた。

 村に入ると近くの村人に早速話かけられた。外から人が来るのが珍しかったのだろう。


「この村に人が来るなんて珍しい。どこから来たのですか?」

「魔王と戦っていたらここまで魔法で飛ばされた。ここは何て名前の村だ。」

俺は村人に問いかける。


「ここはリザス村です。魔王と戦っていたという事はあなたは魔法使いのユーヤ様ですか?」

 リザス村は確かこの世界の端っこの方の村だったはず。魔王もずいぶん遠くまで飛ばしてくれたものだ。

「そうだ。俺が魔法使いユーヤだ。」

俺は答える。こんな端の村でも俺の事が知られていたのは驚きだった。


「今村長を呼んで来ます。少し待っていてください。」

 村人は走って村の奥へと行った。


 少し待つと髭面のおっさんが現れた。他の村人も気になって集まってきたようだ。

「初めまして、ユーヤ様。私は村長のビトレと申します。いきなりで申し訳ないのですが、魔王との戦いがどうなったのか教えて頂いてもよろしいでしょうか?」


俺は起こった事を話した。

「そのような戦いがあったのですね。ではユーヤ様は今魔法が使えないという事でしょうか?」

「あぁ、魔力を封じられていて一切魔法が使えない。」

 村人達はがっかりしている。まさか俺が村人に落胆されるとは。

「そうですか。とりあえずは疲れたでしょうから、村の宿屋で休んでいって下さい。」

 俺は宿屋で少し休む事にした。


 それから俺は1週間ほど宿屋の部屋からほとんど出なかった。


 仲間が殺された事や魔王が強すぎた事もそうだが、何よりも魔法が使えない事がショックだった。


 これから自分はどうすればいいのだろう。幸い金はあるのでしばらく宿屋に泊まれるが、いつかは底を尽きる。

 俺は村人としてここで過ごすしか無いのだろうか?俺に労働など出来るのだろうか?


 そんな不安を抱えてこの1週間を過ごしていた。


 そんな時部屋のドアがノックされた。

「入ってもいいかしら?」

誰だろう。入るなら礼儀として名乗れと思ったが、俺も人に礼儀をとやかく言える立場では無い。


「どうぞ」

 俺がそう言うと1人の女の子が部屋に入ってきた。

「私はスミレ、この宿の主人の娘よ。よろしくね」

 初対面なのに馴れ馴れしいやつだ。

「俺に何の様だ?」

「私魔法に興味があるの。貴方は元魔法使いなんでしょ?なら私に魔法を教えてよ」

「俺がお前に魔法を教えて何のメリットがあるんだ」

「いいじゃない、どうせ部屋で寝てるだけなんでしょ?なら少しぐらい私に時間を割いてよ」


 昔の俺ならキレて断っていた所だが、確かに彼女の言う通り今の俺は目標もなくただ寝てるだけだ。それにここの宿屋には長く世話になっている。


「わかった。少しだけだからな」

「やったわ。じゃあ今すぐ始めましょ。」

 俺はスミレに魔法を教える事になった。









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