元魔法使いは諦めない

まろまろ

第1話

 自分で言うのも何だが俺は魔法の天才だった。


 俺の名前はユーヤ。18歳の魔法使いである。

5歳で初級魔法を極め、10歳にして全ての魔法をマスターした。

 それだけでは飽きたらず自分で新しい魔法を生み出したりもしていた。俺の名前はそれなりに知れ渡っていた。


 そんなある日俺の元に勇者とエルフが訪れた。最強の魔法使いの噂を聞きつけ、ここまで来たらしい。


「魔法使い、ユーヤ。俺と魔王討伐の為に一緒に冒険して欲しい。」

勇者から協力のお願いを受ける。


 冒険に行くのはめんどくさかったが、俺の実力であれば余裕で魔王を倒せるだろうという自信もあったのでその誘いに乗った。


 そう。当時の俺はかなりイキッていたのである。

「いいぜ。魔王なんか余裕で倒してやるよ。」

 勇者も俺のイキリ具合に若干引いていたが、それでも強力してくれる事は嬉しかったようだ。

「ありがとう。活躍を期待しているよ」

 こうして俺達は魔王討伐の冒険に出かけた。


 魔までの道中は正直楽勝だった。

 勇者の剣技は凄まじく並大抵の魔物では相手にならなかった。


 エルフも弓の精度がかなり高かったし、回復や補助魔法もそこそこ使えていた。

(正直俺の方が補助・回復魔法を使えたが彼女の顔を立てて俺は攻撃魔法に専念していた)


 何よりも俺がパーティーにいたからである。

勇者が剣を振るうまでもなくほとんどの魔物を俺は消し炭にしていた。魔物が弱すぎてなんとも退屈な旅である。


 途中で出会った魔王の配下もそこそこ強かったが俺達パーティーの敵では無い。5体ほどの配下も難なく倒した。


 ここまでは順調だったのである。

俺達は特に問題もなく魔王ゼオンの元にたどり着いた。


 「よくぞ我が元にたどり着いた。我が配下を倒した事は褒めてやるぞ」

「イキるのは俺たちを倒してからにしな。」


 俺は自分で生み出した炎の魔法をいきなり魔王にぶつけた。既存の炎の最上位魔法よりもさらに火力と攻撃範囲を高めた魔法である。大抵の魔物は跡形も残らない。


 だが、魔王には効かなかった。

魔法になんとか耐えたわけでも、かわされた訳でも無い。効かなかったのである。


 「気の早い魔法高いに教えてやる。我には一切の魔法は効かぬぞ。」

 そんなはずはない。魔法が効かないやつなどこれまでにはいなかった。

 ヤケになって自分の知る魔法をとにかく当て続けたが全くダメージを与える事が出来ない。


 俺は呆然とその場に立ちつくした。

勇者とエルフも俺の魔法頼みの部分があったのだろう。二人とも困惑している。


 「ユーヤは回復と補助魔法に専念してくれ」

そう言って勇者は魔王の元へと駆け出した。

俺は慌てて攻撃・防御強化の魔法をかけた。


 強化した勇者の攻撃でも魔王には大したダメージを与えられない。エルフも弓で攻撃するが魔王に弾かれてしまう。


 俺は絶えず強化の魔法をかけ続けていた。

魔王も次第に勇者の攻撃に慣れてきたのであろう。勇者の攻撃をいなすようになってきた。


 勇者は焦りから大振りの攻撃をしてしまう。

その隙を魔王は逃さなかった。

 勇者の攻撃をかわすと同時に魔王は勇者の体を貫いた。


 あれは即死だ。遠くから見てもわかる。回復魔法でどうにかなるレベルでは無い。

 体に穴の空いた勇者はその場に倒れた。もう意識も無いようだ。


「次はお前だな。」

 魔王はエルフに向かって強力な闇魔法を放った。広範囲の魔法をかわしきれず、エルフは魔法を受け倒れてしまった。


 俺は恐怖で腰を抜かしてしまった。

「あぁ…」

言葉も出せないほどテンパってしまっていた。

「後は一人だけか。つまらないやつらだ」

魔王は俺に詰め寄ってくる。

「お、お願いします。…助けて下さい」

 俺はなんとか言葉を振り絞り命乞いの言葉を口にした。

「なんだ、先程まで強い口調だった奴とは思えないな」

魔王も呆れているようだ。

「魔法使いなど所詮魔法が使えなければただのカスだということか。殺す気も失せたわ」


「お前はもう二度と我に歯向かえないよう魔法を封じる呪いをかけ、遥か彼方に飛ばしてやろう。村人として惨めに生きるがいい」


 魔王は見たことも無い呪いをかけ、俺に転移の魔法を放った。


 目の前が真っ暗になった。


「ここはどこだ。」

目を開けると森の中だった。

 魔法を使おうとするが発動しない。正確には自分の体から魔力を感じないのだ。


「この先俺は魔法無しでどうやって生きればいいんだ。」

 俺は呆然とその場に立ち尽くしていた。


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