最終回

こうして地球は、ムカデキングの統治下となり、ムカデこそが覇者となった。


かつて人間という下等動物の支配していた地球、そこにはもう、愚かな支配者は存在しない。


しかし、ムカデキングにとっての脅威が無くなったわけではなかった。


ゴキブリゴッドは、死んではいなかったのである。

創造主であり、唯一神を名乗るゴキブリゴッドは、ムカデキングの毒針をもってしても、死ぬ事は無かったのだ。


ゴキブリゴッドはあの後、ゴキブリの卵を思わせる小豆色の丸い光に包まれ、彗星の様な速さでどこかへ飛んで行ってしまった。

またどこか、誰も知りえぬ場所で、傷を癒すための眠りについたのである。


ゴキブリゴッドは死んでいない、いつか必ず帰還するのだ。

残されたゴキブリ達は、ムカデキングの迫害にもめげずに、ゴキブリゴッドの帰還を待ちながら繁殖し続けていた。


人間達の度重なる迫害にも、長年屈する事の無かったゴキブリ達。

今回も耐え抜くだろう、とムカデキングは予想している。


ゴキブリは一匹につき、一度に十五から三十匹分の卵を産む。おまけにその卵は強靭であり、鳥の様に温めたりする必要など無く、産んだら産みっぱなしで放置しておけば良い。


孵化したゴキブリは、人間の赤ん坊の様に、誰かから世話をしてもらう必要も無く、孵化した瞬間から立派に歩き、走り、成虫と変わらぬものを何でも食べる。


更に、ゴキブリゴッドの力によってパワーアップした彼らは、単為生殖が可能であり、寒さにも強くなっていた。


元々繁殖能力の高かったゴキブリ達は、今後ますます増え続けるだろう。


悩みの種は、ゴキブリだけではなかった。

ゴキブリゴッドとの闘いが一先ず終わり、しばらく経った頃、東の方で新たな「王」を名乗る者が現れたのである。


その名も、ベルゼブブ蠅の王


アメリカが投下した核爆弾の影響を受け、一匹の蠅が変異を起こし、ムカデキングと変わらぬサイズに巨大化したのだ。

ベルゼブブは同胞である蠅や蛆達をも、二メートル程にまで巨大化し率いている。

ミラーボールの様な目をギラギラ光らせ「我こそが王」と主張し、領土を広げているという。


そう、戦いはまだ終わっていないのだ。

ゴキブリゴッドに加え、ベルゼブブという新たな敵が現れた。

三匹の戦いは、まだ始まったばかりなのである。

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