第3話 嫌われた勇者

「立ち話もなんだからうちで話しましょ」


 相変わらず携帯の電波は繋がらない。このまま学校に向かっても遅刻するのは確定してるし、なんだか様子もおかしいので俺はこのまま着いていくことにした。


 アイーダの家に向かいながら、今最も気になってることを聞いてみた。


「さっきのジジ・・・コホン。爺さんはなんであんなに怒ってたんだ?」


「あぁ、村長のことね。村長は一年前にこの村に来たユウシャのことを酷く嫌っていたから。きっとそのせいね」


「ちょっと待ってくれ。その勇者が嫌われていたこととどう関係してるんだ? あとさっきから出てくるその勇者ってなんなんだ?」


「ユウシャは自分のことを異世界人と言ってたわ。大地のその格好、ユウシャの着てた服とそっくりなの。だから村長はあなたのことを追い出そうとしてたのよ」


 村長? 異世界人? なんだそれは? ここはやっぱりコスプレイベントの集会所かなんかか? そうであればこの変わった建築様式の建物も舞台セットだと納得できる。


 アイーダの家に着き、ちょっとした菓子と温かい飲み物を頂いた。

 それからじっくりとこの世界の事と勇者の事について教えてもらった。


「えっと、つまり。この世界は俺がもといた世界とは別の世界で剣や魔法で魔物と戦ったり、特有の言語があって、その一年前にやってきた勇者と名乗る男にアイーダは、日本語もとい勇者語を教えてもらったと」


「えぇ、そうよ。異世界があるというのも全部ユウシャが教えてくれた事なんだけど」


 いやわかるかい!! そもそもなんだ剣と魔法で魔物を倒すって。ゲームかよ。

 正直俺はまだこの話を完全に信じきれてない。トラックに轢かれてここまでがドッキリでした!! という可能性もある。勇者が一年前に来たってのもそういう設定だろう。

 よし。とりあえずは勇者だな。似たような服を着てるってことは同じ高校だろ。この茶番を終わらせるヒントがあるかも知れない。


「それで、その勇者は今どこにいるんだよ」


 アイーダは少し悲しそうな表情で語った。


「この村に来て大体三ヶ月が経ったころ何も言わずに村を出ていったわ。原因はおそらくユウシャを好ましく思わなかった一部の大人達のせいね。」


 アイーダは話を続けた。


「実はこの村はユウシャが来るまで作物があまり実らない土地でね、食料もまともに確保できない状態だったの。だから私達は毎日山に出て、動物を狩ったり山菜を採取したりして生活してたんだけど、その度に魔物に襲われて何人もの人が命を落としたわ。でもある時、私が魔物に襲われそうになっていたらユウシャが突然現れて私のことを助けてくれたの。それから村の人達も私を守った恩人としてユウシャを迎え入れてくれたわ。ユウシャは剣だけじゃなく魔法も使えて、この村の作物ができなかった原因の土質を魔法で変えてくれたの。みんなはユウシャに沢山感謝したわ。でもその強大な力に一部の大人達がユウシャを危険視しはじめたの。ユウシャは寡黙で不思議な人だったわ。その性格もあって、何を考えるのかわからない、不気味だとユウシャは迫害を受け始めたわ。それから数日して、ユウシャは姿を消したわ。結局私は彼に何も返すことが出来なかった」


 アイーダは拳を強く握りしめて怒りにふち震えていた。


 想像してたものより重く苦しい話に思わず真剣な顔で聞き入ってしまった。とても設定とは思えない感じがした。それにアイーダの勇者に何もしてあげられなかった気持ちも少しわかる。


 アイーダは目の端を指で擦って溢れるものを抑えようとしていた。


「ごめんなさい。暗い話になってしまったわね・・・・・・それで大地はこれからどうするの?」


 すでに俺の心は決まっていた。こんな話を聞いて設定だからなんだとじっとしている訳にはいかない。


「勇者を探しに行くよ。それでこの村と勇者の関係を良好なものにしてみせる!!!!」


 その言葉を聞いたアイーダは、堪えてたものを溢れさせながら笑みをこぼした。


「ありがとう。大地」

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ツテで最強!! 〜頼みの綱はコミュ力のみ。俺本当に何もしてないんだけどw〜 メタフィジカル @metaphisicar

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