第190話 あれから一年経つわけで②

 ——— 今日は翔馬の誕生日だ。

 私は翔馬の部屋で翔馬の誕生日をお祝いしていた。

 翔馬の部屋の壁にぶら下がってるコルクボードには私とのツーショット写真やら四人で撮った写真が沢山貼られている。


「誕生日おめでとう」

「ありがとう。去年は病室だったし、この関係も突然だったから全然実感無かったけど、奈々菜とこうして二人っきりでお祝いなんて……改めて思うとホントに奈々菜がこう……」

「……こう?」

「うん……彼女……なん……だなって」

「お? 遂に認めるか? 認めたか?」

「まぁ、俺自身まだ納得出来てないけど、一年一緒に隣にいる事は出来たんだし……それに……」

「それに?」

「…………ん」


 翔馬は私を見て無言で両手を広げた。「おいで」のサインだ。

 私は迷わず笑顔で犬が飼い主に駆け寄るかの如く彼の胡座の上に向かい合って座り、両腕を彼の首に回して抱き付いた。

 彼は私の背中に両腕を回してしっかりホールドする。少し苦しいがそれが彼の気持ちの強さだ。心地良くて堪らない。私も力が入る。


「こうしてギュッとしたいって思う時点でお前のこと好き過ぎだろ」

「自分の事そう言っちゃう?」

「言っちゃう。言えちゃう。大体、同じ顔の藍ちゃんにはこんな感情全然出てこないもんな」

「ふふふ、相手が藍とは言え、此処で他の女の子を引き合いに出すってデリカシーが無い男だなー」

「うん、言いながらちょっと反省した」

「んじゃお仕置き♡ ん♡ ——— チュ……チュパ♡……クチュ……ん♡ ュチ……チュ♡クチュ……」


 翔馬の口から他の女の子の名前が出ないように私は私の口で翔馬の口を塞いだ。しかも初めて舌を入れた。別に誕生日だからって訳じゃ無い。

 翔馬に翔馬自身のストレートな気持ちをぶつけられて、自分の感情が昂ぶって溢れてしまったのだ。

 なんだろう……舌を絡めただけで腰が砕けそうだ。やばい。途中から翔馬のリードに変わった。もう♡

 翔馬も私の気持ちをそのまま受け止めてくれている。ただ、ここから先はまだ中学生の行為じゃ無い。

 私は頭を離し、そのまま後ろ向きで翔馬の膝の上に座った。

 翔馬は私の首に腕を回して抱き締める。

 私はなんとなく翔馬の右腕を取り、左のおっぱいに当ててみた。此処までするのは翔馬が寝ている時に触らせて以来だ。


「……ん♡」


 意外と気持ちよくて思わず声が出た。


「おいおい、こんなんしたら揉むって」

「いいよ♡ 減るもんじゃ無いし、寧ろ増える……あん♡」


 翔馬の手がちょっと動いた。ただ、『揉む』ってよりは下から支える感じで抑えてる感じかな? 支えるほど大きく無いけどそんな感じ。気持ちいい……ん♡

 お尻の辺りに硬い何かが当たってるけど、それは気付かないフリをした。口にすると多分離れちゃうからね。

 で、こんな態勢でちょっと真面目な話をする。


「翔馬は来年部活はどうすんの? ……ん♡」

「んー……正直辞めようかなって」

「やっぱり? ……やん♡」

「奈々菜は?」

「私もちょっとね…… ん♡ 優勝してからもう……はぁん♡」

「やっぱそうだよな。別に目標にしてた訳じゃ無いから優勝なんてどうでもいいって思ってたけど、実際、優勝してみると……結構、達成感覚えちゃって、これ以上の何かはもう要らないって感じなんだよな」

「あ♡……ん♡……だよ……ねん♡ ちょっと……手……あん♡……手、一回止め……あん♡」

「御免御免。ちょっといい感じの感触に手が勝手に……」

「……ふう♡ ……別にいいんだけどね。翔馬のもんだし……やん♡」

「手が……悪りぃ。でさ、高校入ったらバスケやろうかなって考えてたんだけど……」

「翔馬も?」

「『も』って、奈々菜も?」

「私も思ってた。なんか……流星君のプレーっていうかポジションって凄く面白そうだなって」

「そっちか。俺はやっぱ宗介さんと翠ちゃんだな」

「あー、なんか翔馬っぽいね。うん、大体、現役じゃ無い時とは言え、お兄ちゃん抜ける時点で素質十分だよね」

「あはは、ありがと。奈々菜はなんでポイントガードに?」

「ゲームメイクってやつ? 相手を崩して隙を突くって言うの? 流星君見てたら面白そうだなって」

「んじゃ決まりだな」

「そう……だね……あん♡ もう……エッチ♡ やん♡」


 ——— 服の上から両手で暫く揉みしだかれた。一応断っておくけど、最後まではしてないよ。

 家に帰ってから一人で続きしちゃったのは……まぁ、私も普通の女の子……だと思う。



 ※  ※  ※



 ——— 奈々菜が帰った後、寝る迄に五回抜いた。中学生ってゴム買えんの?



 ※  ※  ※



 ——— そして時間は進み、正月は家族で過ごして初詣は家族で行った。翔馬のお父さんは海の上だ。翔馬が出掛けるとお母さん一人になっちゃうからね。

 私が泊まりに行っても良かったけど、流石に男の子の一人っ子だ。年頃だし一緒の部屋で寝るのはダメだよね? お母さんと寝るのもなんか変だし……って事で、翔馬と顔を合わせたのは事始め一月二日だ。


「明けまして、おめでとう御座います」

「今年も宜しくね。ふふふ」


 翔馬のお母さんと新年の挨拶を交わす。

 翔馬のお母さんはおっとりした雰囲気の人だ。おっとりしてるんだけど、人に対する気遣いは抜け目無い感じだ。

 翔馬がイベント毎でよく気遣いを見せるが、それは母親譲りなんだろう。尤も、お父さんは殆ど家に居ないからそうなっちゃうんだろうね。


 因みに翔馬のお父さんだけど、一度帰ってくると一ヶ月くらいは家にいる。

 なので、うちの両親も会ってお礼とご挨拶はちゃんとしている。『ただの彼氏』じゃないもんね。

 ついでに両親は「嫁にどうぞ」とまで言ってた。

 お義父さんも「その時は事後報告で」と返していた。お義父さんはいつ帰ってくるか分からない。なので結婚については『了承した』って事だ。私らまだ中学生だ。気が早すぎるって! と、口では言っとく。


 そして私とお義父さんだけど、一ヶ月も家にいたら当然お会いする機会はあるって言うか、土日は毎週顔を合わせていた。

 お義母さんと一緒に料理を作ったりなんかもして一緒に食卓も囲っていたりする。

 私的には出来るだけ家族水入らずな時間をと思ってたけど、お義父さんは『娘』と言う存在に憧れが有ったようで、家に行かないでいたら「お父さんがションボリしてるから来てくれ」って連絡が入ったりもした。


 一緒に遠出した事もある。ちょっと抵抗はあったけど、お父さんは息子との時間が欲しい以上に、お母さんとの時間を十分に満喫したいようだった。

 なので、私は「翔馬の相手役」って事での同行だったりした。当て馬っぽいけどちゃんと私への気遣いとかもあって十分楽しませて貰った。


 

 ※  ※  ※



 ——— 時は進んでもう春だ。私達も高等部に進級した。

 話が進みすぎじゃ無いかって? 「バレンタインとかホワイトデーの話があるだろ!」って声が聞こえてきそうだけど、此処まで関係が進むとチョコを渡して返されて終わりだ。特に障害になる相手も居なければ盛り上がる要素も既に無い。

 それにお兄ちゃんと翠ちゃんのお話はもう終わり。顔も晒しちゃったし後は二人がイチャつくだけのお話かバスケで無双する話になるだけだ。

 成績なんかも流星君はヒーヒー言いながらも満点取り続けてる。


 ——— と言う事で、次回からは私と翔馬が主人公で話は進むんだけど……一旦ここで終わりかな?


 一応、続きは書いてるけど……書き切れるかな?

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イケメンと美少女がイケメンと美少女である事を隠しながら学園生活を無難に過ごす物語 にもの @bucci515

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