第7話 最終話 



 8年の月日が流れた。


「残念でした。私は現世では超優等生で頭が良かったのです。だからこの国の為にこの知性を生かしてどんな発明だって、どんな家電製品だって生み出すことが出来ます。第一この国は現世の私の世界から100年遅れています。私を16歳に戻して下さい。そして私を学校に通わせてください。お願いします。私はこの国の発展のためにこの知性を生かして、この国の発展のためにどんな努力も惜しまないつもりです。私もお友達の王子に頼んでみますが、先ずは元の年齢に戻して下さい」


 この言葉通り元来勉強好きの一華は『ヴィエノワ-ル王国』の王族や貴族の子女たちが通っている名門校「カレッジ・ランブルック・スクール」を何と首席で卒業した。この王国では首席で卒業した生徒には、ご褒美として報奨金が支払われる決まりが有った。


 ※報奨金:貢献や努力を奨励するために支給される金銭


 

 そこで一華は言い放った。


「この国は現世の私の世界から100年遅れています。そのためには物作り産業の活性化が必要です。私の父は電化製品メ-カーの社長でした。だから……幼い頃から少なからず父から教わっていました。電化製品を生み出す会社を作りたいのです。協力して下さい」

 やがて『ヴィエノワ-ル王国』の西南方向の余っていた敷地に「一華電気」と言う会社が設立された。


「嗚呼……そうだ。パパに会いに行って電化製品の製造方法の機密書類を貰ってこなくては?手鏡がピカピカ点滅したら手鏡を見て『テクマクマヤコン テクマクマヤコン ○○にな~れ』と唱えるとどんなものにも変身できるって言っていたっけ?だけど私もう死んでるから、幽霊になって現世に戻るしかないか?まぁしゃ~ない幽霊に化けて両親に会いに行ってこよう『テクマクマヤコン テクマクマヤコン幽霊ににな~れ』ようし久しぶりに両親に会って来よう」



    ◇◇

(嗚呼……久しぶりの我が家、きっと両親も喜んでくれるに違いない)

 

 ”ひゅ~” ”ひゅ~” ”ひゅ~” ”ひゅ~”

 辺りが寒々しく背筋も凍る思いだ。丁度「丑三つ時」現在の時間で表すと午前2時~2時30分の30分間に相当する。


 そこにひょっこり現れたのが、8年前の丁度お盆の時期に亡くなった一華にそっくりの、乱れ髪に三角頭巾、死装束の足がない女性という姿の、青白い顔に、恨めしそうな眼をして死んだ者が成仏できずに、姿を現したそんな姿の女が、両親の枕元にひょいと現れた。


 異様な寒々しさに目を覚ますと幽霊が……。

「キャキャ————————————————ッ!」余りの恐怖に逃げ惑う両親。


「うらめしや~私は一華だ——」


「ギャ————————————————ッ!いい一華って……キャ———————ッ!一華はもうとっくの昔にししし死にました」


「パパママ怖がらないで。私は本当に一華よ。だけどね異世界に転生しちゃったのよ。だから死者より少し格上ってヤツ。これからも……たまには会いに来るからね。私ね『ヴィエノワ-ル王国』に異世界転生しちゃったの。テへへ😜そこでゴホン!王族や貴族の子女たちが通っている名門校「カレッジ・ランブルック・スクール」を、何と首席で卒業したのよ!凄いでしょう。その王国では首席で卒業した生徒にはご褒美として報奨金が支払われる決まりがあったの。そして…パパと一緒で「一華電気」と言う会社の社長になったのよ。可愛い娘の為に電化製品の製造方法の機密書類のコピー頂戴!」


「可愛い娘が異世界の『ルノワ-ル王国』の社長さんとは出世したもんだ!勿論喜んでコピーしてやろう。折角幽霊でもなんでもいいが、帰って来たんだからゆっくりして行ってくれ!」


「パパ『ルノワ-ル王国』じゃなくて『ヴィエノワ-ル王国』よ。嗚呼……それから…ゆっくりしていられないのよ。ウッフッフッフ!私王子様に告られたのよフッフッフ!だから……早く帰らないと……」


 全く見栄っ張りな一華。

 告られてない!告られてない!レニー王子はエリ-ゼ様に夢中。


 ※丑三つ時には幽霊が出るといわれる理由

 丑三つ時を方角で表わすと北東になる。 北東は陰陽道では「鬼門」といわれる不吉な方角です。 丑三つ時はこの鬼門の方角にあることから、鬼門が開き死者や魔物が現れる時間と考えられ、不吉なことが起きる時間帯だといわれている。



    ◇◇


 一華は父親がコピーしてくれた機密書類のお陰で、ありとあらゆる電化製品を生み出して行った。最新鋭の冷蔵庫、テレビ、電気釜、掃除機等々。


 王様は一華を最も期待できる人物と称賛している。そして称賛だけに留まらず、こんな有能な人材を他国に奪われてはと思い、とんでもない事を思い付いた。それは、一華を確実にこの国から逃さない方法。可愛い我が王子のお妃にする事だった。


 こうして有無も言わせぬ形王様の「鶴の一声」で、レニー王子と一華の結婚は決まった。それは……この国を「ノルン星」一の王国にしてくれた一華に対する感謝の意と、絶対にこの国にとどめておかないと思う焦りからだった。


 だが、困ったことにレニー王子はエリ-ゼの事しか眼中にない。

 それでも両親もいくらなんでも酷すぎる。9歳年上だからと言っても、愛し合っている2人の意向を何故、組んでやろうとはしないのか?


 そこには……過去の姦通事件が尾を引いている。愛する妻レイラ女王とエドワ-ド公との姦通疑惑から、今でもエドワ-ド公の、エを聞くだけでも、はらわたが煮えくり返り、そのエドワ-ド公の娘との結婚など絶対に有り得ないと考えている王様。


 だから……エリ-ゼとの結婚は100%どころか200%有り得ない。

 

 


    💍🌹🍃❀❀🌺🍃❀❀🌼🍃❀❀🌷🍃❀❀🌻🍃💍


 この国の次期王の結婚式はそれはそれは盛大な結婚式だった。


 セント・ポレン大聖堂は『ヴィエノワ-ル王国』の高級住宅街の緑あふれる高台に、この国を象徴するかのような荘厳な佇まいを誇っている。中はとても広く、高い天井には豪華な装飾が施されており、見ているだけでもうっとりする。


 入口を入ってすぐに目に入るのは、巨大な神々しいまでのマリア様のステンドグラスとパイプオルガン。この重厚感あふれる聖堂が建てられたのは3000年前といわれているので、長い歴史のある大聖堂である。

 

 大勢の著名人や隣国の王、女王などを招待したそれはそれは厳かな結婚式だった。

 そして…何と言っても花嫁を飾る一世一代のウエディングドレス。一華妃のウエディングドレスは10,000個の真珠を縫い付けたベールが話題になった。そして…そのベールの長さは何と7.6m!


 ドレスにはさまざまな工夫が施されており、胸元にはバラをかたどったダイヤモンドが縫い付けられてあり、煌びやかな輝きが一層華やかさを演出している。余りの美しさに多くの招待客や参道の人々の度肝を抜いた。


 更にはドレスだけでなく、ティアラやイヤリングなどのアクセサリーにもこだわりがあり、ブーケも非常に豪華で、花のように美しい一華妃にしか、着こなせないウエディングドレスだった。


 こうしてこの『ヴィエノワ-ル王国』の妃となった一華だったが、30歳を優に超えた年齢でありながら一層磨きがかかり、妖艶な熟女に変貌を遂げた公女エリ-ゼの魅力には到底勝ち目のない一華。結婚はして見たものの心ここに有らずのレニー皇太子。


 そして…レニー皇太子は仕事だと、うそぶいて家を留守にする事が増えて行った。


 果たして皇太子の心を掴むことが出来る日がやって来るのだろうか………。


 おわり

 

 続編あり

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

高慢チキ⁑一華妃真実の愛〈サクセスストーリー〉 tamaちゃん @maymy2622

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ