米酒球-Enjoy Bay-shu Balls

@18cumo_novel

第1話 the oppotunity

「ストライク!バッターアウト。」球審はそう告げる。

高校3年の夏が終わる。今までやってきたものの終わり、一生懸命熱意を入れてやってきたものがこんなにもあっけなく終わるのだろうか。ぷつりと終わるその瞬間が何とも儚くて、涙を流すものの苛立ちも覚える。時の流れは残酷だ。

これが野球人生の終わりだと思っていた。


その後は大学に進学し、特に野球とは無縁の4年間を過ごした。

そして普通に就職。短大卒で入社し、3年目を迎える清水先輩の下で日々仕事をこなしている。先輩はテキパキと仕事をこなし、隙のない人だと思っていた。


ある日、「山本君、いつも頑張っているから飲みに行かない。とっておきのがあるんだ。」先輩はクールなのか、無愛想なのかとにかく表情を見せない。


「えっ?あぁ……はい。いいっすよ。」半ば困惑していたが、先輩のことは嫌いではないので行くことにした。

「もう。はっきりしなさいよ。じゃあ、水戸駅に19:00集合ね。今日も頑張るよ!」

今日は華金。一生懸命働いた後の酒は美味いことだろう。まだ大人の愉しみが身についたわけではないが、暑さも和らいだ初秋は心地よく食べ物や飲み物を美味しくさせる。


定時上がり。今日もよく頑張った。

17:00に職場を出て、自宅に帰る。仕事着を脱いでシャワーを浴びる。

香水をまとわせ、待ち合わせの場所にいざ出発。

「もしもし。南口に着きました。先輩は今どこにいますか?」

その時、いきなり目の前が真っ暗になった。

『俺は誰かに連れ去られるのか』山本は恐怖を感じた。

「だーれだ♡」

「えっ?清水先輩ですか?」困惑しつつ、山本は答える。

「当たり。もう、つまんないの。」

『なんだこの甘々な感じ。知っている清水先輩じゃない。調子狂うなぁ。』

「あっ、困惑した顔してる?変な感じがすると思った?私は求められる姿を会社では見せているだけ。こっちが本当の姿。」

「今日は宜しくお願いします。清水先輩。」

「そんな畏まらなくてもいいよ。珠姫(みき)って呼んで。」

「ん、じゃあ……珠姫さん行きましょうか?」

二人は人混みの中に消えていった。

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