第8話(終)

 通信が切れた。


「いいのか?」


「いいですよべつに。正直エンジニアがどうなってもいいとは思いますけど。寝覚めがわるくなるだけで支障はないし」


 調べはついている。研究員の夫婦が、産まれる前の子供を喪った。だからお互いの遺伝子情報をもとに、喪われることの無い完全で完璧な子供を作った。それだけのことだった。


 しかし、できあがった肝心の子供は狂った夫婦と違って、良心とやさしさを持った、ちゃんとしたロボットになってしまっている。それが唯一の失敗といっていいかもしれない。


「禁忌ですよね。人の遺伝子情報からロボットを作るとか。非人道的なこと、し放題じゃないですか」


「それは、そうだな」


「やばくなったらわたしのことも壊してくださいね。非人道的なものの権化なのでわたし」


「それは分からん」


「その顔で?」


「顔は関係ないだろ」


「その顔でその胸で俺なのに大事な場面で躊躇するのはさすがに詰め込みすぎでしょ」


「黙れロボット。人には人の機微があるんだよ」


「うわぁ人間味の無い言い訳だぁ」


 少なくとも、今は。そこそこわるくない関係ではいられる。

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uxi3057 (短文詩作) 春嵐 @aiot3110

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